ガチャで爆死したら異世界転移しました

ひやし

会いに来ました

セタリッド国王に会いに行くと紅華に伝えたあとは、早かった。もともと紅華は僕が国王に会いに行くと確信していたらしく、すぐにギルド長の部屋を出発し、王城まで案内された。というかもう国王がいるという部屋の前まで来ている。
入城の手続きなどで少し待たされると思っていたが、驚くことに城の警備らしき兵達は紅華を見た途端に道を開け、微動だにしなくなるのだ。いわゆる顔パスというやつである。・・・なんか悔しいな。それに、紅華を見る兵達の目の輝きが追加ダメージを与えてくる。

「陛下。私です。入りますよ」

「え!?もう来たの!?ああいや。・・・うむ。入るが良い」

紅華がギルド長の部屋よりも大きな扉をノックし、了承を得てから扉を開ける。

思ったが、ギルド長とはいえ「私です(キリッ)」で国王のいる部屋に入れるとは、紅華はこの国でも結構偉かったりするのだろうか?それになんか行動の全てが洗練されていて無駄がないというか、かっこいいし。…いや、設定したの僕だけどさ。
ゲーム時代ではサポートキャラクターはただのプログラムで、性格や仕草なんてあってないようなものだったから、あまり気にしていなかったが・・・こうしてリアル・・・に見てみると、少し嫉妬してしまうな。設定したの僕だけどさ!?

過去の自分へ賞賛と少しばかりの怒りを送りながら、僕は部屋へと入った。 

今度の部屋はきちんと扉に見合って広かった。立派で繊細な装飾がなされた柱に高い天井、ふかふかの赤い絨毯。ガラス製なのか板が透けている縦長の巨大な机を、幾つもの椅子…と言うよりソファが囲んでいる。そして国王と思しき白髪のおじさん(おじいさん?)1人が一番奥の椅子に座っている。てっきり衛兵がびっしりいて暑苦しいところなのかと思っていたが、どちらにしろ落ち着かないことこの上ない場所だった。

「陛下。お連れしました」

紅華はやはり慣れているのか、躊躇いもなしに進んでいく。・・・なんか緊張してきたぞ?

「うむ。先ずは座ってくれたまえ。場所はどこでも構わない」

「「「「失礼します」」」」

「し、しちゅれいします」

何早速噛んでるんだよ僕!!椅子に座るだけだぞ!?
大体、そんなに緊張することは無いんだ。ズノワ大森林の事は、黒竜を消したという事しか伝わっていないはずなんだから!・・・よし、だんだん良くなってきた。

因みに座っている順は、国王から見て左側に紅華、僕、サラ、メア、ルーナだ。

「では、紅華殿。そなたの主というのは、どなたかな?」

おじいさ…国王が、僕達の顔を順番に見ていく。・・・何故か僕とサラの時だけ「なんで子供がこんなところに?」みたいな目で見てきた。こっち見んな。

「はい。こちらが我が主、レイン・グレスティアです」

紅華が僕を紹介する。

「え? …ハッハッハ。紅華殿、冗談は・・・」

途端、僕の左側からがとてつもない程の殺気を感じた。多分メアだろう。国王もそれに気付いたのか、

「ごほん・・・お主がレイン・グレスティア殿であったのだな。失礼した」

「いえ。えっと、お気になさらず?」

国王と会話するのにどのような言葉を使えばいいかわからないので、つい疑問系になってしまった。

「知っておるだろうが、私がこのセタリッド国の国王、ゼールド・リグディ・ル・セタリッドである。此度お主らを呼んだのは他でもない、ズノワ大森林の一件についてだ。黒竜が飛来し、それをグレスティア殿が消滅させたことは報告を受けた。私が聞きたいのはどうやって黒竜を消滅させたのか、お主がどれ程のを持っているのか、そして…その力を我が国の為に使ってくれるのか、という事だ。勿論、その場合の報酬も用意してある。何なら、報酬は先払いということでも構わない」

