ガチャで爆死したら異世界転移しました
人竜戦争 ⑨ 開戦
「皆さん!落ち着いてください!!」
スラグディア南門にごった返し、すぐにでも暴動を起こしてしまいそうな市民達に、リーナは必死に叫ぶ。そのそばには、同じく勇者のキリアとサリア、そしてカイルもいた。しかし市民たちは止まらない。
「落ち着いていられるか!!俺は聞いたぞ!?もうこの街のすぐ側に竜族の大軍が押し寄せているんだろ!?なのになんでまだ冒険者達はこんなところにいるんだよ!!」
今は避難しているはずの市民たちが南門にいる理由とは、これだった。昼頃に警報がなってから結構な時間が経っているにも関わらず、戦闘音が聞こえてこないことに疑問を持った一部の市民たちが、冒険者を急かしに来たのだ。事実、そんな状況になってもおかしくない程の時間は経っている。
「そうだ!!国の民を守る為にいる冒険者が なぜ何もしていないのです?!」
「こんな所にいたって我々を守れないではないですか!!」
そんな声がそこら中から聞こえてくる。そんな人々の顔は、ひとつも余りなく不安と焦りに染められていた。
「ど、どうしようサリア。このままじゃ不味いよ・・・」
オロオロとしたリーナが、隣にいたサリアに助けを求める。
「はぁ。考える頭を持たない人達というのは本当に滑稽です・・・こんな事をしても何も変わらないことくらい、キリアでも分かりますよ・・・あの人たちの知能はゴブリン以下ですね」
サリアは、市民たちを侮蔑の目で見ながら話す。
「ねぇ?なんかすごい馬鹿にされているような気がするんだけど、私の気のせい?」
「・・・しかし本当に分からないのはカイルです。なぜあの人達に任せて自分たちは何もしないなんて言い出すのでしょう・・・?」
サリアは首を傾げ、何故か腕を組み目を瞑って仁王立ちをしているカイルに視線を向ける。
するとカイルが目を開き、大声で怒鳴った。
「みんな!!聞いてほしい事があるっ!!」
いきなりの大声に、広場が静まり返り、声の主を見る。
カイルは唾を飲み込み、続ける。
「正直に言おう。今回、俺たち冒険者はこの戦いにおいて、何もしない・・・いや、何も出来ない!!何故なら、相手は竜族が少なくとも二百体以上だ、もしまともに戦った場合、俺達は確実に全滅するだろう!!」
カイルの言を聞いた市民たちは、絶望の色を濃くする。
みんな分かってはいたのだ。今国がどんな状況にあるのかを。ただ信じたくないだけで、頭では理解していた。
「しかし心配は無い。もう既に戦いに向かった人達がいる。その人達が、この戦いを終わらせてくれる」
「そ、そんな話信じられるわけが・・・!」
誰かが絞り出すような声で言った。
「・・・信じてくれなくともいい。ただ、安心さえしてくれれば、その人達は僕なんか比べられないくらい強いのだから・・・」
そんな時だった。突如カイルの後ろ、つまり城壁の外が輝き出し、微かに朱色に染まった空を覆うほどの、鮮やかな紺色の魔法陣が生成された。
その場にいた一人残らず全員が、呆気に取られ空を見上げる。
「・・・綺麗・・・」
誰かが無意識に、そう零した。
「・・・そろそろかな?」
召喚魔法の詠唱を終え、その辺に地面から突き出ていた岩に座って待っていたレインが呟いた。
先程までは赤と黄であった魔方陣は、今は影より黒く、輝いていた。
「主様、竜族達に動きがあります。恐らく進軍を開始したのかと」
天眼で竜族達を監視していたルーナが報告する。
「りょーかい・・・お、出てきた」
そう言うレインの視線の先では、まさに魔法陣の中に2体の悪魔が出現しているところだった。
一方は三メートルはあるかという巨躯に、左右二対の武骨な太い腕。そして頭部には、赤く光る四つの眼がある。
そしてもう一方は先程とは正反対で、そこまで背が高くはなく、引き締まった肉体に長い白髪。一瞬人間とも思えるほど普通だ。が、しかし背中から生えた、これまた左右二対の漆黒の翼が明らかに彼が人間ではないと物語っていた。
レインは二柱の悪魔に近づき、自らの掌を切ってその手を伸ばす。
やがて傷から流れ出た血は指を辿り、魔法陣の上に落ちた。
途端に魔法陣が一層光り輝き、消えた。
「よし。これで召喚は完了っと」
レインはメア達の方へと向き直り、続ける。
「じゃあ、今回の・・・作戦?を説明するよ」
4人は主の言を一言も聞き逃さまいと、一瞬で「聞く姿勢」に入った。
