ガチャで爆死したら異世界転移しました
冒険者学校 ⑱ 決闘の行方
(此奴は本当に噂通りの人間なのか?)
リエナ・レヴィアがレクウェル家との決闘に出場するようハウルド家当主から直々に依頼された時、レヴィアが最初に思った事はこれであった。
依頼の要請があった時既に【零落の凶弾】の皆は勿論、レヴィア自身もハウルド家の悪い噂というのは耳に入っており、一体どんな相手なのかと相応の覚悟をして挑んだ会談だったのだが・・・蓋を開けてみれば、とても噂のそれと当主本人の印象は違いすぎていた。
まず容姿、全くと言って良いほど民衆の前に姿を表さないので、完璧に国民の独断と偏見で形成されたもの──簡単に言うと肥えた豚である──迄とは行かなくともそれに似たものであると考えていたのだが・・・何のことは無い、どこにでもいそうな気さくな好青年であったのだ。
それに加え【零落の凶弾】一行を驚かせたのが、自愛と自尊の塊であると言われるその大貴族が、有名とはいえ冒険者に頭を下げて頼んできた事だ。しかも会談の後は、宴会かと思うほど豪勢な食事会まで用意してくれるという特典も付きで。
レヴィアは困惑した。
「民衆の悪い噂はどこから来たのか?」と。
レヴィアの経験上冒険者という身分の自分にここまで礼を尽くす貴族など、現セタリッド国王くらいだった。
実の所、相手が噂通りの人物だったとしても余程でなければ依頼を受けるつもりであったレヴィアは、一つ【零落の凶弾】として依頼を受けると言う条件を付けさえしたが、二つ返事で了解し決闘に挑んでいた。
決闘の最中でもレヴィアは考えていた。彼女の中の常識を覆したあの男に、何故あの様な噂が流れているのか。冒険者チームの皆は「演技の可能性も否定できない」と言うが、彼女はそれはないと断言出来た。人一番正義感の強い彼女だからこそ、若くしてハウルド家当主と言う座に就いたあの男の言動は真実だと確信していたからだ。
(では何故、悪い噂が? 単に平民の、上流階級への嫉妬から来たものなのか、それとも・・・)
どんどんと深く考え込むレヴィアだが、唐突に目前に迫った敗北の危機に、強制的に戦闘へと意識を向けさせられる。
しかしそれは、一度にひとつの事にしか集中出来ない彼女にとって、半覚醒状態で戦っているようなものであった。
結果リエナ・レヴィアは、一人の少女の奮闘と、少女に加担する地図が読めなくて道に迷った人に敗北したのであった───
「あぁ、くそ・・・」
静寂に満ち、先の一撃で砂塵の舞う中で、レインは苛立ちを表す。
(武器破壊・・・はぁ…完全に油断した)
ゲーム時代のシステムとして、武器破壊という物がある。
EOWでは3年ほど前、運営が新規プレイヤー救済の為無駄に強力な武具を配布していた。そこで、新規プレイヤー同士が10人程で手を組み、その武具で持って古参プレイヤーをPKして周ると言う事件が起こった事がある。結果、それらの新規プレイヤーが、普通手に入るはずのないアイテムや素材を所持していまいゲームバランスが崩壊したのだ。
その後対策として運営が用意したのが、武器破壊システムである。
後に新規殺しと言われる事になるこれは、公式の説明では
「全ての武器に耐久値を設定し、値が0になると【破壊状態】となり、【修理】するまでその武器は使用不可になる。更に、自分のステータスに合わない武器を使用した場合、耐久値の減少量が大幅に増加し、破壊された場合は、【修理】も出来なくなる【完全破壊状態】となる」
となっており、多くのプレイヤーを悩ませた。更にその後には、
「実力に合った武器でも、あまりにも技量に欠けた使用をすると【完全破壊状態】になる」
と言うある程度のPSをも必要とする仕様に変更してきたのだ。
しかしそのお陰か、大量跋扈していた武器だけは良い新規プレイヤーは鳴りを潜め、ゲームバランスも戻り、一応事態は解決していた。
(やっぱりこの世界にもあるのか。実力に合わない武器の使用、これが原因だと良いけど・・・)
何年もトッププレイヤーとして、1対1では無敗という看板を背負ってきたレインにとって、「あまりにも技量に欠けた使用」が原因だとするとプライドが許さないのである。
レインは【アイテムボックス】から瞬時に取り出した木刀を手に、満身創痍で尚まだ戦う気で立とうとするダルダの元へ向かう。
様々な弱体化を自身に掛けてはいるが、レインの本気の一撃を受けて尚動けると言うのはそれだけで賞賛されて良い事であり、本気を出してしまったレインからすれば半分自分の負けのようなものである。
ダルダは、人間ならば動くはずの無い程ボロボロに砕けた全身の骨を種族の特権にものを言わせて有り得ない速度で治し、立ち上がる。
しかし直ぐに膝を着くことになった。
先程のレインによる一撃で粉砕された全身の骨はあらかた治りつつあるが、その衝撃は脳へ甚大なダメージを与え、最早今意識を保っているだけでも奇跡と言える程だ。
「っ…むぅ・・・つ、続き、を──」
「はぁ・・・【完全治癒】【睡眠】」
力尽き、気絶しうつ伏せに倒れたダルダに、レインはため息混じりに魔法をかける。
『・・・勝者、レイン・グレスティアァァァ!!!そして、ハウルド家とレクウェル家の決闘は、最後に逆転し、三勝二敗でレクウェル家の勝利となります!!』
ダルダの戦闘不能を察したアナウンスはレインとレクウェル家の勝利を宣言し、決闘はスラグディア中に響く程と共に、アリサの勝利で幕を閉じたのだった───
