砂鯨が月に昇る夜に

小葉 紀佐人

あらがう者 17-1



雲ひとつない空を白いブーメラン型の飛行物体が日射しを反射させながら飛んでいく

バルウの街から出てしばらく経っていたが、もっと上空の気流に乗って飛びたいティトは何度も高く飛ぼうとしたが飛行が安定せず、仕方なく低い高度でスラスターを全開にして東へと飛んでいた

たまに来る強い横風に煽られながらも、ティトはまっすぐシャングリラを目指す

時折思い出す過去の恐怖と、自分ひとりでは何も出来ないんじゃないかとゆう不安を振り払いながら

日射しの強い砂漠の上を、風を切って進む

「…後、3分の2ってとこね」

ティトは機器にある距離計を見ながらシャングリラまでのおおよその距離を出して前を見た時だった

前方の高い砂丘に隠れて見えなかった

東に向かう帝国の強襲走行列車が視界に飛び込んできた



五分ほど前

「ラウル殿下!レーダーに低空で飛ぶ未確認機がこちらに接近中です!」

強襲走行列車の司令室の椅子に座るラウルに伝える兵士

ラウルは椅子の肘掛に腕を乗せて頬杖をつく

「方角は?」

「西からです!」

…何故バルウの方から

「視認出来るまでの時間は?」

「後4、5分かと」

「砲身を構えて待機、合図が来るまで撃つな」

「はっ!!」

威勢良く返事をした兵士は砲撃部隊に連絡する

「望遠カメラの映像を出せ」

ラウルの前にホログラムの枠が現れ、その中に強襲走行列車の後ろにそびえる砂丘の上部が映し出される


強襲走行列車の砲撃部隊

それには1人で1つの砲台が任されていて、弾は自動装填される

「おいおい未確認飛行物体だってよぉ!またあのクソみてぇな汚ねぇ鳥じゃねぇよな!?」

砲台の座席に着くなり話し出す1人の兵士

「鳥でもなんでも良いぜ俺は、このクソつまらねぇ任務の刺激になるならいくらでもぶち込んでやる」

そう言って並びあった砲台の座席に座りゲラゲラと笑う2人

手元の機器を操作し、砲身を後方へと向ける

「なんだよ砂丘で見えやしねぇ」

「飛んできたのがお前の母ちゃんだったらすぐ撃ってやるよ」

ゲラゲラ笑う2人

「それなら俺だって撃ってる」

2人だけで大盛り上がりしていた時だった

「ピーザザッ、後30秒程で視認可能。繰り返す、後30秒ほどで視認可能」

司令室からの無線が入るが、2人は俺の母ちゃんは砂から突然現れるとかふざけて聞いていない

「ピーザザッ、視認まで5…4…」

「やべぇ見えるってよ!?…お前の母ちゃん」

ゲラゲラ笑いながらモニターを見た

砂丘の陰から

高速で現れた真っ白なエアリード

「キャッホォォォォ!!空賊じゃねぇか!!」

と2人は勢いに任せて、その引き金を引いた


ティトは突然視界に現れた帝国の強襲走行列車から放たれた砲弾を避け、砂丘を舐めるように高度を下げる

その動きに合わせて騒いでいた2人以外の砲撃部隊の兵士たちも、合図を待たずに砲弾を撃ち込む

ティトは左右にエアリードを振って砲弾の雨を避けていく

強襲走行列車の司令室ではエアリードに乗ったティトが砲弾の雨を避ける映像が映し出される

「…あれは…ティト!?…な…なんでティトが」

ラウルはエアリードの乗り手を見て唖然とする中、司令室の1人の兵士は慌てて無線で砲撃を止めるように叫ぶが、聞こえていないのか砲撃部隊は止めようとしない

ティトは強襲走行列車に追いつくと、その横をすり抜けるように砲弾をかいくぐりながら前方へと逃げていき、フワッと上昇する

「へっへーんだっ!!そんな弾に私が落とされるかってんだ!!」

と後ろを向いて中指を立てた時だった

何かネジの様なものが後方へ飛んで行くのが見えて、横を見るティト

弾を避けるのに無理な操縦をしたせいか、アズーが直してくれた翼の板がめくれ上がり、ガタガタと機体が揺れ始め、ネジが次々に外れ、アルミニウムの板が後方へ吹き飛んでいった

「…嘘、でしょ?」

次の瞬間

翼が折れ

ぐるぐるときりもみ状態になって

砂漠へと落ちていった


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