十年待ってチートスキルを解放したら魔法少女になった件
第8話希望の色が絶望に染まる時 前編
王都ヘルズヘイムには、象徴とも言うべき城が建っている。そこにはヘルズヘイムを治めている王女、チルリアが住んでいる。
彼女と俺達は縁あって、彼女と顔見知りで仲良く、特にチルリアは精霊族であるスゥの事を大変気に入っていた。
「あ、別にチーちゃんは死んだわけじゃないんだよ? ただ」
「ただ?」
「もうこの場所に誰かが戻って来ることはないんじゃないかな」
スゥの言葉は、今の王都の現状を表していた。ここに来た時にそうであったように、今この場所は王都の形がどこにもない。多分俺達以外に人はいないのだろう。
「だからってどうして、チルリアの跡継ぎに私が?」
「そんなの決まっているじゃん。魔王軍と戦うためだよ」
「魔王軍と戦うため?」
「ここにボク達で王国を建てるの。ボクがここを守り続けた理由も、それが一つなんだ」
「ここに王国を……」
確かにこれから魔王軍に立ち向かうなら、拠点は必要になってくる。けど、その拠点として王国を建設する必要があるのかと疑問にも思う。
「どうしてスゥはそこまでして、ここに王国を?」
「チーちゃんがここに帰ってくるためだよ。チーちゃん、この場所から本当は離れたくなかったんだけど、やっぱり王女の命が一番大事なんだろうね。少し前にここをボクに託して離れていったよ」
「チルリアがそんな事を」
「それにテッちゃんは、この場所を残したいと思っているんでしょ?」
「それは……」
スゥの言葉に俺は否定できない。ここは俺にとって一番思い出がある場所で、ここで沢山の事があった。その場所を守りたい気持ちがある。
「でもさ、わざわざ私が王女になる必要はないと思うんだけど」
「そう? 私は面白い話だと思うんだけど」
と横槍を入れてきたのはピリス。
「他人事だと思って、よく言えるよね」
「他人事ではないわよ。だって私はこの世界の女神なんだから、希望を作りたい気持ちはあるから」
「希望、ねぇ」
この場所が誰かの希望の拠点になるのなら、それはいい事なのか? 
「大変ですテツコさん!」
俺が言葉選びに迷っていると、俺達とは別で王都の散策をしていたクルルが慌てた様子で俺達の元へやって来た。
「ど、どうしたの? そんなに慌てて」
「ヘルズヘイム城が」
「城が?」
「魔物達に占拠されています!」
「え? スゥが守っていたんじゃないの?」
「あー」
俺がスゥを見ると彼女はタラタラと冷や汗を流していた。
「ま、ま、守ってたんだよ? けどね、魔物達も頭を使うようになって、ぼ、ボクの結界をくぐり抜けて来ちゃったんだ」
「つまり?」
「ボク守りきれなかったんだ、ヘルズヘイム」
「建国以前の問題じゃん!」
チルリア、ここから逃げててよかったよ……。
◇
建国云々以前に城を奪還する事の方が最優先だと知った俺達は、旅団の人達も含めて、魔王軍に見つかる前に一度安全な場所へ避難。
「いやー、大変な事になっちゃったね」
「誰のせいよ!」
これにはピリスもお怒り。まあ一人で守ってきたんだから仕方ない面もあるし、そこは許してあげようと思っていた。
「じゃあ入口に張ってあった結界は、意味なかったの?」
「一応意味はあったんだけど、特に最近はお腹が減っちゃって力が弱っていたんだ」
「食料とかはなかったの?」
「ボク食いしん坊だから、沢山食べちゃうんだよぉ」
「つまり食料不足で結界が弱まって」
「魔物の侵入を許したわけ?」
「あ、あと寝ている間は結界を張れないから、それがあるかも」
「じゃあなんで一人で残ったのよ……」
それを指示した本人が言うセリフかとは思いながらも、とりあえず奪還しなければ何も始まらない。魔王軍に俺達の名を轟かせるためにも、慎重に作戦を練って、そして……。
「た、大変だ。魔王軍が俺達の存在に気づいたぞ!」
建物の外で警備していた男性が、俺の考えを裂くように慌てて中へ入ってくる。だがそれとほぼ同時に、彼は背後から槍を持ったリザードに貫かれた。
「キュウマ!」
それを見たクルルさんが彼に寄っていこうとする。
「クルルさん、駄目ですわ!」
シーラが止めようとするが間に合わず、彼を貫いたリザードの後ろにいたウィッチィの魔法の直撃を受ける。
「きゃああ!」
吹き飛ばされるクルルさん。それを何とかシーラが受け止める。
「大丈夫、息はありますわ」
「シーラ、クルルさんを安全なところに」
「はい!」
俺は入口から押し寄せてきた魔物達に向けて魔法を放ち、数を減らす。しかしその数は明らかにおかしかった。スゥが見逃していたとしても、この数はどう見ても……。
「ど、どうする? ボクはまだ力を使えないよ」
「分かってる。ここは一旦」
退くと言おうとした瞬間、俺の体に強烈な痛みが走るのを感じた。だがそれにうずくまる暇もなく、体が吹き飛ばされる。
魔物の軍勢に紛れて、先ほどのウィッチィとは別に、魔法使いがいたのだ。しかも人間の。
(何で人間が……)
何とか受け身を取り、ダメージを最小限に抑えたものの、不慣れな体にはこのダメージはかなり堪える。
「テツヤ!」
クルルさんを安全なところに移動させたシーラが俺の援護に回る。ピリスはというと……。
「ちょ、ちょっとどうして私の魔法が使えないの?! もうこうなったら、物理で」
「ピーちゃん、それはいくらなんでも無謀だって!」
