砂鯨が月に昇る夜に

小葉 紀佐人

空の民 5-3


デモデモが見えなくなっても当て所なく走り続けるジャリハート
後ろに同い年くらいの女の子が乗っている事をようやく意識し始めたカザは、恥ずかしいのか緊張しているのか分からない何とも言えない気分で操縦する

「…ねぇ、あれオアシスじゃない?」

と指差した方向に小さなオアシスがあった

本来野生の動物も集まる場所に行くのは危険だったが、腐者は何故か水を嫌うので変なところで休むよりかは安全だと判断したカザはオアシスへと進路を変えた

鳥が運んできた種が成長し、あまり見かけない木が何本か生えていてすぐ近くに澄んだ透き通った水が砂の中から湧き出ている

サンドシップのジャリハートを木陰にとめておき辺りを警戒するが、動物の影すら見当たらない静かな場所だった

少女はジャリハートから降りると胸元のジッパーを下ろし袖から手を抜いて上着だけ器用に脱ぐと、左右の袖を腰のあたりで結んでTシャツ姿になる

「流石に暑いね砂漠は」

とオアシスの水を手で汲みゴクゴクと飲み始めた。カザは腰袋から空の水筒を取り出すと、それに水を入れ始める

「『砂漠は』ってゆうことは君の住む場所は砂漠じゃないの?」

とカザは少女に聞く

「あっ、助けてもらったのにごめんね、ありがとう」

「たまたま偶然とゆうか事故の延長とゆうか…とにかく無事で良かった」

自分もついさっき遭難しかけていたなんてカッコ悪くて言えなかった

「わたし『ティト』」

「俺はカザ。ここから西に行った所にある砂の街バルウの民だ」

と自己紹介する

「へー、本当に砂の民なんていたんだね」

と少し感に触る物言いだったのは触れずに
「ティトはどこから来たの?」と聞く

「私は…」とティトは指で空を指す

「空?」

「『空の民』で、他所の人は『空賊』とかって言ってきたりするけど…とにかくずっーと東の空から来たの」

とティトは言うが、カザはまだイマイチ理解していない

「んーと、街の名前は『シャングリラ』って言って、街ごと空に浮いてるの」

「え!?浮いてるの!?どうやって!?」

「こっちの砂漠にも腐石はあるでしょ?」

と聞かれ「うん」とだけ言って話を促す

「そのエネルギーで空を飛ぶの。ここまで私が来るのに乗ってきた船は1人乗りの小型のものだけど、シャングリラは大型の船がいくつも連結して1つの空飛ぶ街を作っているの。多分だけどカザ?のその乗り物とは宙に浮く方法が違うから分かりづらいとは思うけど」

カザからしたら変な格好の女の子が空を飛ぶ街だの何だのと訳の分からない事を言い出したと思っても仕方ないかもしれないが、何故かカザはティトが嘘をつくような子ではないと思えた

「凄いな!腐石で空も飛べるんだ!アズーが聞いたら驚くだろうなぁー。あれ?ティトの乗ってきた船?はどこにあるの?」

「あっ!大変なの!あんのバカ鳥に襲われて落ちちゃったの!!」

そう言われ、怪鳥デモデモから逃げてきた方向を見るカザ

「探しに行こう!」

そう言うとカザはジャリハートにまたがりティトの横につける

「あいつがまだいるかも」

「そん時はそん時だって」

ティトもカザの後ろに乗ると、軽快に走り出した


しばらく走ってもデモデモは見えず、どこかに行ったんだろうと最初にカザと出くわした場所も通り過ぎ、その先へ行く

「…あった!アレ!私のエアリード!」

と少し身を乗り出してティトが指差す方向を見ると、白く輝くものが見えた
近づいてみると大きなブーメランのような乗り物の翼が折られ、その折られた部分は少し離れた場所に突き刺さっていた

「すげー、コレが空を飛ぶのかぁ」

と見たことも無い乗り物に感動しているカザの横で、膝をつき絶望に打ちひしがれているティト

「あぁ、もう帰れない。わたしはこの何も無い砂漠で干からびて死ぬんだ」

しまいにはシクシク泣きだす

それを見たカザは少し考え込んで

「…砂の街バルウに来ないか?俺のサンドシップを作ってくれた友達がいるんだ。もしかしたら直せるかもし」

まで言った所でティトに肩を掴まれ前後に揺すられる

「本当に!?本当なのね!!?嘘ついたら砂鯨の口の中に入ってもらうからね!?」

とグワングワン揺すられて気持ちが悪くなりながも「多分…大丈夫」と答えるカザ

「キャー!!やったぁ!これで帰れるぅー!」

と抱きしめて来るが首が絞まって苦しい

ティトの背中をタップしながら「とにかく帰ろう」と言い、トトを運ぶ時と同じ要領でエアリードを砂鮫の革で包んで運ぶ事にした
エアリードの折れた翼や機体自体が非常に軽く、こんなに軽いなら空も飛べるんだろうなと思った

革に包む作業をしていてふと思ったことを聞いてみる

「何でこんな遠い所まで来たの?」

ティトは少し押し黙った後

「砂鯨を…探してたの」

そう言ったティトの横顔は

少し悲しそうで

綺麗だった

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