東方疑心録
休憩時間 その3
「はぁ……」
魔理沙はため息をつきながら自宅への道を歩いていた。途中までは箒に乗っていたが、なんとなく歩きたくなったのだ。
「私、なんであんなこと言っちゃったんだろ…香霖だって私のことを想って言ってくれたのに…」
魔理沙は先程の発言をひどく後悔していた。香霖に言われ、無意識の内に心にもないことを言ってしまったのだ。
「私ってば最低なんだぜ…」
そうして歩いている内に自宅についたのだが魔理沙の家の前にだれかがいる。魔理沙はその人に見覚えがあった。
「アリス?」
「あら、魔理沙いたのね。留守かと思ったわ。これ、クッキー焼いたからどうかと思って…って、どうしたの?」
「え?」
「いや、え?じゃなくてなんだか悩んでいることでもあるの?顔に出てるわよ」
アリスは結構魔理沙と長い付き合いだ。魔理沙の表情がわかりやすいこともあるがそれを抜きにしてもきっとアリスは気づいていただろう。
「そうか…」
「………中に入りましょうか」
魔理沙の表情から魔理沙が真剣に悩んでいることを悟ったアリスは魔理沙を中に促す。
「そうだな…」
「それで?一体どうしたの?」
「………」
アリスはそう問いかけるが魔理沙は無言のままだ。
「話したら少しは楽になることだってあるのよ」
「………実はな」
ようやく魔理沙が口を開いた。そして魔理沙は先程の出来事をアリスに打ち明ける。それをアリスは何も言わずに聞いていた。
「………なるほど、大体分かったわ」
「私…真剣にアドバイスしてくれている香霖にひどいこと言っちゃって…最低なんだぜ」
「それで?魔理沙はどうしたいの?」
アリスはそう尋ねる。魔理沙はすぐに
「香霖に謝って…それから…」
答えたがそれを
「それもあるけど、そうじゃないわ」
アリスが遮る。
「え?」
「私が聞いているのは剣のことよ」
アリスの言葉に魔理沙は本日何度目かの絶句をした。
「だから…それは諦めるって…」
「だから、それでもいいの?本当に?後悔しない?」
アリスがまくし立てる。魔理沙はそれに真正面から
「またそれか……永琳と香霖にも似たようなことを言われたんだぜ」
「そう…それで魔理沙は何て答えたの?」
「まったく一緒のことだよ。私は剣を諦める、諦めなくちゃいけないんだ」
「なんで魔理沙が諦めないといけないの?」
次々と質問をぶつけてくるアリス。魔理沙はそれに一つ一つ答えていく。
「なんでって、だから霊夢が先に剣のことをだな…」
「じゃあ、仮に魔理沙が諦めて剣と霊夢がくっついたとしましょう。それでも魔理沙はいつも通り霊夢達と接していられる?」
「それは……」
できると言おうとした魔理沙だが口が動かない。彼女自身も心の奥ではわかっていた、もしそうなったら自分が霊夢達と距離を置くことを。
「できないでしょ?なら、諦めないでアプローチしたらどう?それとも、魔理沙の彼への気持ちはその程度のものだったの?」
「そんなことはない!!!」
魔理沙はそう怒鳴るとうつむいてしまう。
「なんで……」
「ん?」
アリスは思わず聞き返してしまう。そうしなければならないほどに魔理沙の声は小さかった。
「なんで、永琳も、香霖も、アリスも諦めるのを止めようとするんだよ…」
そう言う魔理沙の声は震えていて、床に水滴が落ちる。
魔理沙が泣いているのだ。
「それはね、あなたに幸せになってほしいからよ。」
「………」
魔理沙は何も言わない。
「私や、香霖はあなたと付き合いが長いからあなたがどんな人か分かってるわ。自分よりも他の人のために一生懸命になれるのがあなたよ。これまでは他人のために頑張ってきたんだからそろそろ自分に我が儘になってもいいと思うの。」
「だからって、霊夢が……」
