砂鯨が月に昇る夜に

小葉 紀佐人

本当の敵 25-2


闇から抜け出たカザ達は、砂鯨の口から吐き出され、空高く宙に投げ出される

ジャリハートの近くにいたシグとゾイを見つけたカザは、ジャリハートの座席に立ち上がるとシグとゾイの元へ跳躍する

「シグっ!!」

ゾイを抱きかかえてシグの手を取ると、シグをジャリハートの方へ投げた

シグはティトだけが乗ったジャリハートに上手く跨ると、エンジンをかけてアクセルをふかし、足元のギアを操作して浮力を全開にする

隣ではタンクも同じように吹き飛ばされ、ゆっくりと回転する車体からアズーを抱えたバサロとガラムが跳躍した

タンクは鉄の壁に激突して砂漠へ落ちていったが、カザ達全員、無事に壁の上に着地すると

ゆっくりと立ち上がり

目の前の大黒海を見据える

さっきカザ達を飲み込んだ砂鯨と、助けてくれた砂鯨は無事なようで、仲間の集まっている方へと向かう後ろ姿が見えてホッとしたが、ここまで連れてきた砂鯨の群れはゾイを忘れ、目の前の大黒海を警戒しながら離れた場所を回遊していた

「さーて、どうしますかね」

ゆっくりとした動きでこちらに振り返り始める大黒海

「…みんな…アイツがまだ見えてるか?」

カザの目には、砂鯨の中で見た赤く光る『何か』とそれにたかられている青白く光る砂鯨が、何故かは分からないが、まだはっきりと見えていた

「あぁ、見えてる。アイツを倒さなきゃ終わらねーんだろ?」

シグは背中からバズーカを取り出して右の肩にあてがう

「ですがこの巨大な腐者の塊がそれを許さないでしょう。…ティト、シャングリラのルナバーストでしたっけ?その機関室まで僕を連れて行ってもらえませんか?」

「え?いいけど…さっき弾かれちゃてたよ?」

「僕に考えがあります」

そう言って「ちょっとシグ邪魔」とか言いながらジャリハートのリンクシステムを外すアズー

ゴンっ!

ゴンっ!!

いつの間にか崩壊した街の方へ降りていたバサロは、そこら辺にある瓦礫や岩を壁の上に放って乗せていく

カザは近くにいたゾイに離れるように言うと、背中から狩猟銃を取り出しガシャンと狩猟棍へと変えた

「アズーとティトはルナバースト。俺たちはここで時間を稼ぐ」

カザの言葉に全員が頷き、アズーとティトは壁から飛び降りてバサロにキャッチしてもらう

ガラムの側まで来ていたゾイはガラムを見上げる

「ゾイはどうしたら良いギャ?」

ガラムは背中からブーメランを引き抜く

「2人についていくガ、何かあったらお前が2人を守るガ」

そう言われたゾイは、不安そうだった顔を引き締め、ズレたままのトトの頭蓋骨を正しい位置に戻すと勢い良く壁から飛び降りていった

シグはここに来るまでにアズーが改造してくれたバズーカを2つに折ると、腰袋から取り出したリンクボムのピンを抜いてバズーカに入れ、元の形に戻し銃口を上に向けたまま縦に振ってコッキングとリンクボムの起動を同時に行(おこな)う

バズーカをジャリハートのハンドルの真ん中に乗せて右手をトリガーにかけた

完全にこちらに振り返った大黒海の低い唸り声が大気を揺らす


「おいおいアイツらどうする気だ!?」

大きな窓に張り付いて様子を見ていたゲイル

その司令室に艦内通信が響く

『エレベーター降ろして!!』

別のモニターにエレベーター前で待つティトと見知らぬ少年とゲグ族の子供が映る

「ティト!?どうなってる!?」

『いいから下ろして!!それと、ルナバーストの充填を始めるようにルーペに伝えて!!』

「わ、わかった!」

そうゲイルが答えると、オペレーターはエレベーターを降ろし、別のオペレーターはルーペに連絡を取った

モニターに映るティトはゆっくりと降りてくるエレベーターに焦ったさを感じながらも、壁の方を気にしてはエレベーターを見上げていた

「…ティト」

ゲイルはティトの元気な姿を見て少し涙ぐむが、それを手で拭き取って司令室の出口へと向かう

「提督っ!?どうする気ですか!?」

司令室の出口で立ち止まったゲイル

「…娘が戦ってる…なら俺がやる事は、1つだけだ」

そう言ってゲイルは司令室を後にした





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