死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第32話〜ヴァンパイア〜

 司を取り囲んだ集団には、尖った耳と鋭い歯が生えており、真紅の眼が光っている。その姿からも人間でないことは明らかだった。

「どうしてヴァンパイアがここに!? モンブラン君が王だと!」

「どういう風の吹き回しだ? コウモリ風情が」

「さっき言った通りだ。この人間は俺たちの【王となる】存在だからな」

 司を囲んだのはヴァンパイアの集団だった。シンはその姿を見て、殺意をむき出しにする。

「どけ! そいつは俺のおもちゃにする」

「断る。やるならやってやるぞ? だが、この人数は流石にこちらに分があると思うが?」

「それがどうした? 俺は魔王だ。負けることはありえない」

 シンの手の平に球体が発生する。

「ほんとに話の通じないやつだな。だが、我々の勝利は揺るがない」

「隙をついたぐらいで良い自信だな! 粉々にしてやる」

 バルクは理解が追い付かない。ヴァンパイアはめったに姿を現さない種族だと言われている。そのヴァンパイアが目の前に現れているのだ。

「モンブラン君今のうちに逃げろ!」

 その言葉に司は動かない。その目は何を映しているかも分からない。ただただ、立ち尽くしているだけだった。

(何してんだ! 早く逃げろって! 心がとうとうイカれりまったか? だから逃げろって言ったんだよバカが!)

 シンが先に動く。

「三人組で陣形を崩すなよ。俺たちの目的は時間稼ぎだ」

「コウモリが舐めるなよ!」

 ヴァンパイアはシンの動きに反応する。球体に当たらないように回避をし、剣で反撃を行う。シンに反撃が当たることもないが、シンの攻撃にもあたらない。

「ちょこまかと!」

 シンの速さが一段階上がる。速度の上がったシンがヴァンパイアをとらえる。球体が押し付けられヴァンパイアが消飛ぶ。ことはなかった。かろうじて原型をとどめている。連撃を行うシンだが、近くにいる二体に妨害を受ける。

「鬱陶しいんだよ! 雑魚共が!」

 攻撃が当たっても絶命までは至らない耐性。そして、高い再生能力ですぐに傷が塞がる。三人組という戦法がここまで脅威になる種族はいないだろう。

 シンの怒りが限界に達する。

「もう許さんぞ! 粉々に砕け散れえええ!」

 シンが手の平を重ねて巨大な球体を作る。ヴァンパイアたちはシンが何をするか一瞬で悟る。

「王を守れ! 命に代えてもだ!」

 司の前にヴァンパイアが盾になるように集合する。なぜか、バルクの前にもヴァンパイアが盾なっていた。

「「シールド」」

 ヴァンパイアが何重にも防御魔法を発生させる。

爆発バースト

 球体が一気に爆発する。滝を消滅させたような優しいものではない。周囲の全てを飲み込み、巨大なクレーターに変貌させる。

「これでも生きてる個体がいるのか。半分ぐらいは本気を出したつもりなんだが」

 バルクと司は無傷だった。だが、ヴァンパイアのほとんどが消滅していた。シンは手際よく残ったヴァンパイアを始末していく。

「数がいねえとなんもできない雑魚種族が調子に乗るからこうなるんだよ」

「そうでもないさ。俺達は役目を果たしたからな」

「強がんなよ。敗者!」

 シンが最後の一体に手を伸ばす。

赤い稲妻ブラッドライトニング

 シンをめがけて、何もない晴天の空から赤い稲妻が降り注ぐ。

 シンの頭上には十体のヴァンパイアが現れていた。服装からも、今までのヴァンパイアとは格が違うことは明らかだった。

「相手は俺達だ。かかってこい狼」

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