砂鯨が月に昇る夜に

小葉 紀佐人

ルナバースト 23-1


大黒海から放たれた光の玉とイージスの盾はバリバリと音と閃光を放ちながらせめぎ合う

貫かれる

そう思った時、電磁フィールドは最大値まで出力が上がり光の玉は滑るように弾かれ、シャングリラの後方の山の一部を削り取って遥か遠くで爆発した

「…危なかったです。提督の指示が無ければ我々死んでいましたよ」

あまり何事にも動じることの無いイオが、汗を拭きながら安堵した

「…主砲カウント!!これで全部終らせるぞっ!!」

ゲイルの声にオペレーターは慌ててもう100パーセントになる充填率のカウントを始めた

ルーペも自分とピクルの目の前に表示されたモニターを見る

動かない丸い円に十字の線が切ってあり、そこには小さなメモリが刻まれ、迫って来る大黒海の動きに合わせて横に表示された数字が減っていく

超高密度月光レーザー

『ルナバースト』

一度放てばそれは地平線を超える程の威力だが、地球の磁場の影響で真っ直ぐには飛んでくれない為、正確に当てる最長の距離が2キロ。ルーペが何度も何度も実験と計算を繰り返して出した答えだ

ルーペはモニターを見ながら、思わずピクルの肩に置いていた手に力が入ってしまうが、極度の緊張と狙いを定めた集中でピクルは痛みに気づかない

主砲の一部は高速で回転し、バチバチと放電する光と砲口にキラキラと入り込む光で輝きだす

「5…4…」

司令室の全員が息を飲む

ゲイルも机に前かがみになってモニターを睨む

「3…2…1」

「ルナバースト!!発射っ!!」

主砲から放たれた青白く輝く太い光のレーザー

それは大黒海を貫き

地平線の彼方まで放たれた



「前から何か来ますっ!!」

闇の中、4つあるライトを全開にして砂漠を走るタンク

いつの間にか目を覚ましていたアズーは、凄まじいスピードで向かって来る光を指差した

何か避けるとか隠れるなんてことを考える間も無く20メートル頭上を光の柱が突き抜ける

振り返るとソレは少しずつ高度を上げて夜空へ突き抜けていく

「な、何だよこれっ!?」

慌てふためくシグ

「知らんガ!!」

ガラムは無意識に腰が引けた様な格好で頭上の光の柱を見上げる

「しゃ、シャングリラの兵器でしょうか?」

上を見つめ、放たれた方向を見たアズーが冷静に考える

「どう見ても俺たちが向かってる方からだな…だったら俺たちいらねぇんじゃねぇか!?」

その言葉に皆が沈黙していた時だった

タンクの真横に1台のサンドシップが現れた

「カザっ!!」

身を乗り出して手を上げるシグ

ヘッドライトの点いたジャリハートはタンクに近づき、カザはその上げた手を軽く叩いた

「みんなごめん!!ありがとう!!」

「気にすんなっ!!ついでだついで!!」

「そうですよ!!置いてけぼりは許しませんからっ!!」

「カザ!!無事で良かった!!」

シグ、アズー、バサロは少し照れ臭そうにカザの無事を喜んだ

「ゾイは!?」

そうカザが言うと、シグの後ろからトトの頭蓋骨を被ったモジャモジャの頭がひょっこり現れ

「いるだギャ!!」

タンクの上部から上半身を出してカザを見るガラム

「ゾイをありがとうガっ!!」

そう言われたが、後ろを振り返りまだ追って来ている砂鯨の群れを見る

何故か分からないが薄っすらと光を放つ砂鯨たちだったが、カザは気にする事も無くガラムに振り返る

「2人には悪いけど、このまま大黒海に行くつもりなんだ!!どうなるか分からないけど!それでも良い!?」

カザの言葉にガラムとゾイは顔を見合わせて、お互いに少し口が綻ぶ

「構わないガ!!」

「なるようになるギャ!!」

そう言って笑う2人につられて笑顔になるカザ

「ほんとに、ほんとにごめんねっ!!私のせいで!!」

カザの後ろにしがみつくティトは申し訳無さそうにみんなに謝る

「だいじょぶ大丈夫!!」

「ティトは悪くないですよ!!」

「全部カザが悪いから!!」

突然のバサロの裏切り

「何で!?」

信じられないといった顔でバサロを見るカザ

「あー、そうだな!カザが悪いよカザが!!」

「ですね!こんな可愛い子連れて来て!!このスケコマシ!!」

「確かに…お前に会わなきゃこんな事になってなかったガ!!」

「そうだギャ!!全部カザが悪いギャ!!」

なんだこれ

散々好き勝手言われたカザは頭に来てタンクの横にジャリハートで体当たりする

「ちょ、馬鹿っ!!やめろ!!」

「冗談ですよ!!こっちは走るので精一杯なんですから!!やめてください!!」

「みっともないギャ!!」

「ちょっと!!やめなさいよ!!」

ティトに怒られ体当たりを止めるカザ

「みんな聞いて!!さっきの光見たでしょ!?アレはシャングリラの主砲なの!アレで大黒海が倒せてれば良いんだけど!」

「さっき東に向かう腐者の大群を見たんだ!!だからバルウの時みたいにはいかないかもしれない!!」

その言葉にみんな押し黙って考える

「…良いじゃねぇか!!俺たちもバルウの時とは違う!!」

「とにかくシャングリラの無事を確認しましょう!!」

「そうだな…分かった!!」

そう返事をしたカザは、光の柱が放たれた方角を見据えて、タンクと並走する

一抹の不安を抱えながら



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