サイク屋

チャンドラ

サイク屋よ 永遠に。

河童にマジカライジングセイバーで電撃を与えたがあまりダメージを受けた様子はない。

河童は工の後ろに回り込みパンチをしてきた。
工はそれを交わし、河童に蹴りを入れた。河童は少し怯んだようだ。

「オマエテゴワイホンキユク」
次の週間、今までの動きよりはるかに早い速度で河童は走り出し、背中に頭突きしてきた。

「うわぁ!」
思わず悲鳴をあげた。 工は2倍では敵わないと感じた。 身体能力倍増装置のリモコンを使い、反動覚悟で3倍に倍率を変えた。

「オラ! オラ! くらぇ!」
マジカライジングセイバーとキックを河童に浴びせた。河童はダメージを受けてるように見える。

「ソノケンジャマイラナイ」
河童が物凄い速さで工の元へ近づき、腹パンをしてきた。

「ぐはぁ!!」
工は思わず声を上げた。 工は右手に持っていたマジカライジングセイバーを地面に落としてしまった。 地面に落ちてあるマジカライジングセイバーを拾おうとすると、河童はマジカライジングセイバーをを蹴り上げた。 マジライジングセイバーは、空高く舞い上がり湖の中に落ちて沈んでいった。

「なんてことだ....」
河童に対する最も有効な武器を失ってしまった。 身体能力倍増装置の発動時間も残り約2分あまりである。
工は、反動が大きくなるのは承知の上で倍率を4倍に引き上げた。

河童の後ろに回り込み、工は立て続けに河童にパンチとキックを流し込む。 河童の甲羅以外のところを攻撃した。

「オマエツヨイコンカイニゲル」
河童は、猛ダッシュで湖に向かって走って行った。 工は逃げられると思った。 何とかして逃がさないようにするため、身体能力倍増装置を最大の5倍にして河童を追いかけた。 瞬く間に河童に追いつき、湖と反対側に河童をキックした。 さらに河童に近づき、とび膝蹴りをする。 どうやら河童の戦闘能力を大きく超えることに成功したようである。

「イタイオコタホンキダス」
河童も工にパンチ攻撃をしてくるが、楽々これをよける。 動体視力も5倍になっているのである。連続でパンチ攻撃を仕掛けてくるが、すべて避け、最後の一撃は河童の拳、いやヒレを掴んだ。

「そろそろ、終わりにするか...」
工はとある発明品が置いてある場所の近くまで、河童をキックをかまして強引に誘導した。その機械とはレデュースカプセルである。

工は、レデュースカプセルを持ち、河童に向けた。 
「イヤダツカマリタクナイ」
鳴き言を言っているようであったが、工は容赦なくレデュースカプセルのビームのスイッチを押した。
「これで終わりだ!!!」
ビームは河童に直撃し、カプセルの中に河童が吸い込まれていった。吸い込んでから少しの間、河童はガンッ ガンッとカプセルの中を叩いて抵抗していたが、やがて睡眠ガスの効果で眠りについた。

「ミッションコンプリート!」
 そう叫んだ瞬間、ちょうど身体能力倍増装置の効果が切れたようであった。 工の体にかなり激痛が走った。 倍率を5倍まで上げると、何日もの間、物凄い痛みの筋肉痛にさいなまれるのである。 工は気力を振り絞って麗美に電話を掛けた。

「もしもし... 麗美さん、河童捕まえたので、湖まで迎えにきてもらっていいですか?」
「本当ですか!? わかりました。今すぐ向かいます。」

麗美が湖に到着した。 麗美は工が倒れていて驚いた。

「こ、工さん! 大丈夫ですか? 例の河童にやられたんですか?」
「いや、身体能力倍増装置の反動で。 僕は全然大丈夫... といいたいところですけど、体が上手く動かせないのでちょっと力を借りていいですか?」
工は麗美の助けを借り、麗美の車に乗った。 麗美は車を走らせた。 

「このガラスにいるのが河童ですか? 目つぶってますけど、死んでるんですか?」
「いえ、催眠ガスで眠らせてるだけです。」
「寝てるんですね。 それにしても、本当に河童を捕まえるなんてすごい大発見ですね!あとで写真撮ってもいいですか!?」
「えぇ、まぁ。 写真撮ってもいいですけど他の人には見せないようにお願いします。」

工と麗美はサイク屋に戻った。
「麗美さん、今日は運転ありがとうございました。 いずれ何らかの形でお返ししますから。」
「そうですか、ならうちで働いてくれるとうれしいんですけど。」
意地悪っぽく麗美が微笑む。
「すみません。 それ以外の形でお礼しますから。」
「はい、楽しみにしています。」

工と麗美はサイク屋で別れた。 工は源に電話を賭ける。
「もしもし、親父。 河童捕まえたから明日取りに来てくれ。」
「...分かった。 明日の10時にそっちに向かう。」

電話を切り、工は自分で発明した、マッサージ器を使って体を休めた。明日には少しは体の調子が戻るだろう。マッサージが終わると工は風呂に入り眠りについた。

そして、翌日の10時。
「... おはよう、工。 ご苦労だった。それで河童見せてもらっていいか。」
「ああ、これが例の河童だ。」

河童はまだ眠りについている。 催眠ガスの効果はまだ続いていた。

「確かに我々の開発した合成生物キメラのようだな。よくやった。それで、お前が俺にしてほしいことってなんだ?」

30秒間、沈黙を続けたのち工は口を開いた。

「サイク屋に戻ってこい。」
「え?」
 源はとても驚いた顔をしていた。

「サイク屋に戻ってきて欲しいって言ってるんだ。 RSFラボはお前の代わりに俺が働く。もともとサイク屋はお前が店だろ。お前が本当は店主にふさわしい。」
「... 工。 仕方がないな。とりあえず徳永さんに伝えておくよ。」

それから3日後、再び源が店にやってきた。
「... 工。私はRSFラボを退職してきた。これからは私の穴埋めとしてお前が働くんだ。」
「分かったよ。」
「... だが、いいのか工。 お前は本当はサイク屋で働き続けたいんじゃないのか?」
源は工の気持ちを聞いてみた。

「確かに、俺はサイク屋が好きだ。でも俺は自分の力を高めてみたいとも思った。RSFラボで働いて自分の発明力を鍛えることができたら、またサイク屋で働きたい。」
「... 工。」
「だから、それまで店を頼む。」
「ああ、こっちのことは気にせず思いっきりやってこい。 いつでも待っている。」

サイク屋は再び店主が平賀源になった。 そして、工は自分の力を高めるため、RSFラボで働く。

サイク屋。 源と工がいる限り、この奇妙なお店は何事もなく続いていくことであろう。

-サイク屋 おしまい-

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