英雄って何ですか?
2話
ロスト 6歳
エレステッドの死が確認されてからすぐに調べられたが寿命だとわかった日。その村の文字通りの全ての人々が悲しんでいた。その日は天気も悲しんでいる様な冷たくそれでいて元気のない雨が降っていた。そしてエレステッドが埋まっている墓地の近くで雨に濡れながら立っている2人の男女がいた。
「……………ああ、そういえばお義父さん、雨の日が好きだったな。」
「……………そうですね。何故か雨の日になるといつもより機嫌が良くなってロストや村の子供たちと遊んでいました。」
「……………あんなに元気だったのになんで死んだんだろうな。」
「……………お父さん、いつも言ってました。生き物の死はいつ来るかは誰もが予測できない。だけど、誰もが死にたくないと思っている。それは動物もモンスターも同じ。だから、生き物は必死に生きる、必死に考える。それがどんな結果を産んだとしても、必死に考えて生きている姿は何にも代えられないほど美しい。それが好きなんだって。」
「……………そろそろ行こう。家でロストが待ってる。」
エレステッドの前で泣くのを我慢しているがその限界が近いのだろう。アクアと一緒にガラスが帰ろうとしていると、後ろに同じく雨に濡れながら立っている細身の男がいた。
「………すまない、気がつかなかった。すぐに退く。」
「…………」
悲しいことがあったせいか普段よりも気配を探知できていない2人。そして雨で視界が悪かったこともあるだろう。だから、その男から微かに殺気が漏れていたとしても気がてけなかった。
そして、男は雨でぬかるんでいる土を踏んでいるとは思えないほどの素早さで懐からナイフを取り出しアクアの首を切ろうとしていた。常人なら絶対気づかずに、その生を終わっていただろう鋭い一撃。
だが、この2人は常人ではなかった。いくら悲しいことがあったとしても。だてに長年探索者をしていたわけではなく、アクアは実力だけはSランクまであるほどの者である。当然反射でも避けることは造作もなかった。それどころかお返しにと溝に本当に反射かと疑うレベルの威力の蹴りを放っていた。
それは男も想定していたのだろう。きちんと避けていた。
「…とても物騒な挨拶ですね。どちら様でしょうか?」
「名乗るななどない。***を殺すだけだ。」
その異質な声を聞いてガラスは首を傾げたが、アクアだけは驚愕していた。
「アクア、あいつ今なんてーーーーーー」
言ったんだと続けようとしたガラスは最愛の妻の切迫した表情を見て言葉を噤んだ。
「……ガラスは逃げて下さい。そして村の全ての人と一緒に村からあなたの屋敷まで逃げて下さい。私はここで足止めをしますので。」
「そんなこと出来るわけないだろう!俺たち2人でなら取り押さえれる!」
「無理です。この方はあのお父さんでも恐らく殺せません。そんなのに私たちが勝てるわけがないでしょう。」
「やって見なければわからないだろう!いつものお前らしくないぞ。」
「当たり前でしょう。相手の殺気が私だけに来ているのですから。」
「なっ ︎俺は眼中にもないってことか。だが、尚更お前を置いて行けねぇ。俺も残る。」
「あなたはバカですか!領主なんですから領民のことも考えて下さい!」
「うっ、だ、だが勝てばいいだろう!」
「それが無理なんですって!それに子供たちはどうするのですか!」
「くっ、うぅぅぅ、わかった………。ちゃんと帰ってこいよ!」
その言葉を最後にガラスは去っていった。
「ふぅ、お待たせして申し訳ありません。」
「いや、あいつは大事な役者だからな。」
「役者?一体何をーーーーーー」
「お母さん?」
「?!ロスト!何故あなたがここに!」
「お腹がすいた〜」
「くっ、早く逃げなさい!ここは危険です!」
(何故こんな時に。間が悪いですね。)
「おっ、ちょうど標的がきたな。」
「なっ!?あなたの標的は私ではないのですか!」
「お前も標的さ。だがな、お前は本当の標的をやるのに邪魔だから標的なんだ、よ!」
