砂鯨が月に昇る夜に

小葉 紀佐人

ハッピーエンディング? 29-3



「ここにいたのか…ラウル」

真後ろから聞こえる声にラウルは瞬時に振り返り、剣を抜いて相手の首にあてがう

「………………。」

目の前にいたのは

皇帝だった

ラウルは剣を構えたまま身体が固まる

「…なんだ見てたのか。つまらなかっただろ?あんな国。やつらがもしここまで来れたとしても、今のお前ほど私に近寄り剣を突きつける事など到底出来はしない」

固まったまま、その言葉を聞く事しか出来ないラウルの耳元に近寄る皇帝

「…殺すなら…今しか無いぞ?」

本当か?

本当に今、この剣を突き立てれば

この悪魔を殺せるのか?

ラウルは考えをめぐらせればめぐらすほど、全身が震え、剣がカチャカチャと音を立てる

その震えにあらがうように

ラウルは剣を両手で持ち

皇帝に刃を突きつけ、睨みつけた

「…良い目を…するようになったじゃないか」

いつの間にか禍々しく光る目に変わっていたラウルに、皇帝は優しく微笑んだ

凄まじい殺気をラウルに放ちながら

剣を落とし

地面にへたり込むラウル

「父として、嬉しく思うぞ?…ラウル」

皇帝は床に力無く座るラウルの肩に片手を置いてそう言うと、踵を返して部屋から出て行く

その後ろ姿を

ラウルは見ている事しか出来なかった



…二週間後

砂の街バルウでは祭りが開かれていた

もちろん、防壁も直りいつものバルウの生活に戻ってはいるが、いつもと違うのはバルウの街のすぐ隣に、空中移動都市シャングリラが停泊しているとゆうことだ

そして広場にはバルウの住民とシャングリラの住民が、酒を交わし、豪華な料理を食べ、歌って踊って宴を満喫している

そして、新しくわかった驚きの事実

カザの父親ナザルとティトの父親でありシャングリラの提督のゲイルが、知り合いだった事だ

前にナザルが出会った空の民、それがゲイルだったとゆう事らしい

2人は懐かしい話に花を咲かせながら、いつの間にか酒豪対決でバトルが始まり、ひとりでもうるさいのに似た者同士が揃って倍以上うるさい

そして

恒例の

なんだかわからないが必ず行なう

バルウ、シャングリラ合同のサンドシップ最速を決めるレースが始まる

シャングリラでの死闘で大破したジャリハートは何とか直ったが、今回リンクシステムは付いていない

そのジャリハートに跨り、ゴーグルを着けるカザ

その隣にゆっくりと並ぶ真っ白に塗装されたサンドシップ

「やっほー♪今日はエンストしないの?」

と隣のカザを挑発するティト

この祭りのレースに出るために、天才科学者ルーペが1週間で作り上げたティトのサンドシップ

「お前こそデモデモに気をつけろよ?あの時みたいに泣きついたって置いていくからな!」

「はぁ?上等じゃないっ!!ぶち抜いてやるわっ!!」

と腕まくりをし、拳を握ってカザに闘志を燃やすティト

「ティトー!!頑張れぇ!!」

ティトのサンドシップを作ったルーペが声援を送り、その周りにはアマンダ、レンチ、ハゲのピクル、エアリードの飛行部隊隊長アッシュ、シャングリラ参謀のイオとオペレーター達も声援を送る

「ティトちゃんファイトー!!そんな女ったらしたたんじまえっ!!」

これ見よがしに叫ぶシグとその隣で兄の腕を心配する妹のククル

「このスケコマシィィィ!!」

「スケコマシィィィ!!」

アズーとバサロがよく意味のわからない恐らく暴言をカザに向かって叫び散らかす

それに便乗して近くのガラムとゾイも「スケコマシィィィ!!」と叫ぶ

「お前ら後で覚えとけよなっ!!」

後ろを振り返りシグ達に叫ぶカザ

『えぇ〜お待たせ致しましたっ!!お待ちかねの「スケコマシィィィ」』

司会進行を務める付き人の隣からマイク越しに叫ぶ砂バァ

「くっそマジあのババァ」と小声で悪態を吐くカザ

『はいっ!砂ババ様は黙ってて下さいっ!!さぁー始まるぞテメェら!準備は良いかっ!?』

観客から威勢のいい返事が響く

『今回の優勝者に贈られる賞品はっ!!……いつものドドチョ…ではありませんっ!!』

その言葉に会場がざわつく

『今回の優勝者の賞品は…』

皆、息を飲んで次の言葉を待つ

『シャングリラNo.1美少女!!ティトちゃんからのキスだぁぁぁ!!』

観客からの「オォォォ!!」とゆう驚きの声と、レースの参加者の男たちからの「おっしゃぁぁああ!!」とゆう喜びの声が響き渡る

「え!?ちょっと待って聞いて無いんだけど!?マジ無理マジ無理っ!!やだぁあ!!」

と本気で嫌がるティトに声をかけるカザ

「お前のキスなんかいらねぇけど勝つのは俺だ…ブス」

「…言ったわねぇぇええ!!」

とサンドシップから立ち上がり今にも飛びかかろうとするティトを他の選手たちが抑えるが

「離せ…この、今ここでぶん殴ってやるんだからっ!!」

と暴れるティト

『いいですねぇ!!盛り上がってますねー!!それではそろそろスタートしますよ!?お前らティトちゃんのキスがほしいかぁぁぁ!?』

観客を煽る付き人

それに応える歓声

もう始まると聞いて殴るのを諦めたティトはゴーグルをはめてサンドシップのエンジンをかけた

他の選手たちも次々にエンジンをかけ、ジャイロシステムの高周波が響く

『さーて栄光を勝ち取るのは誰か!?今だかつて無かった前代未聞のレースが始まるっ!!』

歓声が一段と大きくなり

カザがティトの方を見る

それに気づいたティトもカザを見る

お互い不敵に笑い

前を見る

『レディ〜……ゴォッ!!』


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