最弱の異世界転移者《スキルの種と龍の宿主》

tasyun

第六話 適正魔法の復活?

「…知らない天井だ」

そんな言葉をいい、俺は目を覚ます。
昨日の余った毛皮に再び魔法で火をつけてから、莅戸芽を起こす。

「お~い、起きろ莅戸芽。朝か分からないけどそろそろ起きろ」
「ん…あと五日……」
「寝ぼけてないで起きろ」

そんなこんなで俺は莅戸芽を起こす。

「……知らない天井だ…」
「わかったわかった、そのネタは先に俺がやったからいいよ。とりあえず、おはよう」
「ん、おはよう」

さて、今日は何をするか。
とりあえず、ここからは出ずに魔法と木の研究でもするか。

「よく寝れたか?」
「うん、意外と毛皮が暖かかった」
「そりゃ、良かった。俺は今日この穴の場所からは出ずに魔法と木の研究をするつもりだけど、莅戸芽はどうする?」
「私はこの空間結構広いし、それの探索と魔力だけでなにかできないか探してみる」

お互いにやることを決めて、お互いの動きを確認する。相手の動きを知ってないと、この前みたいなのがいきなり来たら困る。

俺は莅戸芽を目の隅に映しながら、魔力を熾す。火の魔法は出る。水は出ない、自然も何も起こらない、光も出ない、闇も出ない。分かってはいたけど、火の適正以外は奪われたままだ。

う~ん、火だけでやれる事を考えよう。この世界の魔法は、魔法名などを唱えなくてもイメージ次第でいくらでも応用が効くからな。

とりあえず、今できる火の魔法の最大出力を調べるか。魔力を熾して火を出す、手のひらサイズはやったから顔ぐらいの大きさ、まだいける。次は、上半身ぐらいの大きさ、余裕でいける。このまま、どんどん大きくしてみる、全身サイズ、二倍三倍と火が膨れあがってゆく。
だいたい、教室ぐらいまで大きくして魔力がなくなった。

俺は唖然とたっている。まさかこんなに大きくできるとは思ってもいなかった。城にいたときはどんなに魔力が余っていようとも、自分の部屋以上になることは無かった。けれど、今は魔力さえあればまだまだ大きくできそうだ。

範囲や出力は、適正で大体が決まる。出力は適正があまりなくても、範囲を一点に集めれば出力は上がる。反対に出力を抑えて、魔力を範囲優先で熾せば出力は少なくなるが、範囲は広がる。そして、適正はいくらどんな特訓をしても衰えたり、適正が上がったりはしない。

だが、今やった魔法は出力重視で範囲は決めていない。つまりフル出力で、あれだけの範囲に魔法を当てられる。

少し時間が経ち、我に返る。

(おいおい、奪われた適正が帰ってくるというか、パワーアップして復活している。……いや、適正は帰ってきていないのかもしれない。新しく適正が出来たのかもな。なんてったって、地上にいた時よりパワーアップしてるからな)

遠くに居た莅戸芽が近づいてくる。

「お~い、今の炎って灰利君の魔法?すごいね、そんな威力が出たんだ」
「まあ、俺の魔法だけど地上にいた時はこんな出力は出なかった」
「じゃあ、適正が帰ってきた訳じゃ無いんだ。」

適正は時間が経てば帰ってくる、ということではないことにガッカリしていた。

(どうしよう、することがなくなった。木の研究があるけど、研究と言っても単純にただあの木を食べるだけだし、)

魔力がなくなった以上魔法が使えない。木を食べるのは、寝る前じゃないと痛くて動けなくなる。

「やることがなくなった」
「じゃあさ、身体を少し動かしたかったし、少し空手の相手をしてよ」
「いいけど、俺は空手なんか知らないぞ」
「別にいいよ、なんでも。ただ身体を動かしたいだけだから」
「わかった」

俺たちは準備運動を少ししてから、軽く当たらない程度に乱取りを始める。

莅戸芽は空手と地上で習った体術の混合技、俺は地上で習った体術は片腕しかないのでできず、めちゃくちゃな攻撃をしている。







「いや~、良い汗かいた!!」
「はぁ、はぁ、はぁ、お前、片腕しかない俺に、腕の無い方ばかり攻撃してくんなよ!」
「だって、アレでしょ?相手の弱点をつくのは戦いの基本だし」
「そうは言ってもな~」

これで俺は完全に魔力も体力も全て出し切ったわけだ。
立つ元気もない俺に、莅戸芽はなにか渡してくる。

「ん、」
「おい、まさか今これを食えと?」
「そう、この部屋を見たら五角形になっていてその隅に木が生えてた」
「なんで、そんな大事なことを先に言わないんだよ!!」
「言う前に動けなくして、食べさせようかと。木の研究するって言ってたし」

つまり、すべて計算通りだったってわけか。
くっ、策士め!
どうせ動けないし、食べるしかないんだけどな!

「早く食わせろ、体が動かないんだから」
「食べるの?」

なんで、そんなに不思議な目で見てるんですかね!?
そりゃあ、違う木だから何があるか分からないけどさ!!

「たぶん、普通の木でも食っても大丈夫だろ」
「わかった。灰利君ならできる、ふぁいとっ」

どこかの白い妹のようなセリフを言い、セリフとは裏腹に俺の口に木片を突っ込んでくる。

食うしかないので仕方なく口に入れるが、最初の木と同様にものすごく硬い。かなりの時間噛んでからやっと飲み込む。

「どう?」
「ぐっ、」

飲み込んで数秒経つと、最初の木と同じ痛みが俺を襲う。

俺は痛みでのたうち回る。その様子を見て、莅戸芽が「あわあわあわ」と声に出しながらものすごく慌てている。こういう面は可愛いんだがなぁ。

最初の木と同じように少し経つと痛みが引いていく。そして、同じようにダメージや乱取りでできた小さな怪我や、魔力が回復している。

「っはあ。やっと痛みが収まった」
「はぁ、良かった無事で」

元はと言えば、こうなる原因を作ったのはお前だろ、と言いたかったが次の乱取りが怖くなるので何も言わない。

「適正は?」
「そうだな、水は出ない、自然も何も起こらない。おっ、光った。今度は光だったみたいだ。」
「明かり確保できた」
「人を照明みたいに言うな、でも目も暗さに慣れてきてたけど、やっぱり明かりはあった方がいいな」

手に魔力を熾す。

ーーーカッーーー

「ぐっ、目がぁあ、目がぁあ」
「灰利君、あんたどんだけ魔力を熾してんの!?」

その後は、無事目が戻って昨日と同じように床に入った。






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これからもペースをできるだけ落とさないように頑張ります。


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  • ショウ

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    1
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