説明なんてしている暇があるのかと思うかも知れないが、竜族達が飛びながら進軍してきているとしても、レイン達がいるところまでは10分はかかるだろう。その位、この平野は広いのだ。
「と言っても簡単だよ。まず僕達は3つの組に分かれる。内訳は、紅華、ルーナ、それと召喚した【傲慢】で一組。メア、サラ、【憤怒】で一組。そして、僕だ。手順としては、まず僕が右側の陣に何か派手な魔法を打ち込み、それに紛れてメア達の組が転移で左側の陣の後ろに移動します。多分僕の魔法で一旦右側は動かなくなるので、二組で左側を前後から挟み撃ちしてください。その間僕は正面の敵でちょっと実験と、やることをやっておきます。あ、それぞれの組の戦い方自体は任せるからね。で、ある程度数を減らしたらメア達の組がまた転移をして、右側に追い打ちを。後は、紅華達の組と僕とで正面の敵に突っ込みましょう・・・こんな感じでいいかな?」
久しぶりの多数対多数?の戦闘ができるとあって、レインも少しばかり興奮していた。
「・・・流石は主様、やはり私などではそのような完璧な作戦は到底思いつきませんでした・・・」
メアがそう賞賛し、紅華とルーナは何故か涙目でレインに羨望の眼差しを向ける。
「お、おう・・・ありがとう・・・?」
ここまで褒められるとは思っていなかったレインは少し戸惑ってしまう。しかし流石にもうそろそろ時間が無いので、レインは手っ取り早く始めることにした。
「さて、じゃあ始めますか!」
レインのその声に、メア達と召喚した悪魔達が、戦闘態勢に入る。
レインは魔法の詠唱を始める。
「万物を呑む漆黒よ、天地を薙ぐ激流よ。比類なきその暴力に対するは、天に仇なし堕天の使徒なり。汝、此の魔を供とし、彼の者共全てを掻き毟れ・・・【嫉妬の鉤爪】」
瞬間、空にも届く巨大な魔法陣が生成される。
それがこの戦いの、開戦の合図となった。
はい。前回の訂正です。戦闘に入ります。なんて書いていましたが、余裕で間に合いませんでした。すみません。正しくは開戦まで行きます。ですね・・・・・・なんだかここでは毎回「すみません」と書いているのではないでしょうか?
まぁその話は置いておいて。私が書きたかったのは、「戦闘に入ります」ではなく、「開戦します」となってしまいました、ということです。
・・・・・・えー、すみませんでした・・・。
スラグディア南門にごった返し、すぐにでも暴動を起こしてしまいそうな市民達に、リーナは必死に叫ぶ。そのそばには、同じく勇者のキリアとサリア、そしてカイルもいた。しかし市民たちは止まらない。
「落ち着いていられるか!!俺は聞いたぞ!?もうこの街のすぐ側に竜族の大軍が押し寄せているんだろ!?なのになんでまだ冒険者達はこんなところにいるんだよ!!」
今は避難しているはずの市民たちが南門にいる理由とは、これだった。昼頃に警報がなってから結構な時間が経っているにも関わらず、戦闘音が聞こえてこないことに疑問を持った一部の市民たちが、冒険者を急かしに来たのだ。事実、そんな状況になってもおかしくない程の時間は経っている。
「そうだ!!国の民を守る為にいる冒険者が なぜ何もしていないのです?!」
「こんな所にいたって我々を守れないではないですか!!」
そんな声がそこら中から聞こえてくる。そんな人々の顔は、ひとつも余りなく不安と焦りに染められていた。
「ど、どうしようサリア。このままじゃ不味いよ・・・」
オロオロとしたリーナが、隣にいたサリアに助けを求める。
「はぁ。考える頭を持たない人達というのは本当に滑稽です・・・こんな事をしても何も変わらないことくらい、キリアでも分かりますよ・・・あの人たちの知能はゴブリン以下ですね」
サリアは、市民たちを侮蔑の目で見ながら話す。
「ねぇ?なんかすごい馬鹿にされているような気がするんだけど、私の気のせい?」
「・・・しかし本当に分からないのはカイルです。なぜあの人達に任せて自分たちは何もしないなんて言い出すのでしょう・・・?」
サリアは首を傾げ、何故か腕を組み目を瞑って仁王立ちをしているカイルに視線を向ける。
するとカイルが目を開き、大声で怒鳴った。
「みんな!!聞いてほしい事があるっ!!」
いきなりの大声に、広場が静まり返り、声の主を見る。
カイルは唾を飲み込み、続ける。
「正直に言おう。今回、俺たち冒険者はこの戦いにおいて、何もしない・・・いや、何も出来ない!!何故なら、相手は竜族が少なくとも二百体以上だ、もしまともに戦った場合、俺達は確実に全滅するだろう!!」
