死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第21話〜居場所〜

「あれ? ここは」

 司が目を覚ますと、そこは見たことのある場所。そして、見たことのあるフードの男が立っていた。

「またお前か。今度は何の用だ? お前は誰なんだ?」

「僕は忠告をしに来たんだ。その力に溺れるなよ。でないとまた悲劇が起こるぞ。お・た・が・い、心身ともに大切にしような」

「どういう意味だ! おい!」

 まただ、またこの感じ。俺はあいつを知っているような気がする。

 司が手を伸ばすと同時に意識が覚醒する。目を開けると差し込んだ光に目が眩む。

「ここは?」

 司が藁でできているベットから体を起こし、あたりを見回す。木と藁でできた建物の中ようだ。

 前のように体が重いわけではない。立ち上がり、建物の扉を開け外に出る。そこでは、ルギス達が大慌てで何かの準備をしていた。

「あ! 司お兄ちゃんだ!」

 テウスの声に、作業していたルギスが司の方を向く。

「司君! やっと起きたか。無事目を覚ましてくれて本当に良かったよ」

 満面の笑みでルギスが喜びの言葉をつげる。司はその姿に花音の面影が重なって見えた。自分が起きた時に泣いて喜んでくれた姿。
 こんなにも自分の生存を喜んでくれる人がいる。この人たちを守りたい。傷ついてほしくない。その時、司の中で守りたいと思える者が増えたのだった。

「もう大丈夫なのかい?」

「はい。体はもうすっかり元気ですよ。俺はどのくらい寝てたんですか?」

 司は疑問に思っていたことを口にする。前回は一週間もの間眠っていた。もしかしたら眠る時間が伸びていたりするのか。正直、聞くのがとても怖かった。

「昨日の夜から半日ぐらいだろう。よく眠っていたよ」

「そうですか」

 最悪の予想は外れた。司は心の中で胸を撫で下ろす。

「何をそんなに急いでいるんですか?」

「これから引っ越しをするんだ。昨日の一件でここに村があるのがばれただろうから、またいい場所を探して旅をするんだ」

 それはそうだ。あれだけの一件があり放置されるわけないだろう。

「皆! ここらへんで昼食にしよう。司君も一緒に食べよう。起きたばかりでお腹が減っているだろう?」

「ありがとうございます」

 作業をやめ、それぞれが昼食をとり始める。司のもとではオルドにルギス、テウスが一緒に昼食をとっていた。

「君は本当に強いんだな。あんな力を隠し持っているなんて。なにかすごい回復魔法でも使えるのかい? 殺してしまったと思ったんだが」

「そんなことないですよー」

 ルギスの言葉に司は苦笑いで返す。オルドさんには能力のことを伝えてある。だが、ここで伝えるべきことなのか悩む。そんなことはないと信じたいが、もしかしたらあいつらのように。

「司君」

 司がうつむいて悩んでいると、ルギスに声をかけられる。顔をあげると、とても真剣な顔をしたルギスがいた。何事かと思い、司も気を引き締める。

「これはこの村全員で決めたことだと思って聞いてほしい。僕たちはこれから引っ越しをする。司君が良ければなんだが、一緒に来ないか? 君は僕を救ってくれた。その恩返しに寝床やら食事を提供したい」

 司にとって、それはこの上なく嬉しい話だった。ルギスさん達と過ごすのはとても居心地がよい。だが、気がかりなことがある。暴走する可能性があること。悩んだ結果、司は今までのことを打ち明けることにした。

「そんなことがあったのか。つらかったね。でも、僕たちはそんなこと気にしないよ。自分の命の恩人に殺されるなら文句言えないよ~ハッハッハ」

「本当に良いんですか?」

「当たり前だろう。君は僕らを守ってくれた。それだけで十分だよ」

「ありがとうございます」

 司は涙を流しながらお礼を言った。自分の居場所ができたこと。誰かに必要とされ、その人を守ることができた。司はその感覚が嬉しかった。自分がやってきたことは無駄ではなかった。

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