死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第37話〜開戦〜

 インテグラル王国では、迫りくる厄災の説明がなされていた。

「皆さん! 今までの訓練の成果を見せる時が来ました」

「強い魔物でも狩るんですか?」

「違いますよ」

「どういうことですか?」

 召喚された者達の中で、受け答えをするのは花音だ。数々の訓練を乗り越え、人望的にステータス的にも、召喚された者達のリーダー的存在になっていた。

「私たち独自の情報網で、ある者達が五日後に、この国に攻めてくることがわかりました」

「その相手が腕試しの相手ですか?」

「そんなに簡単なことでもありません。この国に攻めてきているのは【逆心の王】と呼ばれる魔王の一人なのです」

「「魔王?!」」

 一緒に聞いていたクラスメイトも驚きを隠せない。自分たちの目標であった魔王が攻めてきているというのだ。驚かないはずがない。

「それってマジなのか?!」

「本当です。あなた方も強くなられました。必ず勝てると信じています」

「あたりまえだろう! 俺達は勇者となった存在だ! 負けるわけがない!」

 口を開いたのは森山だった。自信満々な大声に、周りの者達も同調する。自分たちは強いのだから、負けるはずがない! そんな気持ちが、クラスメイトの中に生まれていた。

「さあ、準備でもしようぜ! 魔王を倒す晴れ舞台だ。楽しみでしょうがない」

「そうですね。準備でもしましょう」

「おお! 頼もしい! 魔王の討伐、必ず成功させましょう!」

「「「はい!!」」」

 魔王討伐に燃える者達の中でも、一番燃えているのは花音であった。

 司は必ず生きている! 司を探す足がかかりに! 魔王なら何か知っているかも。

 魔王討伐はあくまで口実。司の居場所が知れるかと思うと、嬉しくて仕方がなかったのだった。


 五日後、その時は一瞬で訪れた。

 インテグラル王国を囲う塀の上を埋め尽くすように、その集団は現れる。数は数百を超えていた。

「塀の上に侵入者を確認! 間違いないです! 魔王です!」

「さあ、お願いします! 神のご加護がともにありますように!」

「ありがとうございます。では、行きましょう!」

「「「おーーーーー!」」」

 花音たちは完全な防具を身にまとい、城から出ていく。

「来ました。あれがそうですかね?」

「でしょうね。では、行きますか」

 花音たちの前に、それは塀から降り立った。

「初めまして。僕のことは聞いてるかな? 先に自己紹介させてもらうね」

「僕は【逆心の王 セイヤ】魔王をやっている」

「「人間! セイヤ?」」

 クラスメイト一同その言葉に驚く。明らかに日本人の名前だ! それを聞いた全員が同じことを考えていた。

「そうだよ。セイヤ。正確には、鈴木誠也 かな?」

「「!!!!」」

「どうして日本人が魔王?」

「それは、この世界を平和にするためだよ。一つ聞きたいことがあったんだ! 魔物とは何だとおもう?」

「この世界で無差別に人を襲う、根絶やしにするべきモンスターです」

「全員がそう思っているのか?」

「「はい!」」

 瞬間、その言葉を言ったことを全員が後悔する。

 スパッ

 クラスメイトの一人の首が宙を舞う。

「「え?」」

「「きゃああああ!」」
「「うわわわわわ!」」

 悲鳴が王国中に木霊する。

「やっぱりダメだな。滅ぼしてやるよ。人殺しども!」

「全員陣形を取り直して! 魔王は所詮魔王なのよ! 魔物と変わらない、化け物よ!」

 花音の力強い声に、ほんの少しずつ落ち着きを取り戻し始める。だが、それを待ってあげるほど魔王は優しくなどなかった。

「さあ、開戦だ。一人残らず殺す! 二度と過ちを繰り返さないやために」

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