十年待ってチートスキルを解放したら魔法少女になった件
第9話希望の色が絶望に染まる時 中編
俺達が隠れていた建物が二階建てという事もあり、スゥに何とかして結界を張ってもらい、二階に避難した。
「どうしますかテツヤ」
「今考えてる。とりあえずここにいつまでも隠れているわけにもいかないよ」
「そうですわね」
「ボクの結界も長続きしないと思うし、早めにしないと」
「うっ……」
どうすればいいか考えていると、攻撃を受けて気を失っていたクルルさんが目を覚ます。
「あれ、私……」
「よかった、目を覚ましたのですわね」
「シーラさん……そ、そうだ、旅団の皆は?」
意識を取り戻し、ようやく現状を把握したのかクルルさんは体を起こす。
「駄目ですわよ、体を動かしたら」
「で、でも皆が」
クルルさんは二階にある小窓から外を見る。しかし数秒もしないうちに、彼女はその場で脱力して座り込んでしまう。
「な、何ですかこれ。どうして王都がこんな事に」
彼女の顔が絶望に染まる。俺もここに上がってきた時に確認していたので、その状況は分かっていた。
王都を埋め尽くす魔物の数。
そこに残されているのは俺達五人のみ。
かつて希望の地とかしていたその場所は、もはや見る影もなかった。
「どこにこれだけの数の魔物が……」
もっともな疑問を口にするクルルさん。スゥが全部を守れていたわけではないにしても、潜んでいたとは思えないほどの数だった。考えられることは、どこかに隠し通路があってそこから侵入したか、もしくは……。
(いや、今はそんな事よりも)
ここからどうやって脱出するのかを考えるのかが、優先だ。
「そういえばピリス、さっき力が使えないとか言っていたけど、今はどうなの?」
「それが今も同じなのよ。まるで誰かに力を封印されたような感じがして、ろくに戦えない」
「じゃあ戦力になるのは」
「私とテツコだけですわね」
怪我をしているクルルさんと、まだ回復を仕切ってないスゥを戦力から外すと、そうなる。この数を相手に、三人を守りながら二人で戦えるのだろうか?
(幸いな事にここから王都の入口は近いほうだけど、脱出したところで追っ手をどうするか……)
考えに考えを巡らせ続け、そしてようやく俺は一つの策を思いつく。
「ごめんテッちゃん。ボク、もう限界」
それとほぼ同時に、スゥが俺に告げる。もう三十分近く一人で彼女は頑張ってくれた。おかげで作戦も思いついたし、彼女がいなければもっと危険な状態になっていたかもしれない。
「ありがとうスゥ、よくここまで頑張ってくれたね」
俺はスゥの頭を撫でてやり、先程の小窓の前に立つ。
「テツコ、何を」
「いい皆? これから王都を脱出するための作戦を説明するね」
◇
爆発音とともに、小窓ごと壁が破壊される。俺はそれを確認し、シーラに合図を出す。すると彼女は、空いた穴から空へ向けて弓を打ち、それを雨として魔物の軍勢にに降らせた。
「危険かもしれないけど、降りるよ!」
「了解!」
「危ないと思ったら、魔物をクッションにして着地。そしたら真っ直ぐに王都の入り口に向かって!」
俺の指示で、ピリス、クルルさん、スゥを抱えたシーラが順番に穴から降りていく。それと同時に、この場所を守っていた結界が破れ、魔物達が押し寄せてきた。
(相手は足がある魔物ばかり、なら)
俺は床一面を魔法で凍らす。それに足を取られた主にリザード系の魔物達は、先頭から転び、それによって敵の勢いが弱まる。
「よし」
俺はそれを確認したのち、二階から飛び降りる。魔物をクッションにして降りたので、足へのダメージを減らして無事に建物を脱出する。
入口の方に視線を向けると、先に出たピリス達が入口まで進んでいて、早く来いと俺を呼んでいる。先程のシーラの弓のおかげで、敵も減っており、俺も難なくそこから脱出できたかに思えた。
「なっ!」
しかし俺とシーラ達の間を遮るように、新たな結界が張られていた。
「何者かが王都に侵入したと聞いていましたが、まさかこんな小さい子だとは思いませんでしたね」
すると背後から声がする。俺はその声に思わずぞくっとしてしまった。
「う、嘘……」
ピリスがやってきた人物を見て驚きの声をもらす。それもそうだ。
「チーちゃん? どうして!」
続いて声をもらしたのはスゥ。俺は恐れながらも振り返ると、そこには本来いてはならない人物が立っていた。
「チルリア王女、どうしてあなたが」
「あら、私の事を知っているんですか? それなら早い話です」
そう言うと彼女は俺に向けて剣を突きつけてきた。
「私はあなたが知っている方では既にないのですから。だから心置きなく死ねますよね? そこの方々も」
喉元に突きつけられ、俺は声を出さない。声を出すどころか、そのあまりな状況にただただ絶句するしかなかった。
「さあ来てください。まずはあなただけでも、捕らえて」
「こんな所で終わらない」
「え?」
「私はこんな所で終わらない!」
俺は剣を突きつけられながらも、至近距離で魔法を放つ。それは自分をも巻き込む一撃。
「零距離で魔法を」
俺は絶句はしても諦めようとはしていなかった。チルリアを傷つけてしまうのは心が痛む。それでも俺は、
