砂鯨が月に昇る夜に

小葉 紀佐人

心の在り方 18-3


突然襲ってきた砲弾を避けながらスピードを上げるジャリハート

「何だあいつは!?」

「帝国の列車だギャ!前にデモデモが襲われてたギャ!!」

「…じゃあ砂鯨をやったのも」

カザは湧き上がる怒りを抑えながらジャリハートを左右に振って砲撃をかわす

後ろの砂鯨たちはかなり距離を離したので砲撃は当たらないが、雨のように撃ち込まれる砲撃で砂が舞い上がり視界を遮る

こんなのに構ってられないと、アズーの付けてくれたリンクシステムに手をかけようとした時だった

「誰かいるギャ!」

ゾイがそう叫ぶが避けるのに必死でそれどころではない

「列車の上に誰かいるギャ!!」

そう言われ、列車を見る

「…ラウル!ティト!?」

何であんな所に

かなりのスピードで走る列車の上に連れてこられたティトは暴れないように両手を縛られていた

「ちょっと!!何でこんなとこ」

と言って顔を上げると、砲撃を避けながら並走するジャリハートとカザが見えた

「カザっ!?何で…。やめなさいよっ!!何でカザを撃つ必要があるのよ!!」

ティトは両手を縛られながらもラウルに詰め寄り止めるように言うが、ラウルはそれを払いのけ、腰につけた細く反りの無い真っ直ぐな剣を引き抜くと、ティトを引き寄せて首にあてがった

その様子に目を奪われた一瞬だった

ジャリハートのすぐ手前に撃ち込まれた砲撃でジャリハートは横転し、砂の上に投げ出されるカザとゾイ

ラウルは無線を使って強襲走行列車を止めるよう指示すると、それに応じて列車は止まった

倒れたカザは、一瞬何が起きたのか分からなかったが、砂の上に転がるジャリハートとゾイを見て横転してしまった事に気付きゾイに駆け寄る

抱き起こすと、ゾイはケホケホと咳き込んではいたが無事なようで安心したが、振り返るともうすぐそこまで砂鯨の群が迫って来ていた

そして停車した列車の上ではラウルがティトに剣を向けている

どうする

時間がない

どうする

どうしたらいい

「カザっ!!カザ逃げて!!私はいいから、早く!!逃げてっ!!」

ティトも迫る砂鯨に気づいてカザに叫ぶが、カザは選択する事が出来ない

叫ぶティトの声

全てがゆっくりと時間が進むように感じ

思考は停止し

頭の中が真っ白になる







ガッチャン


ゾイの

腰のあたりに

見たことのない金属の輪っかにガッチリと固定され

それに驚く間も無く

カザの腕の中から

ゾイが消えた

カザはゾイが消えた方向を見る

ゾイは空高く舞い上がり

体からは紐が伸びていた

そして落ちていくゾイを

見慣れた装甲サンドバギーに乗ったバサロがキャッチした

「…何で」

よく見るとそのサンドバギーには紐を手繰るアズーと砂鯨の群れに飲み込まれた筈のゲグ族のガラム

そして

「…シグ」

カザは溢れ出る涙が抑えきれず、しかし運転席に座って右手を上げたシグが確かにそこにいた

そして走り去っていく装甲サンドバギー

それを追っていく砂鯨群れはカザの横を通り過ぎて行った

言葉は無くとも

伝わった

カザは涙を拭いて立ち上がると

ジャリハートに跨り

ラウルとティトに向かって

走り出した

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