男尊女卑の改革者

D_9

第一章『異世界転生!?』第八話「ラナと新たな?の物語」


「……………ん」


「(……………あれ?なんだ、これ?暖かくて、気持ちいい。ポカポカして、起きる気力が全く出ない。……………なんかデジャヴ?)」


 俺がガサゴソと、体を少し動かすと、


「………………ん」


 誰かの声が聞こえる。


「(誰の声だ?)」


 少し考えてみるが、


「(…………………まぁ、いいか。そんなことより、寝たい。なんか知らないけど、すごく眠い。頭がまだボーッとしている。結構寝起きは良い方だと思ってたんだけど………)」


 そして俺が再び眠りにつこうと布団に潜り直すと、


「……………んっ!」


「…………………」


 またもや声が聞こえた。


「(……………あれ?気のせいじゃない、のか?)」


 俺は何故か・・・イヤな予感がして、恐る恐る目を開ける。


「すぅ………すぅ………」


 目の前には綺麗な銀髪と顔。言わずもがな、俺の姉であるソフィアだ。その彼女が規則正しい寝息を立てながら俺の隣で眠っていた。


「……………………」


「(あれ?俺はいつの間に、姉と寝るようになっていたんだ?)」


「…………………」


 少し考えてみる。


「……………って、おかしいだろっ!?」


「きゃっ!」


 突然俺が大声を出してしまったので、可愛らしい声を上げてソフィアが起きてしまった。


「あ……………す、すみません。姉さま、起こしてしまって」


「ううん…………大丈夫だよ、ユウト…………………ユウト?」


 ソフィアはまだ眠そうな雰囲気から一転。ポカンとしたような表情になった。


「はい?ユウトですが。何か?」


「……………………」


 俺がそう答えると、ソフィアは停止してしまった。手を振っても反応がない。


「あ、あの?姉さま?どうかし……………」


 そう聞こうとしたが、


「っ……………ユウトっ!!!!」


 話の途中で、いきなり飛びつかれる。


「ぐはっ!!」


 ソフィアのタックルが、見事俺の腹部に直撃。肺の中の空気が外へ出てしまう。


「ユウトっ!!ユウトっ!!!」


「ね、ねえ、さま?」


 息が絶え絶えになりながらも、とりあえず事情を聞こうとするが、


「…………うっ……ッ」


「……………え?」


 思わず言葉を止めてしまう。見ると、ソフィアは俺の胸の中で静かに泣いていた。


「よかった…………本当に、よかったよぉ」


 涙を流しながら、ソフィアはさらに俺をギュッと抱きしめる。


「あ、あの、どうしたのですか?」


 状況が飲み込めないので素直に聞いてみる。するとソフィアは、


「…………ユウト。あの日から三日も目を覚まさなかったんだよ?」


 ソフィアは目に涙をためながら、顔を上げてそう言った。


「(あの日?あの日って………………っ!そうか!オークたちに襲われた日のことか!?)」


「ね、姉さま!母様たちは…………」


「大丈夫。みんな無事だったよ?あ、でもラナさんだけ、まだ目を覚ましてないわ。でも、お医者様からは大丈夫だろうって言われてた」


「そう、ですか」


 おそらくラナは戦闘の疲れが出ているのだろう。それに魔力も相当使ってたし。


「(…………本当に良かった。)」


 俺が守りきれた、という実感を味わっていると、ソフィアが俺から離れる。


「…………そうだね。これも、ユウトのおかげだね」


「……………」


「(あれ?なんか、いつものソフィアの笑顔のはずなのにやたらと圧を感じるんだが……………気のせいか?)」


「あ、あの?ソフィア、さん?」


「何?」


「……………ナンデモアリマセン」


 気のせいじゃない。それに、これはヤバイやつじゃないか?前に、同じような光景を見たことがある。

 確か、あの時は…………クライドが酒で酔っ払って嫌がるソフィアに抱きついて、スリスリしてたんだよな。そしたら、なんかありえないほど高密度な魔力弾がクライドに当たって、文字通り吹っ飛んでいった。魔力弾が飛んできた方向を向くと、氷のような笑顔のミランダが立っていて、そのままクライドは首を掴まれてどっかに連れて行かれてた。

