死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第61話〜進行〜

 一週間後、モンブラン王国に向かってミナ王国とケイネル魔法国の連合軍が進行を開始していた。

「とうとう来てしまいましたな。数はざっと見積もって八百ぐらいですか」

「そうですね」

「どうされるんですか?」

「一旦力で黙らせようと思います。誰も殺しはしない。その後でゆっくり誤解を解きます」

「まあ、それしかないでしょうな」

「ヴァンパイアは戦闘の準備を、サイクロプスは王城の護衛をお願いします」

「「了解」」

 数時間後、モンブランとヴァンパイアの集団は王国をでていく。

 王城で迎え撃てばもっと有利に戦いを進めることができる。だが、それはクラスメイト達を巻き込む可能性があるため、街道で待ち受けることにした。

 数十分後、連合軍とモンブラン達が対峙する。

「よく来た。逃げなかったことは褒めてやる」

「もう一度話を聞くつもりはないんですか?」

「ない。お前らは私たちを裏切った。その報復だ」

「そうですか。なら、まずは力の差を教えてあげます。誤解を解くのはそれからですね」

「殺せ!」

「「うおおおおおおお」」

 シーナの言葉に連合軍が勢いを増す。

 モンブランは仮面をつける。

「一人残らず叩き潰せ。ただし、一人も殺すな」

「「了解」」

 両軍の戦士がぶつかり始める。

 モンブランの広範囲魔法を使用すれば戦いなどすぐに終わる。だが、モンブランの持つ魔法は殺傷能力が高すぎる。寸止めなどではなく、確実に息の根を止める。なのでこうして肉弾戦を行っている。

 一人一人、少しずつ連合軍の数が減っていく。それに対してヴァンパイアは衰えがない。

 後衛から飛んでくる強力な魔法は、モンブランのブラッドシールドによって意味をなさない。

 連合軍の皆が理解していたことなのだろうか。いや、この戦いで理解させられた。ヴァンパイア、ましてや魔王ほどの生命体に人間とエルフが勝てるわけがない。

「もう降参してもいいぞ?」

「そんなわけあるか!」

 シーナとモンブランは剣で競り合いを行っていた。

「この状況は分かっていただろう。なぜそこまでバカなんだ」

「それは、この国の誇りにかけてだ!」

「騙されているとも知らずに、愚かだな」

 モンブランの回し蹴りがシーナの横腹に直撃し、シーナは痛みで地面に倒れこむ。

「諦めろ」

「クソッ」

 シーナはそのまま意識を手放す。

「急ぐ必要はない。ゆっくり片づけるぞ」

 目に見えて連合軍の数が減り始める。

 戦闘が始まって二十分程が立ち、連合軍の数は残り百程になっていた。


 その時、モンブランの中の何かが最大限のサイレンを鳴らす。なにかがヤバイ。自分にとって良くないことが起ころうとしている。

 自分以外のことでここまで嫌な予感がするのは………

 モンブランはふっと王城の方に振り向く。

「そういうことか」

 モンブランは悟ったように呟く。仮面が付いているから表情は分からない。だが、周りにいる全ての生物は変化を感じ取っていた。

 今までと雰囲気が違う。そばに立っているだけで寒気と鳥肌が止まらない。体を動かすことすらできない。意識を保つだけで精一杯だ。

 魔王がキレている。

 モンブランは黒い翼を生やし、ヴァンパイアへと姿を変える。

「覚悟しろ……お前らは絶対にやってはいけないことをした。遊びは終わり。皆殺しだ」

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