不器用プラトニックラブ

風吹雪華

8話 混ざらない色

帰宅途中-

ぼーっとしながら帰宅している私のところに、穂架が後ろから抱きついてきた。

「は〜るちゃん!
  ど〜したの?
  元気ない〜?」

「ううん、大丈夫。
 (大丈夫って何よ…)」

「無理しないでね。
  はるちゃんが元気ないと、穂架も元気無くなっちゃうから…。
  だから、いつでも相談して?」

「うん…」

本当に穂架は親切だ。

ずっと私のことを考えて…

「ありがとね。」



琴嶺家-

中学1年の弟、遼雅りょうががゲームをやろうと駄々こねてきたので、仕方なく一緒にやることに。

「なぁ姉ちゃん。」

「何?
  今話しかけたら」

「姉ちゃんって、まだあいつのこと好き?」

「えっ…」

真剣な眼差しで見てくる遼雅。

「…あいつって誰のこと?」

「はぁー、もういいよ。
 (分かってるくせに…)」

何を言ってきたのだろうかと思ったら…

あいつ…

私は別に好きじゃないけど!

じゃないのに、なんでだろう…ずっと見つめてしまうのは。



翌日の早朝-

学校行事が近づくにつれて、朝練が始まる。

結生や逢恋ちゃんのパート、サックスは特に力を入れている。

見せ場が多いということで、毎日欠かさず自主練をしているらしい。

「結生君と逢恋ちゃん、頑張ってるね〜。
  流石カップル!」

「カップル?」

「うん、部活で一緒にいるでしょ〜?
  カップルと見間違うほどお似合いっていう意味で、梓ちゃんが付けたんだって〜。」

「梓舞先輩、名付け親なんだ…。」

カップル、ねぇ…。



部活-

自主練をしていたら、珍しく琉煌が尋ねてきた。

「琴嶺さ〜ん、僕のチューバと合わせてみる?」

「え、ここの旋律のこと?」

「そうそう…」

「…分かった。
 じゃあ、やってみよう。」



放課後-

「おい、永!」

「結生!?」

「久しぶりに帰ろうぜ。」

「う、うん…。」

結生との帰り道、何時振りだろう?

何を話したら…

「そういえば…」

「な、何!?」

「遼雅は元気にしてるか?」

「えっ、う、うん!
  相変わらず元気にしてるけど!」

「そっか。」

「遼雅と何かあったの?」

「いや、バスケの試合があるみたいで学校行事が終わった後だから、応援に行こうか迷ってるんだ。」

「へぇ…」

何で試合があるって知ってるんだろう?
確かに仲は良かったけど、私達が中学に上がってから会ってないはずなのに…

「じゃあまた明日。」

「うん、また明日…。」



琴嶺家-

「ねぇ遼雅…」

「ん?
  何?
  姉ちゃんから聞いてくるなんて珍しいね。」

「結生の連絡先知ってるの?」

「えっ…はぁ?
  何で?」

「結生があんたの試合があるって言ってたから、もしかしたらって」

「そんなわけないじゃん。
  結生君の連絡先なんて知らないよ。
  掲示ポスターとかを見たことがあるから言ったんじゃない?」

「そう…」

「っていうか最近姉ちゃん、元気なくね?」

「え、そう見える?」

「まぁ…姉ちゃんが元気ねぇと、俺も…」

「何か言った?」

「別に何も!」



そして学校行事当日-

無事に成功して、一安心。

打ち上げに行くということで、皆でカラオケに向かう。

(遼雅に連絡しないと)

「ん?
  姉ちゃんから?
 (打ち上げねぇ…っ、もしかして!?)」

「はるちゃん、電話鳴ってるよ〜。」

「あ、ホントだ。
  …もしもし」

「姉ちゃん!
  今何処にいるの!?」

「えっ、今さっき学校出たところだけど」

「じゃあ、待ってて!」

「えっ!?
  ちょっと待っ…切れた。」

「誰から電話〜?」

「…弟から」

「…遼雅?
(遼雅から永に電話するって珍しい…)」

そこに、息切れした遼雅が私の腕を掴んだ。

「姉ちゃん、帰るよ…」

「何で!?
  メールしたでしょ!?」

「…っ、いいから来いよ!」

「遼雅」

「…結生君」

「何か事情があるのか分からないけど、永をそんなに」

「お前には関係ないだろ!?」

「…っ、遼雅、何があっ」 

「触るな!
  行くぞ…」

「えっ、ちょっと遼雅!?」



「ねぇ遼雅!?
  放して!」

「…」

「痛っ!?」

「ごめん姉ちゃん!
   …大丈夫?」

「…遼雅、何かあったの?
 ゆっくりでいいから話して?」

「…今は言えない。」

「…そっか。」



帰ってから、遼雅との距離は遠ざけていくばかりだ。

何があったのか、言ってくれないと分かんないじゃん…

私は、遼雅のあの態度が頭から離れてくれなかった。

夜中はずっと泣きっぱなしで、眠れなかった。



「俺はただ、あいつのところに行かせたくなかっただけなのに、何で俺…」

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