リエナ・レヴィアがレクウェル家との決闘に出場するようハウルド家当主から直々に依頼された時、レヴィアが最初に思った事はこれであった。
依頼の要請があった時既に【零落の凶弾】の皆は勿論、レヴィア自身もハウルド家の悪い噂というのは耳に入っており、一体どんな相手なのかと相応の覚悟をして挑んだ会談だったのだが・・・蓋を開けてみれば、とても噂のそれと当主本人の印象は違いすぎていた。
まず容姿、全くと言って良いほど民衆の前に姿を表さないので、完璧に国民の独断と偏見で形成されたもの──簡単に言うと肥えた豚である──迄とは行かなくともそれに似たものであると考えていたのだが・・・何のことは無い、どこにでもいそうな気さくな好青年であったのだ。
それに加え【零落の凶弾】一行を驚かせたのが、自愛と自尊の塊であると言われるその大貴族が、有名とはいえ冒険者に頭を下げて頼んできた事だ。しかも会談の後は、宴会かと思うほど豪勢な食事会まで用意してくれるという特典も付きで。
レヴィアは困惑した。
「民衆の悪い噂はどこから来たのか?」と。
レヴィアの経験上冒険者という身分の自分にここまで礼を尽くす貴族など、現セタリッド国王くらいだった。
実の所、相手が噂通りの人物だったとしても余程でなければ依頼を受けるつもりであったレヴィアは、一つ【零落の凶弾】として依頼を受けると言う条件を付けさえしたが、二つ返事で了解し決闘に挑んでいた。
決闘の最中でもレヴィアは考えていた。彼女の中の常識を覆したあの男に、何故あの様な噂が流れているのか。冒険者チームの皆は「演技の可能性も否定できない」と言うが、彼女はそれはないと断言出来た。人一番正義感の強い彼女だからこそ、若くしてハウルド家当主と言う座に就いたあの男の言動は真実だと確信していたからだ。
(では何故、悪い噂が? 単に平民の、上流階級への嫉妬から来たものなのか、それとも・・・)
どんどんと深く考え込むレヴィアだが、唐突に目前に迫った敗北の危機に、強制的に戦闘へと意識を向けさせられる。
しかしそれは、一度にひとつの事にしか集中出来ない彼女にとって、半覚醒状態で戦っているようなものであった。
結果リエナ・レヴィアは、一人の少女の奮闘と、少女に加担する地図が読めなくて道に迷った人に敗北したのであった───
「あぁ、くそ・・・」
静寂に満ち、先の一撃で砂塵の舞う中で、レインは苛立ちを表す。
(武器破壊・・・はぁ…完全に油断した)
ゲーム時代のシステムとして、武器破壊という物がある。
EOWでは3年ほど前、運営が新規プレイヤー救済の為無駄に強力な武具を配布していた。そこで、新規プレイヤー同士が10人程で手を組み、その武具で持って古参プレイヤーをPKして周ると言う事件が起こった事がある。結果、それらの新規プレイヤーが、普通手に入るはずのないアイテムや素材を所持していまいゲームバランスが崩壊したのだ。
その後対策として運営が用意したのが、武器破壊システムである。
後に新規殺しと言われる事になるこれは、公式の説明では
「全ての武器に耐久値を設定し、値が0になると【破壊状態】となり、【修理】するまでその武器は使用不可になる。更に、自分のステータスに合わない武器を使用した場合、耐久値の減少量が大幅に増加し、破壊された場合は、【修理】も出来なくなる【完全破壊状態】となる」
となっており、多くのプレイヤーを悩ませた。更にその後には、
「実力に合った武器でも、あまりにも技量に欠けた使用をすると【完全破壊状態】になる」
と言うある程度のPSをも必要とする仕様に変更してきたのだ。
しかしそのお陰か、大量跋扈していた武器だけは良い新規プレイヤーは鳴りを潜め、ゲームバランスも戻り、一応事態は解決していた。
(やっぱりこの世界にもあるのか。実力に合わない武器の使用、これが原因だと良いけど・・・)
何年もトッププレイヤーとして、1対1では無敗という看板を背負ってきたレインにとって、「あまりにも技量に欠けた使用」が原因だとするとプライドが許さないのである。
レインは【アイテムボックス】から瞬時に取り出した木刀を手に、満身創痍で尚まだ戦う気で立とうとするダルダの元へ向かう。
様々な弱体化を自身に掛けてはいるが、レインの本気の一撃を受けて尚動けると言うのはそれだけで賞賛されて良い事であり、本気を出してしまったレインからすれば半分自分の負けのようなものである。
ダルダは、人間ならば動くはずの無い程ボロボロに砕けた全身の骨を種族の特権にものを言わせて有り得ない速度で治し、立ち上がる。
しかし直ぐに膝を着くことになった。
先程のレインによる一撃で粉砕された全身の骨はあらかた治りつつあるが、その衝撃は脳へ甚大なダメージを与え、最早今意識を保っているだけでも奇跡と言える程だ。
「っ…むぅ・・・つ、続き、を──」
「はぁ・・・【完全治癒】【睡眠】」
力尽き、気絶しうつ伏せに倒れたダルダに、レインはため息混じりに魔法をかける。
『・・・勝者、レイン・グレスティアァァァ!!!そして、ハウルド家とレクウェル家の決闘は、最後に逆転し、三勝二敗でレクウェル家の勝利となります!!』
ダルダの戦闘不能を察したアナウンスはレインとレクウェル家の勝利を宣言し、決闘はスラグディア中に響く程と共に、アリサの勝利で幕を閉じたのだった───
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