なぜか近くにあった棒切れで戦おうとしていたので、それをスゥに止められていた。
(どうする、どうすればいい……)
あの馬鹿女神を含めて、どうしてやればいいんだ。
彼女と俺達は縁あって、彼女と顔見知りで仲良く、特にチルリアは精霊族であるスゥの事を大変気に入っていた。
「あ、別にチーちゃんは死んだわけじゃないんだよ? ただ」
「ただ?」
「もうこの場所に誰かが戻って来ることはないんじゃないかな」
スゥの言葉は、今の王都の現状を表していた。ここに来た時にそうであったように、今この場所は王都の形がどこにもない。多分俺達以外に人はいないのだろう。
「だからってどうして、チルリアの跡継ぎに私が?」
「そんなの決まっているじゃん。魔王軍と戦うためだよ」
「魔王軍と戦うため?」
「ここにボク達で王国を建てるの。ボクがここを守り続けた理由も、それが一つなんだ」
「ここに王国を……」
確かにこれから魔王軍に立ち向かうなら、拠点は必要になってくる。けど、その拠点として王国を建設する必要があるのかと疑問にも思う。
「どうしてスゥはそこまでして、ここに王国を?」
「チーちゃんがここに帰ってくるためだよ。チーちゃん、この場所から本当は離れたくなかったんだけど、やっぱり王女の命が一番大事なんだろうね。少し前にここをボクに託して離れていったよ」
「チルリアがそんな事を」
「それにテッちゃんは、この場所を残したいと思っているんでしょ?」
「それは……」
スゥの言葉に俺は否定できない。ここは俺にとって一番思い出がある場所で、ここで沢山の事があった。その場所を守りたい気持ちがある。
「でもさ、わざわざ私が王女になる必要はないと思うんだけど」
「そう? 私は面白い話だと思うんだけど」
と横槍を入れてきたのはピリス。
「他人事だと思って、よく言えるよね」
「他人事ではないわよ。だって私はこの世界の女神なんだから、希望を作りたい気持ちはあるから」
「希望、ねぇ」
この場所が誰かの希望の拠点になるのなら、それはいい事なのか? 
「大変ですテツコさん!」
俺が言葉選びに迷っていると、俺達とは別で王都の散策をしていたクルルが慌てた様子で俺達の元へやって来た。
「ど、どうしたの? そんなに慌てて」
「ヘルズヘイム城が」
「城が?」
「魔物達に占拠されています!」
「え? スゥが守っていたんじゃないの?」
「あー」
俺がスゥを見ると彼女はタラタラと冷や汗を流していた。
「ま、ま、守ってたんだよ? けどね、魔物達も頭を使うようになって、ぼ、ボクの結界をくぐり抜けて来ちゃったんだ」
「つまり?」
「ボク守りきれなかったんだ、ヘルズヘイム」
「建国以前の問題じゃん!」
チルリア、ここから逃げててよかったよ……。
◇
建国云々以前に城を奪還する事の方が最優先だと知った俺達は、旅団の人達も含めて、魔王軍に見つかる前に一度安全な場所へ避難。
「いやー、大変な事になっちゃったね」
「誰のせいよ!」
これにはピリスもお怒り。まあ一人で守ってきたんだから仕方ない面もあるし、そこは許してあげようと思っていた。
「じゃあ入口に張ってあった結界は、意味なかったの?」
「一応意味はあったんだけど、特に最近はお腹が減っちゃって力が弱っていたんだ」
「食料とかはなかったの?」
「ボク食いしん坊だから、沢山食べちゃうんだよぉ」
「つまり食料不足で結界が弱まって」
「魔物の侵入を許したわけ?」
「あ、あと寝ている間は結界を張れないから、それがあるかも」
「じゃあなんで一人で残ったのよ……」
それを指示した本人が言うセリフかとは思いながらも、とりあえず奪還しなければ何も始まらない。魔王軍に俺達の名を轟かせるためにも、慎重に作戦を練って、そして……。
「た、大変だ。魔王軍が俺達の存在に気づいたぞ!」
建物の外で警備していた男性が、俺の考えを裂くように慌てて中へ入ってくる。だがそれとほぼ同時に、彼は背後から槍を持ったリザードに貫かれた。
「キュウマ!」
それを見たクルルさんが彼に寄っていこうとする。
「クルルさん、駄目ですわ!」
シーラが止めようとするが間に合わず、彼を貫いたリザードの後ろにいたウィッチィの魔法の直撃を受ける。
「きゃああ!」
吹き飛ばされるクルルさん。それを何とかシーラが受け止める。
「大丈夫、息はありますわ」
「シーラ、クルルさんを安全なところに」
「はい!」
俺は入口から押し寄せてきた魔物達に向けて魔法を放ち、数を減らす。しかしその数は明らかにおかしかった。スゥが見逃していたとしても、この数はどう見ても……。
「ど、どうする? ボクはまだ力を使えないよ」
「分かってる。ここは一旦」
退くと言おうとした瞬間、俺の体に強烈な痛みが走るのを感じた。だがそれにうずくまる暇もなく、体が吹き飛ばされる。
魔物の軍勢に紛れて、先ほどのウィッチィとは別に、魔法使いがいたのだ。しかも人間の。
(何で人間が……)
何とか受け身を取り、ダメージを最小限に抑えたものの、不慣れな体にはこのダメージはかなり堪える。
「テツヤ!」
クルルさんを安全なところに移動させたシーラが俺の援護に回る。ピリスはというと……。
「ちょ、ちょっとどうして私の魔法が使えないの?! もうこうなったら、物理で」
「ピーちゃん、それはいくらなんでも無謀だって!」
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