砂鯨が月に昇る夜に

小葉 紀佐人

古代兵器 22-3


触手の先端はまたすぐに白い光の球体を始める

「電磁フィールド!!『盾』を出せ!!」

オペレーターは慌てて機器を操作すると

残りの銀色に輝く四角い物体の2つが真っ二つに割れ、中から現れたジャイロシステムに似た機械が高速回転しバチバチと放電する

するとその放電が隣り合ったもう一つのもと繋がり、シャングリラを包む薄い光の膜を作り出した

そこへ触手からのレーザーが放たれ膜に直撃すると、レーザーは四散していく

「あっぶねぇ、まだ俺何もしてねぇのに死ぬとこだったぜ」

「…ほんとですよ」

電磁フィールドに守られホッと胸を撫で下ろしたピクルとルーペ

太陽の光が消え、シャングリラの至る所から放たれたサーチライトは、ゆっくりとしかし確実に進んでくる大黒海を照らす

「…7年前とは、こっちもあっちも違うってことか…」

そう呟いたゲイルを心配そうに見つめるアマンダ

「提督…」

イオが次の指示を仰ぎ、ゲイルは考える

「距離は?」

「3キロを切りました」

「迫撃砲はまだ無理か…インパルスに繋いでくれ」

ゲイルは通信オペレーターにそう指示するとゲイルの目の前に小さな画面が現れ1人の男が映し出される

「な、何でしょう提督!?」

金髪の髪をツンツンに逆立たせた男は慌ててゲイルに敬礼する

「アッシュ、悪いが出番だ」

「りょ、了解しましたっ!!」

鋭い形をした青いエアリードに乗った男は通信が切れると慌てて立ち上がり、同じようにスタンバイしていた仲間たちに声をかける

「聞いた通りだ!!高速飛行部隊インパルス!!飛ぶ鳥を落とすぞっ!!」

「アッシュさん!!大黒海は飛んでねーっす!!」

「そうゆう勢いだっつーこった!!行くぞ!!」

髪型を気にしながらフルフェイスのヘルメットを被ったアッシュは青いエアリードに跨り人差し指を立てて頭上でクルクル回す

その合図に整備士の男が格納庫の上部の扉を開く操作をし、ゆっくりと開いていく

シャングリラの後方に位置する巨大な船の上部が開き、中から青い機体が次々に飛び立っていく

「スリーマンセルで行く!間隔を詰めて低く飛べ!!」

アッシュが無線で指示すると飛び立った青い機体は3機で1組になり、それが5つ、砂漠の地面すれすれをサンドシップよりも早いスピードで大黒海へと向かう

「砂魚雷準備!!…投下っ!!」

青いエアリードの下部が開き、そこから2つのスクリューの付いた魚雷が投下される

砂魚雷を放った青いエアリードは大黒海を避けるように旋回し、15発の魚雷は真っ直ぐに大黒海へと突っ込む

大黒海の腹部に直撃した魚雷は次々に爆発し、その痛みに悶える巨体

「おしっ、効いてるぞ!…次はミサイルで行く!!」

アッシュは機体を旋回させながら翼の下から左右で2基づつミサイルを準備した時

暗闇を切り裂く光が輝き

アッシュの機体を襲う

「うおっ!!」

慌てて高度を下げてスリーマンセルを解くと、追いかけてくるレーザーを華麗にかわしていく

「俺を…ミサイルと一緒にするんじゃねぇ!!俺は最速で最高のインパルスだ!!惚れた女が帰って来るまで死ぬ訳にはいかねぇんだよっ!!」

アッシュは触手からのレーザーを避けながら機体を大黒海へと向けると、翼のミサイル4基を全て放った

大黒海は撃ち落とす間も無くその直撃を受けて怯み、360度全ての方向から迫るミサイルに苦悶の声を上げた

「っしゃぁぁぁ!!」

全機体から、シャングリラから上がる歓声

司令室からモニター越しに見ていたゲイルも思わず拳を上げた


「いいぞアッシュ!!流石俺の弟子だっ!!…俺も行ってこようかな」

「駄目よっ!!あんたはもう卒業したの!あんた居なくなったら誰が指揮取るのよ!?」

アマンダはゲイルが8割方本気で言っているのを知っているので凄い剣幕で怒る

「…イオが」とゲイルが言いかけた時だった

砂煙と爆煙で見えなくなった大黒海から、目で捉えきれない程の速度の何かが空を切り裂いた

その攻撃にインパルスの5機が一瞬で打ち落とされ、空に爆炎が浮かぶ

「くっ!!」

アッシュは何とか避けながら、しかし鞭のように音速で襲って来るソレを見ながら避ける事も出来る訳も無く、機体を闇雲に振り距離を取って逃れる

大黒海を包む煙が晴れ、今まで受けた攻撃の跡は瞬く間に修復され、太い触手とは別の細い触手がうねうねと纏まって太い触手へと戻っていく

少し距離を取って死角からミサイルで攻撃するインパルスだったが、太い触手が一瞬で解けて細い触手となって打ち落とす

上手く着弾してもすぐに再生する大黒海にインパルスは苦戦し始めた

ほとんど変わらないスピードで確実に近づいて来る大黒海に焦りが見え始めたゲイル

「くそっ!!古代兵器でも駄目か…ルーペ!!主砲はどうだ!?」

「あと少しで2キロ、ここまで来たら私たちの勝ちです」

自信満々に言い放ったルーペ

「…頼むぞ」

一抹の不安を抱えながらも、ゲイルは最後の攻撃に賭けるしか無いと判断した

「インパルスを下げろ!!主砲準備!!」

大黒海の周りで飛び交っていたインパルスは踵を返すようにシャングリラへと戻る

同時にシャングリラの正面に接続された真っ赤な船の船首が、まるで生き物の口のように裂け、中から巨大な金属の筒が現れた

それは所々ゆっくりと回転し、パシパシッと小さな光が点滅する

「提督、もうすぐ2キロです」

現状説明をするイオ

「主砲の状況!!」

ゲイルがオペレーターに叫ぶ

「エネルギー充填率95パーセント!熱冷却システム順調に作動中です!」

「ピクル!!」

「照準バッチリいつでもどうぞ!!」

「充填カウント!!5秒前から!」

「はいっ!!」

ゲイルの言う通りにエネルギー充填率のモニターを見つめながらオペレーターはカウントを始める

「ご」

「提督!!様子が変です!!」

イオが望遠レンズを赤外線に切り替えて見ていて、カウントを遮るように叫んだ

「大黒海の熱量が上がっています」

映像を見ると確かに頭部のあたりがどんどん赤くなっていくのが分かる

そして

大黒海は大きく口を開き

禍々しいエネルギーが口の中に集まり

真っ白な光の玉を作り出す

それは触手の先端に現れるレーザーのそれとはまるで違うものだった

「電磁フィールドの出力を上げろ!!」

ゲイルの叫びにオペレーターはすぐに機器を操作して電磁フィールドの出力メーターを上げた

シャングリラを包む薄い膜の光が強まり始めた時

大黒海は光の玉を放った

高速で打ち出されたそれは

帰って来るインパルスの間を通り

電磁フィールドに直撃した


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