「ごめんなさい、ルチリア王女」
簡単に諦めないって、あの日からずっと心に決めているんだ。
「どうしますかテツヤ」
「今考えてる。とりあえずここにいつまでも隠れているわけにもいかないよ」
「そうですわね」
「ボクの結界も長続きしないと思うし、早めにしないと」
「うっ……」
どうすればいいか考えていると、攻撃を受けて気を失っていたクルルさんが目を覚ます。
「あれ、私……」
「よかった、目を覚ましたのですわね」
「シーラさん……そ、そうだ、旅団の皆は?」
意識を取り戻し、ようやく現状を把握したのかクルルさんは体を起こす。
「駄目ですわよ、体を動かしたら」
「で、でも皆が」
クルルさんは二階にある小窓から外を見る。しかし数秒もしないうちに、彼女はその場で脱力して座り込んでしまう。
「な、何ですかこれ。どうして王都がこんな事に」
彼女の顔が絶望に染まる。俺もここに上がってきた時に確認していたので、その状況は分かっていた。
王都を埋め尽くす魔物の数。
そこに残されているのは俺達五人のみ。
かつて希望の地とかしていたその場所は、もはや見る影もなかった。
「どこにこれだけの数の魔物が……」
もっともな疑問を口にするクルルさん。スゥが全部を守れていたわけではないにしても、潜んでいたとは思えないほどの数だった。考えられることは、どこかに隠し通路があってそこから侵入したか、もしくは……。
(いや、今はそんな事よりも)
ここからどうやって脱出するのかを考えるのかが、優先だ。
「そういえばピリス、さっき力が使えないとか言っていたけど、今はどうなの?」
「それが今も同じなのよ。まるで誰かに力を封印されたような感じがして、ろくに戦えない」
「じゃあ戦力になるのは」
「私とテツコだけですわね」
怪我をしているクルルさんと、まだ回復を仕切ってないスゥを戦力から外すと、そうなる。この数を相手に、三人を守りながら二人で戦えるのだろうか?
(幸いな事にここから王都の入口は近いほうだけど、脱出したところで追っ手をどうするか……)
考えに考えを巡らせ続け、そしてようやく俺は一つの策を思いつく。
「ごめんテッちゃん。ボク、もう限界」
それとほぼ同時に、スゥが俺に告げる。もう三十分近く一人で彼女は頑張ってくれた。おかげで作戦も思いついたし、彼女がいなければもっと危険な状態になっていたかもしれない。
「ありがとうスゥ、よくここまで頑張ってくれたね」
俺はスゥの頭を撫でてやり、先程の小窓の前に立つ。
「テツコ、何を」
「いい皆? これから王都を脱出するための作戦を説明するね」
◇
爆発音とともに、小窓ごと壁が破壊される。俺はそれを確認し、シーラに合図を出す。すると彼女は、空いた穴から空へ向けて弓を打ち、それを雨として魔物の軍勢にに降らせた。
「危険かもしれないけど、降りるよ!」
「了解!」
「危ないと思ったら、魔物をクッションにして着地。そしたら真っ直ぐに王都の入り口に向かって!」
俺の指示で、ピリス、クルルさん、スゥを抱えたシーラが順番に穴から降りていく。それと同時に、この場所を守っていた結界が破れ、魔物達が押し寄せてきた。
(相手は足がある魔物ばかり、なら)
俺は床一面を魔法で凍らす。それに足を取られた主にリザード系の魔物達は、先頭から転び、それによって敵の勢いが弱まる。
「よし」
俺はそれを確認したのち、二階から飛び降りる。魔物をクッションにして降りたので、足へのダメージを減らして無事に建物を脱出する。
入口の方に視線を向けると、先に出たピリス達が入口まで進んでいて、早く来いと俺を呼んでいる。先程のシーラの弓のおかげで、敵も減っており、俺も難なくそこから脱出できたかに思えた。
「なっ!」
しかし俺とシーラ達の間を遮るように、新たな結界が張られていた。
「何者かが王都に侵入したと聞いていましたが、まさかこんな小さい子だとは思いませんでしたね」
すると背後から声がする。俺はその声に思わずぞくっとしてしまった。
「う、嘘……」
ピリスがやってきた人物を見て驚きの声をもらす。それもそうだ。
「チーちゃん? どうして!」
続いて声をもらしたのはスゥ。俺は恐れながらも振り返ると、そこには本来いてはならない人物が立っていた。
「チルリア王女、どうしてあなたが」
「あら、私の事を知っているんですか? それなら早い話です」
そう言うと彼女は俺に向けて剣を突きつけてきた。
「私はあなたが知っている方では既にないのですから。だから心置きなく死ねますよね? そこの方々も」
喉元に突きつけられ、俺は声を出さない。声を出すどころか、そのあまりな状況にただただ絶句するしかなかった。
「さあ来てください。まずはあなただけでも、捕らえて」
「こんな所で終わらない」
「え?」
「私はこんな所で終わらない!」
俺は剣を突きつけられながらも、至近距離で魔法を放つ。それは自分をも巻き込む一撃。
「零距離で魔法を」
俺は絶句はしても諦めようとはしていなかった。チルリアを傷つけてしまうのは心が痛む。それでも俺は、
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