意外に直球な質問だな、もっとこう…遠回しに聞いてくるのかと思ったのだが。まぁ、どちらにしろ僕の答えは決まっている。

「まず、黒竜を消滅させた方法は単なる魔法です。そして…すみませんが、二つ目の質問に答えることはできません。あと、僕らがこの国のために力を振るうことはないでしょうね」

「それは、紅華殿を含めた全員が、という事か?」

国王が苦虫を噛み潰したような顔で言う。

僕が駄目ならせめてほかの誰か一人でも、か。思わぬ収穫だったが、これでこの世界の生物の強さの基準はほぼ分かったな。黒竜如きを単独で倒せる戦力さえこの国では希少、又は居ないのだろう。現に、確実に黒竜を討伐できると分かっている僕当人でなくても、それに順ずる強さを持っているであろうメア達にさえ助力を求めて来たのだし。
そして報酬だ。アイテムボックスが使えることがわかったが、この世界でしか無いアイテムとかだったら欲しい。…うん。報酬によっては考えなくもないが、しかし・・・

「紅華は今まで通りギルド長という立場でなら協力できるでしょうが、他の三人は無理だと思ってください」

「・・・そうか。・・・分かった。無理を言ったようですまない・・・」

え?なんでそんな絶望したような顔になるの?・・・さては何か問題が起きてて僕達の力をあてにしていたとかなのかな。んー・・・はぁ、しょうがないか。

「ですが、僕達は一応冒険者なので、ギルドに張り出されているクエストから割の良い報酬のもの・・・・・・・・・を選びます。そんなものですから依頼人なんて気にしない・・・・・・・・・・・んですよね…(チラッ)」

「あぁ、私は二度とないチャンスを逃してしまったのか・・・国王失格だ・・・」

って聞いてないし!え!?なんでこの人いきなり自分の世界に入っちゃってるの!?自分で言うのもおかしいが、今のセリフ聞かれてないなんてすっごい恥ずかしいんだけど!?あぁもう!!

「セタリッド王!!」

「は、はい!?」

少し大きい声で呼ぶと、国王はびっくりして僕を見た。

「これで最後ですよ!?僕達は冒険者なので!報酬次第では!依頼として・・・・・!力を貸すことはできるでしょうと言ったんです!」

「・・・・・・それは本当ですか!?あ、いや、本当か!?」

一瞬脳の整理が付かなかったのか反応が遅れたが、理解してもらえたようだ。
口調が変わってしまったのは聞かなかったことにしよう。部屋に入る時もそうだったので、その口調が素なのだろう。

「話はこれで終わりですね?では、僕達はこれで失礼します。あと一応言っておきますが、僕達は冒険者として・・・・・・依頼を受けるだけです。間違えても、この国の戦力・・・・・・などと考えないでくださいね?」

僕は席を立ち、扉の方へと歩き出す。

国王に最初に言われた、この国のために力を振るうことはしない。何故なら、僕はいろんな国を回ってこれからを過ごしていきたいと考えているからだ。この世界がなんなのか、なぜ僕がこの世界に来てしまったのか。そして脅威の存在の可能性も・・・ゲームでは対個の戦闘で一度も負けたことはないとしても,考えておくべきだろう。そんなこんなで、セタリッド国の戦力になるわけにはいかない。
しかし、国の括りがない独自の組織を確立している冒険者として、セタリッド王という依頼人から依頼を受けるのならば問題は無い。まぁ、どこかの国を侵略してくれ、みたいな依頼は流石に受けられないが。

「・・・感謝する。本当に、有難う」

一国の王がそんなことを言ってもいいのかと思うが、人の感謝を無下にするのも気分が悪いし、別にいいか。

僕は振り向き、

「では、僕が満足するような割の良い・・・・依頼をお願いしますね、国王様?」

そう言って部屋をあとにした。





今回で前回出てきたドラゴンとの戦闘まで持っていこうと思ったのですが、予想外に長くなってしまいました。すみません。次回には辿り着くと思います。

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