少年はそれでも戦い続ける

虹ウサギ

39.0彼と領主の館.5

「ノラスケよくやったな」

 ノラスケの怒りの一撃の声の後に町全体にかかっていた魔力が消えたのが鬼門・視で確認できた

「領主は敗れたぞどうする?まだ戦うか?」

 俺は地面に膝をつき肩で息をする真面目キャラのクロノスへ問いかけた

「はぁ、はぁ、確かに領主は敗れましたが、本来の我々の任務はあなたがたの抹殺です。ここでひくわけには…」

「クロ君!」

 館の入り口から肩にグルルを背負ったこの部隊の隊長のユキが出てきた

「隊長にゃ!」

 レイピアもちの猫娘コミューが自身の頭に生えてる耳をピクピクさせて喜びの感情を表す

「よし!コレで形勢逆転です!」

 クロノスたちが再び臨戦態勢に入る

「ちょっと待つのじゃ」

 ユキたちに続き意識を失ったノラスケとそれを担いだミールが出てきた

「誰にゃ!?今すぐ隊長から離れるにゃ!」

 ミールに殺意を向けたコミューはすぐにでも飛び出そうとする

「おやおや、若いですのぉ」

「待って待って!一持撤退よ!あなたたちの敵う相手ではないわ」

「撤退?どうゆうことですか?」

 大きな弓を持ったメガネ娘のパールがユキに聞き返す

「本国から召集がかかったの、西で動きがあったみたい」

「まさか西洋同盟が動いたのですか?」

「詳しいことはまだ聞かされてないわ」

「…わかりました」

「「えっ!」」

「ホントに撤退するのかにゃ!?任務はどうするにゃ!」

「私はまだやれますよ!」

「隊長命令だ、シオとガッツを回収ののち本国へ帰還する」

「…了解」
「わかったにゃ」

 クロノスたち気絶している槍男と盾男を連れて屋敷を出ていった
 俺も魔法を解きシャドーと分離する

 俺たちから声が聞こえない距離まで離れたところでミールとユキは話をしていた

「ミール様どうか帝国に戻ってきてください」

「フォフォフォ老いぼれに何をしろと」

「今の帝国は腐っています、もしあなた様がいれば…」

「いえワシでは無理ですじゃ」

「そんなことは…」

「ルキ殿なら変えてくれるとワシは信じておりますわ」

「確かに彼は強いですがそれだけでは」

「そう確かにそれだけでは何も変えられない」

「なら!」

「彼には引き寄せる力がありますじゃ、世界を変える運命を引き寄せる力が」

「!…わかりましたその言葉を信じます、私は本国でやれることを見つけます」

「それが良いでしょう、ユキ殿が内からルキ殿が外から」

「ふぅ、よし!」

 ユキは自分の頬を両手で叩き前へ足を踏み出した
 ミールはユキたちが見えなくなるまで目で追い続けた

「これからは若き者たちの時代じゃの」

 館の庭の真ん中で見たこともない自我を持った魔法シャドーと話すルキをミールは見つめ続けた


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 館での出来事から7日がたった、場所は孤児院の一室そこに置かれたボロボロのベットにノラスケは寝かされていた
 ルキがベットのそばで鬼門の特訓をしていると

「んー?ん、わっ!」

 変な掛け声と共にあの戦いからずっと眠り続けていたノラスケが目を覚ました

「あ、兄貴?…そうだ俺領主を倒して、そうだ!皆は!」

「無事だよ、まぁ見た方が早えか」

「ねぇねぇこの声!」
「ノラ」
「のらちゃま!」

 いきよいよくドアを開けて子供らが部屋に入ってくる、ノラスケの寝るベットに飛び込んでいく

「お前らよかった、よかったほんどによがっぁた」

 ノラスケは一人一人の顔に手を当てて感触を確かめながら撫でていく

「ノラちゃん?」

「シスター!」

 マールがかけよりノラスケを抱き締める、優しく優しく抱き合う、時間がゆっくりと流れていく

「おほん!そろそろいいかしら?子供たちが見てるんだから少しは自重なさい」

「はわわわわ」

 お姉さん気取りのジックが二人の間に割ってはいり引き離す、正しい判断だな子供にはちと刺激が強すぎる

 その後ろで手で目を覆っているがその隙間から覗き見て変な声をあげるクルミの姿があった

「あれ?院長は?」

 周りの空気が一気に静かになる

「お父さんわね、お父さんは」

「ま、まさか」

「おー!ノラスケ目が覚めたか!」

 タンクトップに溢れんばかりの胸筋、褐色に肌を焼いたラバートがツルツルになった頭をかきながら入ってきた

「えっ?ちょっ、えっ?頭は?え?」

「お父さんねあのあと子供らは自分が守るんだって張りきっちゃって、ミール様に弟子入りをしたの」

「ホントにありえねぇよな、あの化け物に自分から教えをこうなんて」

「ルキ殿聞こえとるわ、なにやら最近特訓をサボっとる上になんたる口の聞き方」

「げげ!いや別に、サボってなんか、」

「今日から二倍じゃ!」

「嘘だろー」

「アハハハ」
「ウフフフ」
「ガハハハ」

 様々な笑い声が院内にこだましていた、この幸せに満ちたこの場所をいつかは帝国全体広げたいとルキは心に誓った

 それぞれが自分の役割を果たすため部屋を出ていき部屋に残っているのは俺とノラスケ抱けとなった

「いやー、参ったもんだよあいつらには、お前が眠ってるときの辛気くさい顔ってたらなんの」

「兄貴」

「ん?」

「俺守れたんすね」

「あぁ」

「俺助けたんすね」

「あぁ」

「よがぁた、まもれでよがぁだ」

「あぁ」
 
「ほんどによがっぁた」

「よくやったな、今度は世界を守ろうな」

「はぁい!」

 夕日に照らされた部屋の中はとても輝いて見えた
 はかなく壊れやすいこの世界で守るという行為はとても難しい
 だからこそ人は守るという行為に命をかけることが出来る
 その行為が他者にとっては悪意かもしれないし善意かもしれない
 しかし人間は醜くあがき何かを掴みとろうとする
 周りなんて関係ない自分さえ良ければそれでいい
 人ほど欲にかられ、欲に支配されている生き物はいないだろう
 だけど人は前に進む、後ろを振り返ることはあっても決して後ろには下がらない
 いや下がれない、進んだ道はもとには戻らない、だから先に進む
 イバラの道であっても、気にはしていられない
 だから俺は今日も明日を求め望み進み続ける

                  完















「ちょっとまてー!」

バリーーン

 窓のガラスを豪快に割り一人の男が入ってきた

「俺の大事なもの、返してもらうぜ!」




はい、と言うことでですね、第一部が完結ということですねはい、長かったですねここまで約半年と言うことで今までありがとう!
 次回からは第二部の開幕ということですね
これからも”それ彼“宜しくお願いします
 
 
 


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