「霊夢なんて関係ないの。霊夢はあなたの恋のライバルなのよ。それに、恋ってのは、相手のことが頭から離れないで、その人のことで胸がいっぱいになるものなのでしょう?」
『まあ、私には分からないけどね』とアリスが付け足す。
「本当にいいのかな?剣のことを好きでいて…」
魔理沙の心はかなり揺れ動いていた。自分の幸せを願ってくれている者がいる、そしてなによりも剣のことが好きだから。
「ええ、自分に正直になってみなさい」
そうアリスが言うと、魔理沙はアリスの胸に飛び込んで、
「私は剣のことが好きで、でも霊夢のことも好きなんだぜ!」
「……うん」
「でも、やっぱり剣のことは諦めきれないんだぜ!好きになっちゃったから…」
「……うん」
「それで…それで………」
そして、魔理沙はアリスの胸の中で涙を流した。溜まっていた、心の奥底の思いをぶちまけたことで感極まったのだろう。
アリスはそんな魔理沙を何も言わずに撫でていた。
「落ち着いた?」
「ああ、ありがとだぜ、アリス」
魔理沙はひとしきり泣いたあと目を赤くして座っていた。
「それで、これからどうするの?」
「香霖のとこに行って謝って、永琳にお礼を言って、それから」
魔理沙はそこで言葉を切る。そして、
「剣を好きでいることにする」
その言葉にアリスは微笑んで頷いた。
それから魔理沙は香霖と永琳のとこへ行き、謝罪と感謝をした。香霖は魔理沙の謝罪に対し、快く許してくれた。そして、自宅に戻った魔理沙は、
「頑張ってみるか………」
そう言って布団に入るのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
投稿が遅れてすみません!
ストーリーを考えるのに時間がかかってしまいました。
それと、次からは本編に戻る予定です。
なるべく早く出せるように努力するので何卒よろしくです。
魔理沙はため息をつきながら自宅への道を歩いていた。途中までは箒に乗っていたが、なんとなく歩きたくなったのだ。
「私、なんであんなこと言っちゃったんだろ…香霖だって私のことを想って言ってくれたのに…」
魔理沙は先程の発言をひどく後悔していた。香霖に言われ、無意識の内に心にもないことを言ってしまったのだ。
「私ってば最低なんだぜ…」
そうして歩いている内に自宅についたのだが魔理沙の家の前にだれかがいる。魔理沙はその人に見覚えがあった。
「アリス?」
「あら、魔理沙いたのね。留守かと思ったわ。これ、クッキー焼いたからどうかと思って…って、どうしたの?」
「え?」
「いや、え?じゃなくてなんだか悩んでいることでもあるの?顔に出てるわよ」
アリスは結構魔理沙と長い付き合いだ。魔理沙の表情がわかりやすいこともあるがそれを抜きにしてもきっとアリスは気づいていただろう。
「そうか…」
「………中に入りましょうか」
魔理沙の表情から魔理沙が真剣に悩んでいることを悟ったアリスは魔理沙を中に促す。
「そうだな…」
「それで?一体どうしたの?」
「………」
アリスはそう問いかけるが魔理沙は無言のままだ。
「話したら少しは楽になることだってあるのよ」
「………実はな」
ようやく魔理沙が口を開いた。そして魔理沙は先程の出来事をアリスに打ち明ける。それをアリスは何も言わずに聞いていた。
「………なるほど、大体分かったわ」
「私…真剣にアドバイスしてくれている香霖にひどいこと言っちゃって…最低なんだぜ」
「それで?魔理沙はどうしたいの?」
アリスはそう尋ねる。魔理沙はすぐに
「香霖に謝って…それから…」
答えたがそれを
「それもあるけど、そうじゃないわ」
アリスが遮る。
「え?」
「私が聞いているのは剣のことよ」
アリスの言葉に魔理沙は本日何度目かの絶句をした。
「だから…それは諦めるって…」