 翌日、「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめん………」って、つぶやき続けるクライドの姿があった。………………一体何があったんだよ。

 ともかく、今のソフィアはその時のミランダと同じような顔だった。俺の中の何かが早く逃げろ、と言わんばかりにサイレンを鳴らしていた。

 チラッとソフィアを覗き見る。


「……………(ニコッ)」


「(……………え?なんだ?何があった!?思い出せ!なんかやらかしたんだろ!?俺!!)」


 なんとか思い出そうとするが、何も思いつかない。そして、静寂が訪れる。ソフィアはニコニコと氷のような笑顔を、俺はおそらく引きつった笑顔を浮かべているのだろう。

 すると、ソフィアが突然ため息をついた。ただそれだけのことなのに、ビクリと俺は過剰に反応してしまう。


「…………あ、あの」


 ソフィアが何故、こんな反応を見せるのか全く分からないので、素直に聞くことにした。まぁ、多分俺が悪いんだろうし。でも、その言葉はソフィアの行動によって遮られた。


「……………っ」


「…………え?あ、あの、姉さま?」


 突然、ギュッと頭を抱きしめられる。俺を抱きしめるその手は少しだけ震えているように見えた。


「……………心配、したんだよ?」


「は、はい」


「先生には魔力の使い過ぎだからっ言われた。傷も軽いものばっかりだから大丈夫、って」


「……………」


「でもね……………もしも。もしも、ユウトが目を覚まさなかったらって。ずっとこのままだったらどうしようって……………私、すごく不安だったんだよ?」


「………………」


「ユウトが優しいのは知ってるよ?女の子でも、目の前に傷つきそうな人がいたら代わりに自分が傷ついてでも守ろうとすることができる優しい子だって………………でもね?だからといって、ユウトが傷ついていい理由・・・・・・・・にはならないんだよ?ユウトがみんなのことを想っているように、私たちもユウトのことを大事に想ってる。ユウトに傷ついてほしくないって」


「っ」


「だからね……………お願い。もう、こんな無茶しないで?私、ユウトがいなくなっちゃったら…………どうしたらいいのか、分かんなくなっちゃうよ」


 そう言って、さらに俺のことをギュッとするソフィア。その声は、震えていた。その小さな体は、震えていた。その瞳は、涙で濡れていた。


「(……………あぁ、そっか。俺は間違ってたのか・・・・・・・)」


 二歳の誕生日にクライドに言われて、俺は覚悟を決めた。絶対に家族を守る、と。でも、その中に自分は入っていたか?今、ソフィアに言われたとおりだ。俺は自分よりも、誰かを守りたい。それは、俺にとってこれが二度目の人生だからだろう。死んだはずの俺が生きている。そんなことはありえないから。いや、あってはいけないことだから。そうどこかで考えていた。だから、守ろうと思った。守りたいと思った。この命をかけて。でも、みんなを守るためには。笑顔でいてもらうためには、俺自身も守らなければいけない。俺はみんなに大事にされているから。みんなは、優しいから。だから、俺がするべき覚悟はコレじゃなかったんだ。


