英雄って何ですか?

たかっしー

13話

先に動いたのは男からだった。男は、懐から投げナイフを4本取り出し、片手に2本ずつ持つと、左手のナイフをそれぞれ、レディアンの頭と右足の太もも両方に向けてとんでもない速さで鋭く投げた。

対するレディアンは自身の体の中にある魔力を全身に流れさせ、身体能力を上昇させることで頭のナイフをギリギリ半身になるが軸足にした右足の太ももにナイフが刺さる。

「くっ、こんな物!」

痛みに耐えながらレディアンはナイフを抜いてそのまま構えた。
そして、今度はレディアンから攻め立てていく。刺突から切り上げ、斜め切り、そのまま流れるように横に振るう。だが、それらを男は右手のナイフで時には弾き、時には避けるなどの動作で全て回避していく。

そして、レディアンの動きに鋭さがかけていき、ナイフが刺さった太ももからバランスを崩すようになっていった。たしかに血を流しているが、貧血になるにしては早すぎる。つまり、

「毒が回り出したか。即効性といってもこんなものか。」

「くっ、やはり、毒ですか…。」

「やはりもクソもそれしか無いだろう。お前面倒だから、動きを封じさせて貰った。因みに、お前何するかわかんねぇから殺すわ。」

「はぁ、墓穴を、ほり、ましたね。」

「じゃ、死ね。」

男はレディアンから2メートルほど離れたところから、[雷弾サンダーバレット
放った。

そして、レディアンは目を瞑り、笑った。

「想い奏でる我が歌よ。我が願い叶えたまえ!」

その瞬間、レディアンから先ほどまでと比べ物にならない威圧感が出る。それを見た瞬間、男は今まで自然体だったのを警戒するようにあたりを確認した。だが、何も変わった様子がないことを確認すると、更に警戒度を上げた。

「やはり、これは目立ちますね。早くみんなを解放したいですし、さっさと片付けます。」

その言葉を最後にこの教室にいる全て・・の人は、レディアンの姿を見失った。
そして、次の瞬間にレディアンのナイフが男の目の前に迫った。が、男は反射的に背を後ろに倒してギリギリ避けるが額を浅く切ってしまう。

「くっ、いてぇなぁ!」

興奮しているのか、男は怒鳴るが、すぐ後ろからレディアンの声がした。

「ならはやく沈みなさい。」

レディアンは背後から鋭くナイフ穿つが、男は自身の魔力を全身に流れさせて、身体能力を強化し、無理な体勢からハイジャンプする。そして、空中から右手にある2本のナイフの内の1本をレディアンの背中に向けて投げた。

レディアンはそのナイフを避けるが、その隙に男はレディアンから距離をとると、額を拭い目に血が入るのを防ぐ。

「私から距離をとるのは愚策だと思いますが?」

「はっ、なんの策も無しにこの学校に来るわけないだろ。その程度、対応可能だ。」

「ハッタリは無駄ですよ?」

「それはお前自身が確かめな!!」

男は、先ほどの何倍もの速さでレディアンに迫る。だが、まだレディアンの方が僅かに速く、男の数歩先に[氷壁アイスウォール]で、高さ3メートルぐらいの氷の壁を展開する。

「チッ、邪魔くせぇ。」

男は苛立たしげにするが壊したりせず、横に避けてレディアンに向かう。

そして、自分の足とナイフに風の付与魔法をかけ、更に速度と鋭さを上げる。

「!!」

それを見たレディアンは即座に下がろうとするが、

「逃すか!!」

男が逃すはずもなく、ナイフを投げる。
そのナイフは男の速さとナイフの鋭さによって、空気を切り裂き、今まででトップスピードを出しているため、レディアンは避けきれないと判断して、腕を前に出し空中に先ほどの縮小版の[氷壁アイスウォール]を展開してナイフを止めようとするが、鋭さの増したナイフはスピードを僅かに減速させただけでそのまま進み、レディアンの手のひらに刺さる。

「いつっ!?」

「ほらほら、まだまだ行くぞ!!」

男は執着に何本もナイフを投げる。

「何処からそんな数!?」

驚くレディアンだが、先ほどの攻撃から防御できない事を悟って魔法で受け流して避けることに専念するが、手のひらが痛むからか集中力が散漫になり劣っているスピードが更に落ちる。
男はそんなレディアンに向かい、ひたすら走る。

そして、ついに男はレディアンに追いついた。

「!?[火の咆哮ドラゴンブレス]!!」

レディアンは男に向かいオリジナルの高火力の炎を前方に放つ中級魔法を使い広範囲の炎の攻撃を放とうとするが、男はナイフを魔法陣に向かいナイフを投げつけると、魔法陣が割れる音と共に消え去った。

「なっ!?」

驚くレディアンを蹴り飛ばす。

「カハッ。」

そして、男はそのままレディアンに追撃すると見せかけて観戦している4人に向かい4本のナイフをそれぞれ投げる。

「うわっ!」

「あぶねっ!」

「ふっ!」

「クッ。」

それぞれ避けたり弾いたりしながらナイフを躱すが、カノンだけは悔しそうに口を固く結ぶ。

「何してやがる。同じ手をそうぽんぽん使うとかなめてんのか?」

「カノン君、バレてるよー。」

「そんな事は分かってる……!」

「なんか魔力をそこのリーダーっぽいのに集めてるなぁって思ってたら魔法使う気だったろ。そんなもんにわか知識で出来るもんじゃねぇよ。馬鹿が。」

「もぉ僕正真正銘のすっからかんだよー。これ以上出したら死んじゃうよ〜。」

「同じくね。バレないようにレディアンに派手にやってもらったのに。」

「そんな事よりレディアンは大丈夫かよ!!」

「もう、魔力反応も殆ど感じ無いわね。」

「てか、さっきの破壊するやつなんなんだろうねー。」

「………上級魔法の時空属性だ。しかも付与したところを見るに時空と風の2属性持ち。」

「それはきついわね。」

「チッ、バレてんのか。あーあ、そうだよ。俺の属性は時空と風だよ。奥の手使わせられるとは重わなったぜ。そこの嬢ちゃんのスキル、[念話]だろ。インチキしやがって。怪我しちまったじゃねぇか。」

「あんなにやって軽傷とか、化け物かよ。クソったれが。」

少し落ち着いてきたのか、男は最初のあちゃらけた雰囲気で会話をする。

「それじゃぁ、君たちは蛮勇で挑む勇者かい?」

「はっ、バカ言え。俺たちゃ化け物に襲われた一般市民だよ。」

「そっかー、確かにねぇ。じゃあ化け物は化け物らしくしなくちゃねぇ。」

そう言って男は寒気がするような顔で笑った。

「な、何する気だよ。」

「何って、生徒を守るために化け物と戦ったけど、負けてしまった者はどうなると思ってるんだい?」

その言葉を聞いてカノンは顔を青ざめさせた。

「!?そ、それはまさか!!」

「そう、殺すの、さ!」

男は喋り切ると同時に懐からナイフを取り出してレディアンに向かい投げた。


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