砂鯨が月に昇る夜に

小葉 紀佐人

あらがう者 17-3



砂の街バルウを出て東へとひた走るサンドシップのジャリハート

何度かアズーの付けてくれたリンクシステムを作動させようかと迷ったが、途中で動かなくなったらまずいと今出せる最速のスピードで砂丘の谷間を走っていた

時折腕につけている方位磁針で方角を確認する

が、針がおかしな方向を向いているのに気づく

「あれ?」

と思った瞬間、砂丘の中からまるでカザを待っていたかのように、腐者が次々に現れてそれを慌てて避けるカザ

「なんだよこいつら!!」

腕を伸ばしてカザの行く手を阻もうとするが、砂丘の傾斜をうまく使って避ける

とめどなく現れる腐者に困惑しながらも何とか避けているが、数が尋常じゃない

屈んだり、時には車体をジャンプさせながら避けるが、まとまって現れた腐者が行く手を阻み

カザは

もう

捕まる

と思った瞬間

砂丘の上から

6輪のサンドバギーが飛び出し

前方の腐者たちをベシャっと潰して走って行く

カザは腐者もいなくなったので慌てて追いかけ、並走して御礼を言おうとした時

真後ろの砂丘が吹き飛び

巨大な砂鯨の群れが、カザとサンドバギーを追いかけてきた

カザはスピードを上げてサンドバギーの運転席を見る

サンドバギーの運転手はそれに気づいてカザを見る

「「あっ!!!!」」

お互いに顔を見た瞬間、数日前に腐石を取り合って腐者に襲われたのを思い出した

「な、何でお前がここにいるガ!?」

ゲグ族のガラムはスピードを落とさないように気をつけながらカザに聞く

「それはこっちの台詞だっ!!何で砂鯨に追われてんだよ!?」

カザはチラッと後ろを振り向くと、砂丘を崩し、砂を巻き上げながら、普段おとなしい砂鯨が怒り狂って追いかけてくる

「…………。」

苦虫を噛み潰したような顔で前を見ながら運転するガラムの横で、小さなゲグ族の子供がうずくまるように座っていた

「こいつが…」

「え!?何!?」

「このチビが砂鯨の肉を食っちまったんだガっ!!」

その言葉を聞いて背筋が凍りついたカザ

何故なら

まず砂鯨を食べるとゆう発想が砂の民にはそもそも無い上に、昔から砂バァやナザルに

『砂鯨に手を出した者は、この世の全ての不幸が降り注ぐ』

と教えられてきたからだ

返す言葉に困りながらもカザは声を出す

「ど、どどどどうすんだよっ!?このままずっと逃げるのか!?」

そう聞かれたガラムは

隣の席でうずくまるゾイを片手で持ち上げると

カザに向かってぶん投げた

宙を舞うゾイ

その行動に何かリアクションする暇もなく

カザはゾイを受け止めた

「おいっ!!どうゆうことだよっ!!」

怒りをあらわにしてガラムに怒鳴るカザ

「この車じゃもう無理だガっ!!タイヤが2つパンクしてるガっ!!」

そう言うとガラムは一瞬目をつぶり

「…頼むっ!!ゾイを逃してくれっ!!」

そう叫んだガラムは6輪のサンドバギーをドリフトさせて砂丘の溝を塞ぐ

「ガ、ガラム!!やだっガラムっ!!」

カザの膝に座っていたゾイは、後ろに下がっていくガラムに手を伸ばす

後ろから迫る砂鯨の群れに

サンドバギーは飲み込まれていった

「ガラムぅぅぅぅ!!」

泣き叫ぶゾイを

カザは落ちないように

しっかりと抱えている事しか出来なかった

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