「………姉さま」


「………うん」


「心配かけて、ごめんなさい」


「…………………うん」


「………ぼく、もっと強くなります。姉さまに心配かけないくらい、強くなります」


「………………」


「…………気づかせてくれてありがとうございます」


「……………もう、簡単に傷ついちゃダメだよ?」


「はい」


「…………うん。じゃあ、お姉ちゃんもユウトを守れるように頑張るね?」


「え?で、でも………」


「私だって、ユウトが大切なんだよ?ユウトは私よりも強いかもしれないけど、一人じゃできないこともあるでしょ?」


「……………」


「だから、一緒に頑張ろう?」


「………………」


 ……………全く。そんな笑顔で言われたら、何も反論できないじゃないか。


「…………うん。わかった」


「よしっ!それじゃあ、母様たちのとこへ行こう?みんな心配してるから」


「はいっ」


 そう言って、俺達はベットから降りてミリアたちの元へ行こうとした。しかし、


「やめなさいっ!!ラナっ!!」


「えっ」


 突然、聞いたことがないようなミリアの声が聞こえて、思わずビクッとしてしまう。しかし、すぐに俺はソフィアと目を合わせてうなずきあい、


「行こうっ!姉さまっ」


「うんっ!…………あ、でもゆっくりだよ!?」


 駆け出す準備をしていた俺は、ビクリとしてからなるべく早歩きでミリアたちの元へ向かった。






〜ミリアside〜
「…………来ないでくださいっ!!」


「ラナ!落ち着きなさい!!大丈夫だから、そのナイフを置きなさい!」


「っ!!…………近づいてこないでください、奥様っ」


 オークの事件からずっと眠ったままだったラナがついさっき目を覚ました。皆を呼んでこようと思って部屋を出ていこうとしたら、ラナがいきなり、リンゴを剥くために机に置いておいたナイフを持って自分の首を切ろうとしたのだ。


「…………ラナ?突然どうしたの?」


「私は……………私は、何もできませんでした」


「そんなわけ無いでしょう?私のワガママに付き合ってもらって、その上殺されそうになったのに私を庇ってくれて……………私は知ってるのよ?」


 そう。ラナが自分のことを必死に守ろうとしてくれていたことを私は知っている。それなのに、どうしてそのようなことをいうのだろう。


「…………やっぱり、私はいないほうがいいんです」


「え?」


「…………奴隷になる前、私は魔物に捕まってしまったことがありました。それで家族が私を助けようとして………………皆死んでしまいました。だから、もしまたあんなことがあったら、私が守ろうと思っていたのに……………ユウト様に助けて頂かなければ、奥様たちを無事に帰すことなんて出来ませんでしたっ!!それに、あんな数のオークなんて聞いたことがありませんっ!きっと、私がいるからっ!私が、いるから…………」


 そう言うラナの目には、涙が見えた。私も聞いたことがない事実にマルシアも驚きを隠せないようだ。きっとこの子は、今までずっと悩んできたのだろう。マルシアからとても真面目な子と聞いていたので、それが分かってしまう。こんなにも優しい子が二度もそんな目に会えば、自分のせいだと思っても不思議じゃない。でも、


「…………ラナ。確かに私もあんな数のオークは見たことがないわ。でも、それはただの偶然よ?あなたが悪いなんてことは絶対にないわ」


「そうですよ、ラナ。あなたが責任を感じる必要はありません」


 マルシアも私と同じように考えているようで、ラナを慰める。


「でもっ!まだ、ユウト様が起きていない…………」


 ガチャ


 ラナが話している途中で扉が開く。そして二つの小さな影が部屋に入ってきた。


「失礼しますっ!お母様っ、どうかされましたか?」


「「「ユウト(様)っ!?」」」


 そこには体のところどころに包帯が見える、私の愛しいユウトがいた。






〜ラナside〜
「は、はい。そうですが………」


 私達のいる部屋の扉が開き、二人の子供が入ってくる。ソフィア様とユウト様だ。


「(目が覚めたんだ………よかった)」


 私は少しだけホッとした。でも、ユウト様の体はグルグルと包帯で巻かれている。全部、私達を助けるために…………、

 そう思うと、ズキンと心が傷み、思わず私は顔をそむけてしまう。しかし、


「っ!………ラナっ!!」


「っ!!」


 怒気を含んだユウト様の声が聞こえた。きっと、私に怒っているのだろう。役立たずだと思われたのだろう。わかっている。分かっていた。自分の存在価値なんて自分が一番に知っている。だから私は素直に怒鳴られようと思った。でも、