男はロストに向かって走り出した。ロストは訓練を受けているわけではない。ただの魔力量が多いだけの幼児なのだ。だから避けれない。だが、2人の間にアクアが入り、ロストを殺されることを防ごうとする。
「チッ、やっぱり邪魔だな。」
男はナイフを持っている手に黒い魔力を纏い柄を伸ばした。
(あのナイフは、ただ柄が伸びただけ、ってことはありませんよね。)
男はナイフを正面に構えて先程の比では無いぐらいのスピードで走ってきた。魔法で強化でしているのだろう。
「面倒ですね!」
そう言って迎撃しようとした時、アクアの腹部から先ほど見たナイフが生えていた。
「グハッ!な、何故背後に………。
「お前、緊張で頭から幻影って言葉が消えてるぜ。」
「げ、幻影?」
「ああ、幻影だ。俺の暗黒魔法は凄いだろう?汎用性抜群だぜ。じゃ、さよなら〜〜〜。」
男はアクア背後から元ナイフを抜いた。
「カハッ!ろ、ロスト、逃げなさい。この腐れファザコンから。早く。」
「おいおい、俺の創造主をファザコン呼ばわりかよ。間違っちゃいねーがね。」
「おかあさん。痛くない?大丈夫?死んじゃ嫌だよ。」
ロストは泣いていた。身近な人がいきなり死んだのだ。いつも一緒だと思っていた人が。そして、その悲しい気持ちが消えていない内に母を目の前で殺されそうになっているのだ。その感情が目から溢れ出している。
「私は大丈夫です。だから早くガラスのところに行って下さい。私はあなたたちと暮らせてとても楽しかったです。ご飯を食べたり遊んだり、お話をしたりして。とても幸せな時間でした。もっと、もっと、一緒に、いたかっ、たの、ですが、あなたたち、だけでもい、き、て………………。」
その言葉を最後にアクアは死んだ。
ロストはアクアの言葉が理解が出来なかった。いくらロストがほかの子供よりも頭が良いと言っても子供は子供だ。だが、そんなロストにもアクアが死んだということだけは理解出来た。それは同時に自分の家族が2人も死んだということである。そんなことは子供のロストには耐え切れなかった。
「ああ、やっと死んだか。死に際は見届けるっていう習い事をするのもめんどくせぇ、だけどこれをしないと☆€○〆になれないからな。ああ、めんどくせぇ。」
「よくもお母さんを、許さない。」
「はっ、許さないって何する気だよ。ガキに何ができるってんだよ。」
「ころす!!!」
そう言うとロストの体からあり得ない量の魔力がでてきて、あっという間に墓地を囲んだ。
「あ?何かと思えば暴走かよ。こんな時に面倒だな。」
そう、それは魔法使いが必ずクリアしなければいけない魔力の暴走。その結果は魔力量と属性によるが、ろくなことにはならないことに変わりはない。そしてロストは魔力量が多く、現在はその命さえも燃やして魔力を生み出している。そして属性は崩壊属性。数ある属性の中で万物の崩壊を象徴する属性なのだ。つまり何が起こるかと言うと、墓地の消滅だ。それに今頃気づいたのだろう。男はその場から逃げようとする。だが、暴走の方が早かった。
「クソッ!!ならガキを殺して暴走を止める!!」
男はまたロストに向けて走り出した。だが、男の前に光がでてきて男を一瞬だが拘束した。
「孫の邪魔はさせんよ。」
「なっ ︎生きていたのですか!?」
男は光から聞こえてきた声に始めて動揺した。暴走の時でさえ少し焦った程度なのにだ。
「フォッフォッフォッ、儂は死んだよ。こりゃただの魔力だ。それより急いどったんじゃないのかのぅ。」
「あっ!」
「フォッフォッフォッ、終わりじゃよ。」
その言葉を最後に光とともに墓地の中から消え去った。
これで男ーーーー魔人はロストと謎の光により、相打ちという形でこの世から全て消え去ったことになる。それはロストも同じこと。だが、何故かロストだけの頭は無事だった。それも数分したら頭が地面に沈むように消えていったが。
後に、この事件は神象と呼ばれ、数多の学者が調べたが何も分からなかったという。
