砂鯨が月に昇る夜に

小葉 紀佐人

バルウ防衛戦2 11-3


ナザルは背中にしまってしまった狩猟銃に手をかけるが、もう間に合わない事を悟る

「………ちくしょう。また…守れねぇのか」

大黒海の集めたエネルギーが白い球体となりヤグラの上を照らす

ナザルは歯を食いしばって大黒海を睨む



視界の端

大黒海のアゴの下に

何か

青白く光る物が

横から飛んできたのが見えた瞬間

眩い光が弾け

その衝撃で大黒海のアゴが空へと向く

口の中の光の玉は空へ打ち出され

遥か上空で爆発した

ナザルは青白い光が飛んできた方を見る

「…遅ぇよ。だが…タイミングはバッチリだ!!」

北の方角からライトで闇を照らしながらまっすぐにこちらへ向かってくるサンドシップとサンドバギー

アズーも北から来る2台を見て、目から涙が溢れ出す

「…遅いですよみんな」

そう言ってアズーは笑った


ジャリハートを手放しで運転し、先程撃った狩猟銃をコッキングして排莢する

「バサロ!位置バッチリだったよ!」

と隣のバサロに親指を立てるカザ

同じように親指を立てて返すバサロ

「間に合って良かったぁ。バサロが急かさなきゃどうなってたか」

とシグは装甲サンドバギーを運転しながら安堵する

「ねぇ!この後どうするの!?」

何年ぶりかの大黒海を目の当たりにして少し震えているが、戦う事を決めたティトはみんなに聞く

「シグとバサロは北の門から入って防壁まで行って!!それまで俺とティトでなんとかする!!」

言いながらカザは自分の肩からかけていた月光蟲のビンをジャリハートを寄せてシグに渡す

「分かった!!気をつけろよ!!」

と受け取りながらシグは応えて北の門へ向かい、カザは大黒海へ向けてジャリハートの速度を上げた

ヤグラの上の連中は先程の光を浴びたアゴの下を見ると、腐者が吹き飛び中身らしきものが見えていて再生していかないのが見えた

バサラは岩を抱えてすかさずそこへぶん投げると、中身の皮膚を破り赤い血を吹き出し叫び声を上げる大黒海

「!?、血っ!?どうゆう事だ!!」

ナザルは大黒海の異常な状態に引っかかる。さっき投げられた青白い光が月光蟲だとすると、もしかしての可能性が頭に浮かんだが振り払う

「お前らぁ!!カザ達を守れ!!アレが俺たちに残された最後の希望だっ!!」

そう叫んだナザルは防壁に飛び乗り狩猟棍を再び回す

「俺たちで隙を作らねぇでどうする!?手を休めるな!!」

バサラとルウは後残り少ない岩を担ぎ上げ仲間たちを鼓舞する

「子供にだけ良いカッコさせるな!俺たちで守るぞこの街を!!」

ガンザはバズーカを大黒海に向けて炸裂弾を放つ

大黒海は接近して来るカザの方へと頭を向けて触手を伸ばした

カザはジャリハートを左右に振ってソレを避ける

「ティト!アイツの側を横切るから月光蟲を投げてくれ!!」

「分かった!」

ジャリハートは捕まらないように速度を上げて大黒海の前を走り抜ける

ティトは出来るだけ高く投げ、月光蟲のビンは大黒海の巨体の至る所に埋まる

すぐさまジャリハートを半回転させて狩猟銃を構えるが、触手が伸びて2人を襲う

ズバッと切られて液体に変わる触手

防壁の上からナザルが「やれっ!!」と狩猟棍を回しながら叫ぶ

カザは青白く光る3つを狩猟銃で素早く撃ち抜くと、眩い光が大黒海の腐者を吹き飛ばしていく

そこをバズーカや岩、真空波で攻撃すると大黒海は大きく怯み、確実な手ごたえが感じられる


シグは街道を抜け、防壁の後ろにサンドバギーを止める

「俺は見晴らし台からコイツを投げる。バサロはナザルさん達にそれを伝えてくれ」

シグがそう言うとバサロは頷き別々の方向へ走り出した

防壁の後ろに設置されたさっきミゲルたちがいた見晴らし台のハシゴを登るシグ

肩から下げた青白い光が目立つのか、大黒海は触手をしならせシグを狙う

ズバッ

「お前には何もさせねぇ!!奪わせねぇ!!ここに俺がいる限りはなっ!!」

ブンブンと狩猟棍を回しながら大黒海の一挙手一動を見逃さないナザル

ハシゴを登りきったシグは肩から月光蟲のビンのタスキを外してヤグラを見ると、バサロが説明してくれたのだろう、ガンザやバサラが手を上げていつでも良いと知らせてくれた

「言ったは良いものの届くかなぁ」

と少し自信無さげに呟いたが、意を決して月光蟲をタスキごとぶん投げた

青白く光る輪が

ゆっくりと大黒海へと向かっていく

ヤグラの上でバズーカを構えるガンザ達

バサラ、ルウ、バサロも岩を担ぎ上げて構える

光の輪はまっすぐ大黒海へと進み

重力によって落下していき

それは顔の目の前

大黒海とナザルの間に落下し

ガンザ達のバズーカが火を噴く

光の輪は炸裂弾によって吹き飛び

その場所で破裂してしまった月光蟲もいたが、散弾のように大黒海の巨体へと飛び散った

それを狙い撃つガンザ達と守護隊

大黒海の正面が眩く輝き

その姿を露わにした

「…砂……鯨?」

真っ白な筈の体は自らの血で真っ赤に染まり、体中ボロボロになっていた

「…やるぞ。俺たちで終わらせてやらねぇでどうする!?」

ナザルは狩猟棍を回しながら後ろへ叫ぶ

バサラ、ルウ、バサロはガラ空きの胸へ岩を撃ち込む

大きく3つの穴が空いて真っ赤な血が噴き出る

「…悪いな」

と呟いたナザルは踏み込んで十字に切り込むと縦横の刃が砂鯨の体を切りつけ、その巨体は地面へと崩れた

歓喜の声は生まれなかった

聖獣の余りにも悲しい姿に

防壁を守った者たち全てが膝をつき

魂の無事を祈った

東の門が開かれ、カザ達が帰ってくると皆彼らを称え、ミゲルとクシナはカザとティトを出迎えた

シグは見晴らし台を降り、ヤグラへ上がるとククルが抱きついて来た

「え!?何でいるの?」

「僕を手伝ってくれたんですよ」

とアズーが応え、リンクボムの説明をしている時だった

ドシン

ドシン


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