英雄って何ですか?

たかっしー

11話

朝のクラス

昨日、ロストから教えてもらった魔力の性質を現す訓練について話していた。

「昨日の訓練って辛くは無いけど忍耐力がいるよなぁ〜。」

「あんたそんなのなさそうよね。」

「はっ、それは前の話だ。先生の説教と比べたら何でも耐えれるぜ!」

「そんなに嫌だったんだ…。」

「あら?レディアンはどう?」

「私が間違っている事を正していただけるのだから、苦痛では無いわね。」

アーカムはレディアンの反応を聞いてムッとした。

「おいおい、あんたは兄貴のことが好きだからそんなこと言えんだろ?」

「え?別に異性として好きでは無いわよ?」

『え?』

「え?」

レディアン以外の会話メンバーが肩を組んで集まった。

「あれは乙女の発言よね?」

「というか崇拝?」

「いやいや、大穴で真面目すぎるってことは?」

「えー、私は乙女の方かなぁ?」

「あ、死んだと思ってたからその反動?」

『ああ〜、なるほど。』

「聞こえてるわよ?はぁ、そんな邪推しなくてもいいじゃない。反動がある事は認めるわよ?でもそれ抜きで私はあの方を異性として見てないわよ。」

「じぁあ何よ。」

「理想像、かな?」

『理想像ー?』

「そう、だって私が小さい頃、覚えてるだけで沢山の事をしてるもの。掃除や洗濯、料理などの家事全般。小さい子の面倒を見て、自分の知ってる事ーーー文字や言葉などーーーを教えたり、お小遣いを貰わずに一週間で庶民の家の一ヶ月分のお金を稼いだりいろいろしてたのよ。しかも帰ってきたら総ギルドマスターでしょ?すごすぎるわよね。」

「ああ、あれか。あれホントなのか?」

「未だに信じられないんだけど。」

「私もー。」

「信じなくていいと思うわよ?」

「え、いいの?」

「兄様なら、1つの情報だけに縛られるなって言うと思うわよ。そういうのは騙されやすいからって。」

「ああ、確かにいいそうだな。」

「でも、ホントだとするとすごい事だよなぁ。」

「そうだな。なんたってギルドの大元締だからな。」

「いやいや、それもだけど噂だよ噂。」

「なんの?」

「見た目がわからないって言う。」

「はあ?見た目がわからない?色んな所に行って見られてるだろ?それに国王とか皇帝とかに評議会に出席して会った時に絶対顔は見て城とかで情報が流されてるはずだろ。」

「それが、会うたびに見た目が違うらしいんだ。ギルドの噂ではある時はいかにもって感じの筋肉が鍛えられた大男、ある時はムッチムチのお姉さん。国外の噂では、お偉いさんと会う時は1回1回違う姿で現れるらしい。」

「それは凄いけど、俺らとはいつもあの姿だろ?ならあれが本当の姿じゃねぇのか?」

「まぁ、そうなんだけどさ。本当にあれか気になるだろ?だって噂が立つってことは本当かもしれないんだぜ?」

「ああ、確かに、気にーーー」

「気になるよねぇ?」

『!?』

友人同士で雑談を交わしている途中、30くらいの男が会話に割り込んできた。それだけなら学園の関係者の誰かかもしれないが、その男は黒い衣服に身を包んでいて、学生でも教師でもない姿だった。

何より驚いたのは男がいるのはアーカムの友人とレディアンの間であり、そこは言わずもがな学園の敷地内。つまり、沢山の視線がある中で誰にも気にされずにこの場所まで来て、少し後ろにしたとしても反対側の人まで気づかなかったからだ。

「おー、そんなに警戒するなよ。おっちゃん悲しいぜ。ま、いいか。この部屋にいる奴、今から拘束するから動くなよ〜。後、別に女共の体を好きにするわけじゃないから安心しろよ〜。一応男共もな。」

クラス中が驚いていたがそう言われて、反抗しないなど思春期の子供にはむりな話だった。

「はっ、誰が聞くかよ!【ファイヤーーーー」

「止めろアーカム!」

「!?」

魔法を打とうとしたアーカムは近くにいたカノンに肩を揺すられ、不安になっていた事と邪魔されるとは思っていなかった事が合わさり、集めていた魔力が何の効果もなく解かれてしまった。

「何で止めたカノン!?」

「驚くのは分かるが冷静になれ。私達が今いる場所を考えろ。」

「校則とか考えてる場合か!」

「それは今は適合されないし、そのことではない。ここの警備員が何人居るか知らないが、最低探索者ランクがCに相当される腕利きだぞ。そんな方達を気にせずに侵入してあまつさえ、私達の前に出てきて1人で居る。1年とは言ってもSクラスの私達の前に1人で、だ。これで分かっただろう。」

「ああ、相手は手練れってことか。」

探索者ギルドだけでなく、ギルドには全てE〜Sまでのランクが存在する。ギルドによって基準が違うがDまでが薬草などの採取のみでなれて、Cからは戦闘力が基準に入る。つまりここで1人前と言われる。Bではある程度の社交性が入りAではギルドからの信頼で入れる。Sはギルドマスターが集まっての合議か、総ギルドマスターによる指名で決まる。

「はい、よく分かったね。因みに自称だけどSランク相当だと言っておこうかな?」

「くっ、平気で言いやがって。まじの可能性があるな。」

「あ、一応言っておくけどここから出ても廊下に仲間がいるし、念話とか出来ても結界張ってるから並みの奴じゃ通らないよ〜。因みに他のクラスにも入ってるから無駄な特攻とかやめてね?」

「ふむ、交渉の余地は?」

「あるわけないでしょ。」

「お互いの会話は?」

「無駄だね〜。」

「はぁ、聞く耳を持たないか。」

「上の指示なもんでね。油断するなって。だからそんなに睨まないで。勘弁くださいな〜。」

「せめて、クラスで話をさせてもらえないだろうか。」

「うーん、じゃあ、この教室に15人居るよね?だからその内10人捕虜としてこっち側いてもらうから。」

「捕虜ってことは無いんじゃ…。」

「捕虜だよ〜。だって、大きく言ったら侵略者だよ?じゃあ、生きてるの捕まえたら捕虜でしょ〜。」

「それより10人は多すぎないか?」

「これでも結構融通を利かせてるんだけどなー。気づいてるよね?捕まってるの君達なの。結構時間もあげてるし何より話し合いを認めたじゃん。甘すぎじゃないかな〜?」

「うっ。」

「分かったら、そこに固まってるメンバーから3人、その他から1ずつねー。」

「何でそこから何ですか!」

「だって、頭良さそうだから早く終わらせるかな〜ってのと不公平を無くすためにだよ。」

「そんな単純な!?」

「うるさいなぁ。殺すよ?殺してないのはただめんどくさくなりそうだからなの。わかった〜?」

「う、分かりましたわ。」

「じゃ、さっさとしてくれる?」


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