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佐久間ことり

プロローグ

「えー、では。入学式が終わり、ここからは、学校説明に入ります。」
 もうとっくに桜は散ってしまった4/10。例年より早い開花だったため、ほとんどが葉で生い茂っていた。
暖かい風が残りの花びらを体育館へ運び込む。世に言う『入学式日和』だ。

 この学校、栃木県立豊上高等学校。国が少し荷担しているため、実験的な授業の取り組みが多い。一番大きいのは、すべての黒板がタブレット式。テストも一人一人の配布されたタブレットで行う。また、どこでも情報を共有できるようにブレスレット型小型インカム付きPCを配られる。このインカム、耳に近づけなくても声が聞こえるのだ。テストの時は自動で電源が切れる優れもの。
 そして一番の特徴が、講義制であること。1時間30分を1コマとして、週10コマ取ることが義務付けられている。ただし、何限に入れてもよい。一年生の時は、国語、コミュニケーション英語、数1を必須としこれを含めた10コマである。
 また、制服はあってないようなもの。女子はスカート、リボン、ブレザーを着ていれば他は何を着てもよい。男は、ズボン、ネクタイ、ブレザーだ。ブレザーに関しては、登下校時のみ着ていればいいらしい。

 そして、この学校の重要なこと。部活に絶対入らなければならないということだ。なんと、この学校部活だけで70以上あるらしい。似たり寄ったりのが多いのかと思えば、そうではないらしい。その中から、自分に合うものを見つけ出せ。という感じらしい。
それをするために、入学式の次の日=4/11に『部活祭』というものをするのだという。
これは、一年生争奪戦とも言われる大きな行事だそうで、それでどれくらいの人数がとれたかで、部活祭の予算が部活ごとに終わったあと出るらしい。また、そこでとれた人数で、位が部活にはあるのだという。

 こんな感じのことは入る前から知っているにも関わらず、一からまた体育館で説明された。長々と続く説明を半分寝ている頭で聞いている。
横についている窓から光が入ってきて、天使の梯子のように見えていた。

 うっとりしていたら、いつの間にか一年生が外に出ていく。私もあとを追って外に出る。外の通路を進み歩いていく先。私はふと誰かを見つめていた。
黒い髪で男としたら少し長めなのだろうが不自然ではない。とても整った青年という顔。ネクタイの色からして三年だろう。
お伽噺に出てくるような剣を腰につけ歩いていく。

なんだか、私は、このあと、この人のあとを追いかけて生きていくのだろうな。と考えていた。
理由はわからない。
ただ、そんな気がしていた。
春の暖かな風は、そんな私を包み込んでいた。

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