不器用プラトニックラブ

風吹雪華

5話 一瞬の友愛

はるかを勧誘してから、俺はモヤモヤしていた。

(あいつ、本当に決めんの遅いよな…。)



「結生!昼食べよーぜ!
  …どーした?
  あ、もしかして、琴嶺のことか?」

「ばっ!?
  ちげーし!?」

「ホント、分かりやすいよなー。
  顔に出てるし。」

「結生〜、莉世〜、一緒にお昼…。
  あれ、ど〜したの?」

「んー?
  結生が物思いに耽てて…」

「さぁ行こうか、琉煌!
  あんな奴放っとこ!」

「えっ!?
  ちょっ、酷っ!?」



俺達はいつも、屋上でくだらない話ばかりしている。

話題がないくらい、同じ話しかしないのだ。

まぁ、俺にとって、ここが気楽に出来る場所なのかもしれない。

「っていうか最近結生さ、琴嶺のことで頭一杯なんじゃね?」

「うん、最近ぼ〜っとしてるよね。」

「してねーよ!
  …まぁ、あいつのこと心配してるだけ。」

「最後なんて言ったの?」 

「…何もない。」

「本当に結生は、心配性だね。」

「ホントだよなー。
  まぁ、あいつなりに琴嶺のことを思ってるっていうことだからさー。
  てかずっと思ってたけど、結生の好きな人って琴嶺なんじゃねーの?」

「ぶっ!?
  はぁ!?」

「あ、もしかしてホント?」

「顔が真っ赤〜。」

「ちげーし!?
  好きなわけないだろ!?」

「「じー…。
    怪しい。」」

「だからちげーって!」 

「まぁ、そういうことにしよー。」

「だね〜。」 

本当こいつら、一発ぶん殴ってやりたい。

何故か俺の心は火照っていた。

確かにあいつのことは嫌いではない。

俺の好きは、どんな好きなんだろ…



放課後-

俺達は、学校行事で演奏するメドレーを練習している。

それぞれのパートに分かれてやっているのだが…

「なぁ結生、ここ分かんねーんだけど。」

「…お前は何しに来たんだよ。
  早く戻れ、先輩や後輩が迎えに来るだろ?」 

「まぁまぁ、いいじゃーん!」

「…はぁ。
  で、どこが分からないって?」

「ここのホルンなんだけど…」

「…あぁ、それなら…」

「ありがとー!また来るわ!」 

「来なくていい。」

「あの、結生先輩」

容姿端麗で、いかにもお嬢様系の後輩。

俺と同じパートをやっている、満晴逢恋みそらあこ

「ここの旋律ですけど、フルートと合わせたらどうでしょうか…」

「…じゃあ、咲護のとこに行くか。」



「おーい、咲護…」

「あれ、いませんね。」 

「もしかしてサボりか?」

「穂架先輩がそんなことするって思ってるんですか。
  あの先輩のことですから、何かあったんでしょう。」

「はぁ、また永か?」

「結生先輩のお知り合いですか?」

「あぁ、まぁな。
  部活に入ってくるかもしれない同級生。」

「この時期にですか?
  珍しいですね。」

「この前、オーボエが足りないって言ってただろ?
  それで俺が誘ったんだけどな。」

「…会ってみたいです。
  入部してくれるといいですね。」



練習が終了し、3人で片付けていると、徐々に大きな足音が聞こえてき、音楽室の扉が開いた。

猛スピードで走ってきた永だった。

「私!
  吹奏楽部に入るーっ!」

「そっか。」

「そりゃあ良かった!
  琴嶺ならそう言ってくれるって信じてた。」

「僕も嬉しいよ。
  有難う。」

最初、俺達は戸惑ったけど、その言葉を聞いて、喜色満面だった。

嬉し涙を零す永が、何だか恋しくなった気がした…

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