エレステッドの死が確認されてからすぐに調べられたが寿命だとわかった日。その村の文字通りの全ての人々が悲しんでいた。その日は天気も悲しんでいる様な冷たくそれでいて元気のない雨が降っていた。そしてエレステッドが埋まっている墓地の近くで雨に濡れながら立っている2人の男女がいた。
「……………ああ、そういえばお義父さん、雨の日が好きだったな。」
「……………そうですね。何故か雨の日になるといつもより機嫌が良くなってロストや村の子供たちと遊んでいました。」
「……………あんなに元気だったのになんで死んだんだろうな。」
「……………お父さん、いつも言ってました。生き物の死はいつ来るかは誰もが予測できない。だけど、誰もが死にたくないと思っている。それは動物もモンスターも同じ。だから、生き物は必死に生きる、必死に考える。それがどんな結果を産んだとしても、必死に考えて生きている姿は何にも代えられないほど美しい。それが好きなんだって。」
「……………そろそろ行こう。家でロストが待ってる。」
エレステッドの前で泣くのを我慢しているがその限界が近いのだろう。アクアと一緒にガラスが帰ろうとしていると、後ろに同じく雨に濡れながら立っている細身の男がいた。
「………すまない、気がつかなかった。すぐに退く。」
「…………」
悲しいことがあったせいか普段よりも気配を探知できていない2人。そして雨で視界が悪かったこともあるだろう。だから、その男から微かに殺気が漏れていたとしても気がてけなかった。
そして、男は雨でぬかるんでいる土を踏んでいるとは思えないほどの素早さで懐からナイフを取り出しアクアの首を切ろうとしていた。常人なら絶対気づかずに、その生を終わっていただろう鋭い一撃。
だが、この2人は常人ではなかった。いくら悲しいことがあったとしても。だてに長年探索者をしていたわけではなく、アクアは実力だけはSランクまであるほどの者である。当然反射でも避けることは造作もなかった。それどころかお返しにと溝に本当に反射かと疑うレベルの威力の蹴りを放っていた。
それは男も想定していたのだろう。きちんと避けていた。
「…とても物騒な挨拶ですね。どちら様でしょうか?」
「名乗るななどない。***を殺すだけだ。」
その異質な声を聞いてガラスは首を傾げたが、アクアだけは驚愕していた。
「アクア、あいつ今なんてーーーーーー」
言ったんだと続けようとしたガラスは最愛の妻の切迫した表情を見て言葉を噤んだ。
「……ガラスは逃げて下さい。そして村の全ての人と一緒に村からあなたの屋敷まで逃げて下さい。私はここで足止めをしますので。」
「そんなこと出来るわけないだろう!俺たち2人でなら取り押さえれる!」
「無理です。この方はあのお父さんでも恐らく殺せません。そんなのに私たちが勝てるわけがないでしょう。」
「やって見なければわからないだろう!いつものお前らしくないぞ。」
「当たり前でしょう。相手の殺気が私だけに来ているのですから。」
「なっ ︎俺は眼中にもないってことか。だが、尚更お前を置いて行けねぇ。俺も残る。」
「あなたはバカですか!領主なんですから領民のことも考えて下さい!」
「うっ、だ、だが勝てばいいだろう!」
「それが無理なんですって!それに子供たちはどうするのですか!」
「くっ、うぅぅぅ、わかった………。ちゃんと帰ってこいよ!」
その言葉を最後にガラスは去っていった。
「ふぅ、お待たせして申し訳ありません。」
「いや、あいつは大事な役者だからな。」
「役者?一体何をーーーーーー」
「お母さん?」
「?!ロスト!何故あなたがここに!」
「お腹がすいた〜」
「くっ、早く逃げなさい!ここは危険です!」
(何故こんな時に。間が悪いですね。)
「おっ、ちょうど標的がきたな。」
「なっ!?あなたの標的は私ではないのですか!」
「お前も標的さ。だがな、お前は本当の標的をやるのに邪魔だから標的なんだ、よ!」