「だから、それでもいいの?本当に?後悔しない?」
アリスがまくし立てる。魔理沙はそれに真正面から
「またそれか……永琳と香霖にも似たようなことを言われたんだぜ」
「そう…それで魔理沙は何て答えたの?」
「まったく一緒のことだよ。私は剣を諦める、諦めなくちゃいけないんだ」
「なんで魔理沙が諦めないといけないの?」
次々と質問をぶつけてくるアリス。魔理沙はそれに一つ一つ答えていく。
「なんでって、だから霊夢が先に剣のことをだな…」
「じゃあ、仮に魔理沙が諦めて剣と霊夢がくっついたとしましょう。それでも魔理沙はいつも通り霊夢達と接していられる?」
「それは……」
できると言おうとした魔理沙だが口が動かない。彼女自身も心の奥ではわかっていた、もしそうなったら自分が霊夢達と距離を置くことを。
「できないでしょ?なら、諦めないでアプローチしたらどう?それとも、魔理沙の彼への気持ちはその程度のものだったの?」
「そんなことはない!!!」
魔理沙はそう怒鳴るとうつむいてしまう。
「なんで……」
「ん?」
アリスは思わず聞き返してしまう。そうしなければならないほどに魔理沙の声は小さかった。
「なんで、永琳も、香霖も、アリスも諦めるのを止めようとするんだよ…」
そう言う魔理沙の声は震えていて、床に水滴が落ちる。
魔理沙が泣いているのだ。
「それはね、あなたに幸せになってほしいからよ。」
「………」
魔理沙は何も言わない。
「私や、香霖はあなたと付き合いが長いからあなたがどんな人か分かってるわ。自分よりも他の人のために一生懸命になれるのがあなたよ。これまでは他人のために頑張ってきたんだからそろそろ自分に我が儘になってもいいと思うの。」
「だからって、霊夢が……」
「霊夢なんて関係ないの。霊夢はあなたの恋のライバルなのよ。それに、恋ってのは、相手のことが頭から離れないで、その人のことで胸がいっぱいになるものなのでしょう?」
『まあ、私には分からないけどね』とアリスが付け足す。
「本当にいいのかな?剣のことを好きでいて…」
魔理沙の心はかなり揺れ動いていた。自分の幸せを願ってくれている者がいる、そしてなによりも剣のことが好きだから。
「ええ、自分に正直になってみなさい」
そうアリスが言うと、魔理沙はアリスの胸に飛び込んで、
「私は剣のことが好きで、でも霊夢のことも好きなんだぜ!」
「……うん」
「でも、やっぱり剣のことは諦めきれないんだぜ!好きになっちゃったから…」
「……うん」
「それで…それで………」
そして、魔理沙はアリスの胸の中で涙を流した。溜まっていた、心の奥底の思いをぶちまけたことで感極まったのだろう。
アリスはそんな魔理沙を何も言わずに撫でていた。
「落ち着いた?」
「ああ、ありがとだぜ、アリス」
魔理沙はひとしきり泣いたあと目を赤くして座っていた。
「それで、これからどうするの?」
「香霖のとこに行って謝って、永琳にお礼を言って、それから」
魔理沙はそこで言葉を切る。そして、
「剣を好きでいることにする」
その言葉にアリスは微笑んで頷いた。
それから魔理沙は香霖と永琳のとこへ行き、謝罪と感謝をした。香霖は魔理沙の謝罪に対し、快く許してくれた。そして、自宅に戻った魔理沙は、
「頑張ってみるか………」
そう言って布団に入るのだった。
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投稿が遅れてすみません!
ストーリーを考えるのに時間がかかってしまいました。
それと、次からは本編に戻る予定です。
なるべく早く出せるように努力するので何卒よろしくです。
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