異世界に行ってみたら性別が変わっていた

チャンドラ

魔法

 泉とトーワは盗賊団と戦いの後、ようやく武器屋に到着した。武器屋といってもお店は小さめの小屋で、どちらかというと屋台に近い感じである。木造の作りで、店の前には看板が置いてある。

「やっと。到着した。ここが、僕のお店、『アルム』だよ!」
「ここが、トーワさんのお店なんですね。他にバイトをしているかたがいるんですか?」

 トーワが店を任せて街に出向いたということは、誰かが今店番をしているのだろうと泉は考えた。

「いや、他のバイトは誰もいないよ。今日はお店休みなんだ。」
 なるほど、お店の定休日ということか。そういえば、この世界にも曜日という概念が存在しているのだろうか。

「なるほど、そうだったんですか。」
 適当に泉は相槌を打った。
「うん、まぁとりあえず店の中に入ってよ。」
 泉はトーワに案内されて、お店の中に入る。店の中は中世風の洒落た内装を施してあり、壁には鎧や盾、剣など様々な武器が飾られていた。

「色んな武器がありますね。」
「うん、そうだね。他にも大きな武器屋はあるけど、うちに置いてある武器は珍しいものが多いから結構儲かってるよ!」

 珍しい武器とは、何か特別なスキルが使えたりとか、もしくは威力が通常の物より高いという感じなのだろうか。

「ところで、トーワさん。ちょっとお聞きしたいことがあります。」
「うん。いいけど、何かな?」

 泉は先ほどの盗賊団との戦いで、魔法のことに興味を持った。ばれはしないと思うが自分は異世界からやってきたので、あんまり変にに思われないように注意しつつ、魔法についてトーワに聞いてみようと思った。

「私はもともと遠いところに住んでいて、あまり他の種族やこの辺の街について詳しくありません。なので色々と教えてもらっていいですか?」
 上手い感じに自分が世間に疎いということを伝えた。

「いいけど、遠いところってどこら辺から?」
「すみません、実は勢いで住んでいたところを飛び出してきたので、どうやってメイナードまで来たか覚えてないんです……」
 苦しい言い訳をトーワにする。怪しまれないだろうか。

「そうなんだ。まぁ、ミャーコちゃんにも色々と事情があることだし、あんまり聞かないことにするよ。」
 そう言われ、ミャーコは安心した。

「すいません……ありがとうございます。それで、お聞きしたいのはまず魔法についてなんですけど。」
「魔法?」

 泉は魔法の種類、魔法の発動条件、使うことでのデメリットなど色々聞いてみたかった。

「はい。実はさっきの盗賊団との戦いで初めて魔法を使うことができたんですけど、魔法って何か発動条件とかはあるんですか?」
「君の両親は魔法の使い方も教えてくれなかったのかい?」
 トーワが訊いてくる。やばい。怪しまれただろうか。

「はい。両親とあまり話す機会がないものでしたから……」
 適当に言い訳をした。

「そうか……僕も魔法を使ったことがないからあんまり詳しくは知らないけど、魔法っていうのは『イメージ』すること出来上がるらしい。」
「イメージ、ですか?」
 イメージするだけで、魔法が使えるものなら誰でも使えそうなものだが。

「うん。魔法使いの人たちは自分の頭の中で、使いたい魔法を何度も頭の中でイメージして、それを繰り返すっていう修行をしているうちに使うための呪文が頭の中で湧き上がるって知り合いの魔法使いが言っていた。
 あと傍目から見たら同じような魔法でも呪文は使う人によって全部違うらしい。」
「え? そうなんですか?」
「そうなんだ。軽い物体を動かす魔法にしたって、人によって頭に中に思う浮かぶ呪文は人それぞれなんだ。」

「なるほど。一応理屈では、誰でも魔法を使うことができるわけですね。」
 使いたい魔法をイメージして繰り返す修行で身に付くというのなら、おそらくどんな種族でも魔法が使えるのだろう。

「うん。ただ、人や種族によって得意な魔法、使える魔法に偏りが生じるらしいんだ。」
「偏り……ですか?」
「そう、例えばエルフだと回復魔法が得意になる傾向があるし、人狼だと、肉体操作の魔法が得意になる傾向があるんだ。」

 なるほど、メイナードでトーワと会ったとき、エルフである自分を見て、回復魔法が得意だと思ったのだろう。

「そうなんですか。魔法については大体分かりました。」
「それにしても、魔法のことよくわからなかったのによく盗賊団のとき魔法が使えたね! すごい才能だと思うよ。」
 確かに自分はこの世界に来たばかりで大した修行などしていない。自分があの時使ったのは雷の魔法である。元の世界にいたころ、自分はある電気攻撃を使う主人公のラノベを気に入っていた。だからなのだろうか。

「そうですかね。あの時はなんか偶然出来たっていう感じです。あと、魔法ってどんな種類があるんでしょうか?」
 適当にはぐらかして魔法の種類について尋ねてみる。

「僕が知っている限りでは……大まかに分けると火の魔法、水の魔法、風の魔法、雷の魔法、回復魔法、肉体操作の魔法、移動魔法、召喚魔法っていったところかな。」
 中々、種類が多いようだ。トーワの話を聞く限りまだ他の種類の魔法も実在するのだろう。

「ミャーコちゃんは多分、雷の魔法が得意なんじゃないかな。もし魔法の訓練をしたいなら雷の魔法に絞って訓練するのをお勧めするよ。上級の魔法使い以外には複数の魔法を使うのは難しいからね。」
「そうですね。いざという時のために何個か魔法を使えるようになりたいと思います。」

 せっかくこの世界にやってきたのだ。すごい魔法を使えるようになってやろうと泉は思った。
 

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