男はロストに向かって走り出した。ロストは訓練を受けているわけではない。ただの魔力量が多いだけの幼児なのだ。だから避けれない。だが、2人の間にアクアが入り、ロストを殺されることを防ごうとする。
「チッ、やっぱり邪魔だな。」
男はナイフを持っている手に黒い魔力を纏い柄を伸ばした。
(あのナイフは、ただ柄が伸びただけ、ってことはありませんよね。)
男はナイフを正面に構えて先程の比では無いぐらいのスピードで走ってきた。魔法で強化でしているのだろう。
「面倒ですね!」
そう言って迎撃しようとした時、アクアの腹部から先ほど見たナイフが生えていた。
「グハッ!な、何故背後に………。
「お前、緊張で頭から幻影って言葉が消えてるぜ。」
「げ、幻影?」
「ああ、幻影だ。俺の暗黒魔法は凄いだろう?汎用性抜群だぜ。じゃ、さよなら〜〜〜。」
男はアクア背後から元ナイフを抜いた。
「カハッ!ろ、ロスト、逃げなさい。この腐れファザコンから。早く。」
「おいおい、俺の創造主をファザコン呼ばわりかよ。間違っちゃいねーがね。」
「おかあさん。痛くない?大丈夫?死んじゃ嫌だよ。」
ロストは泣いていた。身近な人がいきなり死んだのだ。いつも一緒だと思っていた人が。そして、その悲しい気持ちが消えていない内に母を目の前で殺されそうになっているのだ。その感情が目から溢れ出している。
「私は大丈夫です。だから早くガラスのところに行って下さい。私はあなたたちと暮らせてとても楽しかったです。ご飯を食べたり遊んだり、お話をしたりして。とても幸せな時間でした。もっと、もっと、一緒に、いたかっ、たの、ですが、あなたたち、だけでもい、き、て………………。」
その言葉を最後にアクアは死んだ。
ロストはアクアの言葉が理解が出来なかった。いくらロストがほかの子供よりも頭が良いと言っても子供は子供だ。だが、そんなロストにもアクアが死んだということだけは理解出来た。それは同時に自分の家族が2人も死んだということである。そんなことは子供のロストには耐え切れなかった。
「ああ、やっと死んだか。死に際は見届けるっていう習い事をするのもめんどくせぇ、だけどこれをしないと☆€○〆になれないからな。ああ、めんどくせぇ。」
「よくもお母さんを、許さない。」
「はっ、許さないって何する気だよ。ガキに何ができるってんだよ。」
「ころす!!!」
そう言うとロストの体からあり得ない量の魔力がでてきて、あっという間に墓地を囲んだ。
「あ?何かと思えば暴走かよ。こんな時に面倒だな。」
そう、それは魔法使いが必ずクリアしなければいけない魔力の暴走。その結果は魔力量と属性によるが、ろくなことにはならないことに変わりはない。そしてロストは魔力量が多く、現在はその命さえも燃やして魔力を生み出している。そして属性は崩壊属性。数ある属性の中で万物の崩壊を象徴する属性なのだ。つまり何が起こるかと言うと、墓地の消滅だ。それに今頃気づいたのだろう。男はその場から逃げようとする。だが、暴走の方が早かった。
「クソッ!!ならガキを殺して暴走を止める!!」
男はまたロストに向けて走り出した。だが、男の前に光がでてきて男を一瞬だが拘束した。
「孫の邪魔はさせんよ。」
「なっ ︎生きていたのですか!?」
男は光から聞こえてきた声に始めて動揺した。暴走の時でさえ少し焦った程度なのにだ。
「フォッフォッフォッ、儂は死んだよ。こりゃただの魔力だ。それより急いどったんじゃないのかのぅ。」
「あっ!」
「フォッフォッフォッ、終わりじゃよ。」
その言葉を最後に光とともに墓地の中から消え去った。
これで男ーーーー魔人はロストと謎の光により、相打ちという形でこの世から全て消え去ったことになる。それはロストも同じこと。だが、何故かロストだけの頭は無事だった。それも数分したら頭が地面に沈むように消えていったが。
後に、この事件は神象と呼ばれ、数多の学者が調べたが何も分からなかったという。
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