サイク屋

チャンドラ

解体コンテスト パート1

平賀工は発明品を作るだけでなく、出来上がったものをバラバラにするのも得意である。よく父親が買ってきたおもちゃをドライバーを用いてバラバラにして遊んでいた。 ゲームなどもよく解体して元通りに戻していた。 それが工の発明品を作る技術の礎になったといっても過言ではない。

麗美との飲み会から一週間後、いつも通り店を切り盛りしていた工であったが、突如驚くべきお客がやってきた。
背の高い40代半ばという感じの男性。
「...久しぶりだな 工」
「親父...」
紛れもなく工の父親であった。名前は平賀源。サイク屋の開業者にして工を超える凄腕発明家である。
「何の連絡もなしに戻ってくるとはな。どうしたんだよ。」
ぶっきらぼうに工は父親に話をした。
「...やれやれ。相変わらず可愛げがないな。そんなにサイク屋を出て行ったのを恨んでるのか? 俺はお前の大学進学のために出稼ぎに行ったっていうのに。」
「別に頼んでないだろ。」
「... まぁ、いい。今日はそんな話をしに来たんじゃない。お前以前、河童に会ったらしいな。徳永さんから聞いたよ。」
話題が突然変わって戸惑う工であったが、言葉を返す。
「ああ。会った。親父、徳永白って人の知り合いか? 親父はRSFラボってところで働いてるのか? ってかあの河童は何なんだ?」
疑問に思ったことを立て続けに源に聞いてみた。
「... 悪いが全ての質問には答えられない。お前の予想通り、俺は徳永白って人知り合いで、RSFラボで働いている。そしてあの河童だが、お前の活躍次第では答えないこともない。」
「活躍? 活躍って何だ?何をさせる気だ?」
不安そうな工を見て源は微笑みながら告げた。
「そんなに構えることではない。お前の得意分野だ。近々、解体コンテストってのがある。それに優勝すればあの河童について教えてやる。」
「解体コンテスト? 何だそれは?」
解体コンテストなんて工は聞いたことがなかった。どれくらいマグロを綺麗に捌くことができるのか競う大会とかか?
「RSFコンテストが今年から主催する大会なんだが、RSFラボが緻密に作り上げた機械を工具を使って素早く華麗に分解するのを競う大会だ。」
源が言うには、渡された機械をドライバーやスパナなどといった工具を活用して、部品単位まで細かく分解する大会だそうだ。制限時間が設けられており、3分間の間でどれだけ綺麗に分解できるのかを競うのだという。ちなみに部品を工具で傷をつければ減点されるらしい。
「解体コンテストって、それ意味あるのか?普通、発明品コンテストとかやったほうがいいんじゃないのか?」
「... 分かってないな。機械を分解するってのは機械を観察し機械の構造を頭の中で組み立てて分解をするもんだ。機械の分解を正確に早くできる者は一流の機械技師といってもいい。」
源にそういわれたら妙に納得した。
「分かった。参加するよ。そいつに優勝したら、あの河童について教えてくれるんだな?」
「... ああ、勿論だ。ちなみに優勝者にはRSFラボが開発した自動運転車が贈られるからせいぜい頑張れよ。」
「別に運転しないからいらない。」
「... 売れば300万はいくと思うぞ」
「そ、そうか じゃあ優勝目指す。 つっても俺に勝てる奴なんているとは思えないけどな」
自信満々に言い切った工であったが、源は工に告げた。
「... 優勝目指すなら本気でいったほうがいいぞ。参加者の腕前はかなりのレベルだ。いくらお前でも苦戦するだろう。」
源がいうには参加者は一流理系大学者や超一流企業の機械技師が続々参加し、かなりの腕前だそうである。
「のぞむところだ。ブッチギリで優勝してやるよ。 優勝したらあの河童のこと洗いざらい話せよ!」
「... ああ、勿論だ。 せいぜい優勝目指して頑張れよ。これが解体コンテストの概要プリントだ。これに開催日時、開催場所が記載されてある。じゃあな。」
源は工にプリントを渡すとすぐに店から出て行った。

「サイク屋の平賀工! 解体コンテスト優勝するぞ!」
無人のサイク屋でそう宣言すると、店に人が入ってきたので、慌てて接客モードに切り替えた。
解体コンテスト、果たして平賀工は優勝できるか否か。

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