「なんでそんなもの持ってるの!?危ないよっ!!」


「えっ…………?」


 ユウト様は私の方に早歩きで来てから、そう言って私からナイフを取り上げようとする。


「っ!!だ、駄目ですっ!ユウト様っ!!」


「…………どうして?」


「私のせいで……………私のせいでユウト様が傷ついて…………」


 私が俯きながらそう言うと、ユウト様はキョトンとしてから、


「コレのこと?こんなの魔法で治せるよ?」


「そういうことではないんですっ!ユウト様が傷ついてしまったこと自体が私は許せないんですっ!」


 私は思わず怒鳴りながらそう言ってしまう。でも、しょうがないことだと思う。もう、私のせいで誰かが傷ついてしまうなんて……………。

 ユウト様は少し驚いたような顔をして、俯いてしまう。


「(…………嫌われた、かな?)」


 当然の結果だと思う。勝手なことばかり言って、勝手に怒鳴って、勝手に泣いて………。自分でも呆れてしまう。でも、


「……………なら」


 でもユウト様は私の方を向いて、


「なら…………今のラナを見て、同じ気持ちを味わっている僕は・・・・・・・・・・・・・・…………どうすればいいの?」


「っ!!」


 ユウト様は少し泣きそうな顔をしてそう言った。


「僕だって……………僕たちだって、ラナが傷つくところなんて見たくないよ?だって、ラナは僕にとってお姉ちゃんみたいな存在だから。僕は家族が傷つくところなんて見たくない」


「っ」


 家族。ユウト様は私のことを家族だと言ってくれた。家族を自分のせいで失ってしまった、私のことを。


「……………ラナが今までどんなことを経験してきたのか、僕は知らない。でもね?少なくともここにラナが傷つくことで辛い思いをする人がいるんだよ?だから…………」


 そしてユウト様は私に微笑みながら、


「そんなこと、しちゃ駄目だよ?」


「ユウト、様…………っ」


 駄目だ。目に涙が溜まっていくのが分かる。それが止めようもないことも分かる。


「……………大丈夫だよ?僕たちは皆、ラナの味方だから。ねっ?」


「ユウトさま………っ!!」


 ユウト様はつま先立ちで私の頭を撫でてくれる。その優しさが、その暖かさが嬉しくて嬉しくて、たまらない。

 私はしばらく、そのままユウト様に泣きながら、撫でられていた。






「…………ぐずっ…………お見苦しい、ところを………ぐずっ」


「大丈夫だよ?それよりも、もうこんなことしちゃ駄目だよ?」


「……………フフッ。本当に優しいんですから」


「(…………ふぅ、よかった。ようやく、ラナが笑ってくれたよ)」


 正直、一時はどうなることかと思ったけど、なんとかなってよかった。

 すると、突然後ろからギュッとされる。


「あぁ〜〜、ユウちゃ〜ん!会いたかったよ〜〜」


 そして、スリスリナデナデしてくるミリア。どうやら、俺が怪我をして寝ていたからコレが出来なかったらしい。


「ごめんなさい、母様。ご心配をおかけして」


「ううん、いいのよ〜?ソフィアちゃんもありがとね」


「はいっ」


 すると、ミリアが俺から離れて俺の目を真っすぐ見つめる。


「でも、今回みたいな無茶はもうしないでね?私、ユウちゃんがいなくなっちゃったら…………」


 ミリアもソフィアと同じように、涙目でそう言う。


「そうですよ?私だって、心配していたのですから」


 ミリアの隣から、マルシアも心配そうにしていた。


「マルシア………………うん、ごめんなさい」


 先ほどソフィアに気づかせてもらったおかげで、ちゃんと謝ることができた。


「……………あ、というか。母様たちは大丈夫なのですか!」


「え、えぇ。大丈夫よ?」


「本当ですか?この前もそう言ってたのに、倒れてしまったじゃないですか」


「そうですよ!ミリア母様!」


 俺の隣で、ソフィアも心配そうにしている。


「そ、それは〜〜………」


 二人でジーッと見つめると、明後日の方向を見て言葉を紡ごうとするミリア。……………嘘が下手だな。


「………………はぁ。奥様、もう隠せないと思いますよ?それに、こんなにもユウト様に心配させてしまっているのですから」


「……………それも、そうね。本当はサプライズにしたかったのだけど」


「サプライズ?」


 思わず、繰り返してしまう。サプライズ?一体何のことだ?


「ユウちゃん。実はね?」


「は、はい…………」


 そこで一度区切るミリア。何故か緊迫した空気が漂い始める。そのせいで、俺とソフィアは、思わずゴクリと喉を鳴らしてしまう。そして、ミリアが口を開いて、


「…………ユウちゃんに妹ができました〜〜!」


 と言った。


「「……………………え?」」


 俺たちはポカンとしてしまう。


「い、妹?」


「うんっ!そうだよ〜?」


「………………」


 しばらくの沈黙。そして、


「「…………えぇ〜〜〜〜!!!」」


 俺とソフィアの絶叫?が部屋に響き渡った。




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