カイルの言を聞いた市民たちは、絶望の色を濃くする。
みんな分かってはいたのだ。今国がどんな状況にあるのかを。ただ信じたくないだけで、頭では理解していた。
「しかし心配は無い。もう既に戦いに向かった人達がいる。その人達が、この戦いを終わらせてくれる」
「そ、そんな話信じられるわけが・・・!」
誰かが絞り出すような声で言った。
「・・・信じてくれなくともいい。ただ、安心さえしてくれれば、その人達は僕なんか比べられないくらい強いのだから・・・」
そんな時だった。突如カイルの後ろ、つまり城壁の外が輝き出し、微かに朱色に染まった空を覆うほどの、鮮やかな紺色の魔法陣が生成された。
その場にいた一人残らず全員が、呆気に取られ空を見上げる。
「・・・綺麗・・・」
誰かが無意識に、そう零した。
「・・・そろそろかな?」
召喚魔法の詠唱を終え、その辺に地面から突き出ていた岩に座って待っていたレインが呟いた。
先程までは赤と黄であった魔方陣は、今は影より黒く、輝いていた。
「主様、竜族達に動きがあります。恐らく進軍を開始したのかと」
天眼で竜族達を監視していたルーナが報告する。
「りょーかい・・・お、出てきた」
そう言うレインの視線の先では、まさに魔法陣の中に2体の悪魔が出現しているところだった。
一方は三メートルはあるかという巨躯に、左右二対の武骨な太い腕。そして頭部には、赤く光る四つの眼がある。
そしてもう一方は先程とは正反対で、そこまで背が高くはなく、引き締まった肉体に長い白髪。一瞬人間とも思えるほど普通だ。が、しかし背中から生えた、これまた左右二対の漆黒の翼が明らかに彼が人間ではないと物語っていた。
レインは二柱の悪魔に近づき、自らの掌を切ってその手を伸ばす。
やがて傷から流れ出た血は指を辿り、魔法陣の上に落ちた。
途端に魔法陣が一層光り輝き、消えた。
「よし。これで召喚は完了っと」
レインはメア達の方へと向き直り、続ける。
「じゃあ、今回の・・・作戦?を説明するよ」
4人は主の言を一言も聞き逃さまいと、一瞬で「聞く姿勢」に入った。
説明なんてしている暇があるのかと思うかも知れないが、竜族達が飛びながら進軍してきているとしても、レイン達がいるところまでは10分はかかるだろう。その位、この平野は広いのだ。
「と言っても簡単だよ。まず僕達は3つの組に分かれる。内訳は、紅華、ルーナ、それと召喚した【傲慢】で一組。メア、サラ、【憤怒】で一組。そして、僕だ。手順としては、まず僕が右側の陣に何か派手な魔法を打ち込み、それに紛れてメア達の組が転移で左側の陣の後ろに移動します。多分僕の魔法で一旦右側は動かなくなるので、二組で左側を前後から挟み撃ちしてください。その間僕は正面の敵でちょっと実験と、やることをやっておきます。あ、それぞれの組の戦い方自体は任せるからね。で、ある程度数を減らしたらメア達の組がまた転移をして、右側に追い打ちを。後は、紅華達の組と僕とで正面の敵に突っ込みましょう・・・こんな感じでいいかな?」
久しぶりの多数対多数?の戦闘ができるとあって、レインも少しばかり興奮していた。
「・・・流石は主様、やはり私などではそのような完璧な作戦は到底思いつきませんでした・・・」
メアがそう賞賛し、紅華とルーナは何故か涙目でレインに羨望の眼差しを向ける。
「お、おう・・・ありがとう・・・?」
ここまで褒められるとは思っていなかったレインは少し戸惑ってしまう。しかし流石にもうそろそろ時間が無いので、レインは手っ取り早く始めることにした。
「さて、じゃあ始めますか!」
レインのその声に、メア達と召喚した悪魔達が、戦闘態勢に入る。
レインは魔法の詠唱を始める。
「万物を呑む漆黒よ、天地を薙ぐ激流よ。比類なきその暴力に対するは、天に仇なし堕天の使徒なり。汝、此の魔を供とし、彼の者共全てを掻き毟れ・・・【嫉妬の鉤爪】」
瞬間、空にも届く巨大な魔法陣が生成される。
それがこの戦いの、開戦の合図となった。
はい。前回の訂正です。戦闘に入ります。なんて書いていましたが、余裕で間に合いませんでした。すみません。正しくは開戦まで行きます。ですね・・・・・・なんだかここでは毎回「すみません」と書いているのではないでしょうか?
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