魔王の息子に転生!?温室育ちの異世界チートライフ!!

老獪なプリン

転生編 2話

暗闇に五つの明りが灯る。ゆらゆらと揺れ動く人影。



「今宵の定例会議ですが、、。旦那、あのガキどっかあやしい。なんか隠してやがる気がするぜ。なんというか注意しといた方がいい。外見と中身があってねえ感じがして変なかんじがすんだ。」

赤髪の男は真剣な口調で言う。
頭部からはうねるようによじれ曲がった黒い角を生やしていた。
赤く染まった頭髪は燃え上がる炎を彷彿ほうふつとさせた。男の身体は細身だが引き締まった筋肉。目元は鋭くキリッと締まり、男の剛健さがうかがえる。
が、それ以上に黒く禍々しい角を持つ男はそれをよく思わなかったのか静かに暗く返す。
身を包む着衣の上からでもはっきりと確認できるその隆起した筋肉はまさに筋骨隆々と言ったようだ。
引き締まった肉体もさることながら、顔つきもその男の力を物語るようだった。
ほのかに紅く眼光に光がうつる。


「忠告痛み入るな。が、まあそう言うなカイナ。どうあれ、あの子は我の愛おしい唯一の息子なのだ。それをはばかるような発言はやめてほしいものだ。自分が大切にしているものを揶揄されるのは少し腹も立つ。
今回は我の気にしすぎなとこもあるかもしれないからな、水に流すつもりだ。が、次は流石の我も怒りを抑えるのが難しいやもしれん。
間違えてお前たちを殺してしまうかもしれないな。」

冗談めかした口調ではあるもの、込められた殺気は常人のそれを越えていた。
場の空気は一気に凍り付き、皆そこに杭を打ちつけられたのかのように身動きなく固まる。
その状態を打破するかのようにカイナと呼ばれた男が口を開く。

「はっ、、、、ははは。冗談きついぜ。親バカもここまでくると、、、」

苦虫を噛み潰すようにカイナは引きつった笑みを浮かべる。
それに追従して口を開いたのはまたも角を生やした全身真っ白な女。腰まで伸ばした長い白というよりも銀に近い頭髪。眉、まつげ、産毛までもすべてが真っ白だった。肌はそれこそ雪のような白、質はきめ細かくさらさらとしている。長いまつげによって強調された目元には紅の大きな瞳が怪しく光っている。
鼻もすらりと伸び、視線を下げた先にある可愛らしい小さな口元。
そのどのパーツも洗礼され、きれいに整った美しい顔立ちをしてる。

「旦那様もお戯れを。私たち四天王が全力で同時に襲い掛かろうとそんなこと意味を成しませんよ。それこそ時間の無駄です。それに、あなた様は私たちを歯牙にも掛けない様子で先日あしらったばかりですから。私たちが敵わないのはもとより、あなた様が本当の意味で力を出したのならそれこそ決着まで10秒もかからないのでしょう?」

女はどこか自嘲気味に笑う。
横でさらに声が上がる。

「シーファも旦那様も待ってってば!!それ悪いのはカイナだけなんでしょう?なんで私たち残りの三人までおこられるのさ。もしやるならカイナだけにしてくださいよ。チュカ悪くないのに!!」

ブーブー。隠しもせず心のうちを表に出すその少女、チュカはどこか、、、、いや、どこをどう見ても不満げだった。
肩口までの茶髪のショート。衣服は露出度が高く、それ故かどこか軽い印象を受ける。
その印象は発言の端々からも感じられる。
額に近い頭部からは小さな角が顔を出している。前者に比べるといくらか控えめな大きさだ。
くりくりとしたつぶらな瞳が一層幼さを感じさせている。

「ん~、、、、眠い、、、、Zzzz、、。」

存在すらも、忘れてしまいそうになるほど気配を消していた少女が微かに身体をゆすった。
この場の喧騒で一人、その少女はどこ噴く風というように静かな吐息を上げ安らかな眠りについていた。
眠たそうにそのまなこをこする。
いや、こすっていたのか。もう寝てるし、、、、。ん、っん。まあいい。
その少女はフードを深くまでかぶり、完全に睡眠の体制をとっていた。
頭部はフードに覆われているが微かな盛り上がりを見せている。
少女の見た目は少女どころか幼女もいいとこだ。
幼い容姿はまるで妖精のような神秘さすらも感じさせる。
カイナはそちらへチラリと目をやり、あきれた様子で首をすくめる。

「おい寝んなよニーナ、、、、。まあ、俺もシーファに同意するぜ。だってそうだろ?
なんたって旦那は俺たちの魔王様・・・なんだからよお。」

魔王。そう呼ばれた男はどこかあきらめたようにふーっと息を吐きだす。

「ああ、お前たちも俺の大切な部下だ、もちろん殺しはしない。が、もしかすると訓練と称し半殺しにはしてしまうかもしれないがな。」

「「えええええええっ!?」」

カイナとチュカが同時に声を上げる。

「別にカイナの意見がおかしいと言っているわけではない。主である我の命を危惧し、あのようなを報告したのだろう?」

「そりゃそうだ!!」

「なら聞くが、お前の王は赤子程度にやられてしまうようなちっぽけな存在なのか?」

「うっ、それは、、、、」

「それにせがれはせがれ。われの可愛い息子であることには変わらないのだ。
 我はあれを立派に育てる。それに、あの子が不穏な動きを見せたなら我が止めればよい。
それでだめならお前たちが止めればよい。」

「魔王様が止められない相手なら私たちには到底敵わない気が、、、、、」

ぼそぼそとチュカがぼやきを漏らす。

「つまり、我はあの子を脅かすものには容赦しないということだ。」

男はそう話を締めくくった。

「ふふっ、あれだけ人類に恐れられていた最悪の魔王様もお世継ぎには形無しね。
すっかり激甘なパパさんだこと。けど、あんな小さな子供を殺してしまうのは流石に私も賛同できないわね。彼が生まれたこと自体には祝福はあっても罪はないもの。彼を害そうとするものがあるなら私は全力でそれらを殲滅しましょう。」

「えっ?カイナはお世継ぎ様を殺そうとしてたの?サイテー!!私もそりゃあシーファに同意するよー。」

「してねーよ!!!!誰がそんなこと言ったんだ!俺が言ってんのはなただ坊ちゃんはよく監視しといたほうがいいってだけだ。あの子は絶対なんかやらかす。そんな気がしたんだ。」

「「「ふうーーーーん」」」

皆、同様に目を細め訝し気にカイナを見つめる。

「ほんとだっての!!」

その場に男の声がむなし響いた。


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