東方疑心録
お兄ちゃん 前編
それは朝食の席でのことだった。
なんとか難を逃れて風呂から上がった剣は霊夢達の待つ食卓へと向かった。
その時気づいたが、どうやらここの風呂場は脱衣場が男と女で分かれているらしい。それなのになぜ風呂は混浴なのか謎である。
「遅いじゃない剣。待ちくたびれたわよ」
「ごめんごめん」
顔を出すと、霊夢からジト目で睨まれる。
「なにかあったの?」
レミリアにそう聞かれるも、本当のことを言うわけにもいかないので適当に誤魔化しておく。
「いや、ちょっと迷っただけだよ」
「そう?ならいいけど」
レミリアはその答えに満足したのか食事に向き直るが、フランだけはこちらを見てニヤニヤしている。
「(あれ?なんか嫌な予感が…)」
剣はそう思いつつ食事を始める。
そして、朝食を終えて解散しようとするとフランに声を掛けられた。その内容が
「剣、あとで部屋に来て」
というものだった。始めは怪訝に思った剣だったが、霊夢にチクられでもしたら大変なのでここは素直に従うことにする。
まぁ、天使フランなら大丈夫だろうと、この時剣は思っていた。
「お、来たね」
「まあね」
剣は今、フランの部屋にいた。フランの部屋にはあまり物は置いておらず、ぬいぐるみがいくつかあるだけだった。
「それで?何のよう?」
「フフフ、もちろんお風呂のことだよ」
やっぱりかー、と剣は思った。それ以外ないだろうとは思っていたが。
「あれは事故でな…」
説明しようとした剣をフランが手で制す。
「それは分かってるよ。剣がそんなことする人じゃないことくらい分かってる」
「そ、そうか?」
なんだろう。嬉しい。
「それでね、事故とはいえ私達の風呂を覗いたでしょ?」
「いや、覗いたもなにも、入ってたのは僕が先で…」
「細かいことはいいの」
「いや、細かくないから。重要だろ。むしろそこが一番重要なことまである」
「もしそれを霊夢や咲夜が知ったらどうなるかなー?」
フランは剣の言葉を無視して話し続ける。そんなフランの瞳は怪しく光っていた。
そして剣はフランが何を言いたいのかを理解する。
「………何が望みだ?」
フランは覗きをネタに剣を揺する気なのだ。
「ふふ、察しがいいね。そうだねぇ…じゃあ………」
剣は固唾を飲んでフランの言葉を待つ。フランの望みだ。命の一つや二つなくなるかもしれない。
そんな剣の不安を見透かしているかのようにフランは笑い、こう言った。
「1日、私のお兄ちゃんになって!!!」
「…はぁ?」
思いもしないフランの言葉に剣はすっとんきょうな声を上げるのだった。
なんとか難を逃れて風呂から上がった剣は霊夢達の待つ食卓へと向かった。
その時気づいたが、どうやらここの風呂場は脱衣場が男と女で分かれているらしい。それなのになぜ風呂は混浴なのか謎である。
「遅いじゃない剣。待ちくたびれたわよ」
「ごめんごめん」
顔を出すと、霊夢からジト目で睨まれる。
「なにかあったの?」
レミリアにそう聞かれるも、本当のことを言うわけにもいかないので適当に誤魔化しておく。
「いや、ちょっと迷っただけだよ」
「そう?ならいいけど」
レミリアはその答えに満足したのか食事に向き直るが、フランだけはこちらを見てニヤニヤしている。
「(あれ?なんか嫌な予感が…)」
剣はそう思いつつ食事を始める。
そして、朝食を終えて解散しようとするとフランに声を掛けられた。その内容が
「剣、あとで部屋に来て」
というものだった。始めは怪訝に思った剣だったが、霊夢にチクられでもしたら大変なのでここは素直に従うことにする。
まぁ、天使フランなら大丈夫だろうと、この時剣は思っていた。
「お、来たね」
「まあね」
剣は今、フランの部屋にいた。フランの部屋にはあまり物は置いておらず、ぬいぐるみがいくつかあるだけだった。
「それで?何のよう?」
「フフフ、もちろんお風呂のことだよ」
やっぱりかー、と剣は思った。それ以外ないだろうとは思っていたが。
「あれは事故でな…」
説明しようとした剣をフランが手で制す。
「それは分かってるよ。剣がそんなことする人じゃないことくらい分かってる」
「そ、そうか?」
なんだろう。嬉しい。
「それでね、事故とはいえ私達の風呂を覗いたでしょ?」
「いや、覗いたもなにも、入ってたのは僕が先で…」
「細かいことはいいの」
「いや、細かくないから。重要だろ。むしろそこが一番重要なことまである」
「もしそれを霊夢や咲夜が知ったらどうなるかなー?」
フランは剣の言葉を無視して話し続ける。そんなフランの瞳は怪しく光っていた。
そして剣はフランが何を言いたいのかを理解する。
「………何が望みだ?」
フランは覗きをネタに剣を揺する気なのだ。
「ふふ、察しがいいね。そうだねぇ…じゃあ………」
剣は固唾を飲んでフランの言葉を待つ。フランの望みだ。命の一つや二つなくなるかもしれない。
そんな剣の不安を見透かしているかのようにフランは笑い、こう言った。
「1日、私のお兄ちゃんになって!!!」
「…はぁ?」
思いもしないフランの言葉に剣はすっとんきょうな声を上げるのだった。
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