魔女の涙が流れる時

ぬべろん

第1.5話 「夕食作り〜ピザ編〜」

ドーリンは、ホコリ臭さを風呂で流し落とし今日の夕食を考えていた。昨日はハンバーグ、一昨日はシチューを作ったからまた違う料理を作らなければ…

この五年間、この家に住み着いてから洗濯、掃除、そして料理をしてきているが、1番ドーリンを悩ましているのはこの献立作りなのである。

1度、ドーリンはエインさんに同じ料理を連続で出したことがある。そしたら「あなたは能無しではないのだから、少しは工夫しなさい」と怒られてしまったのだ。それからは、あまり同じような料理を出さないようドーリンは気をつけているのだ。

キッチンに着き、食べ物を確認する。タンパク質がよく含まれているタパイモ、甘辛く酸味があるカシントマト、ゼルソヤ大陸にしか生存していないモーツァレ牛の乳から作ったチーズ、自然の風味を存分に楽しむことが出来る小麦粉。

ドーリン「この材料なら、今夜はピザを作ろうかな」

そう呟き、ボウルや包丁を用意する。イモの汚れをよく洗い落とし、皮を丁寧に切る。このタパイモの皮は非常に薄く、勢いよく切ると身ごと削ぎ落としてしまうのだ。全てのタパイモの皮を切ったあと1cmずつ輪切りし、ボウルに溜めた水の中に付けておく。野菜がこれだけだとあまりにも見栄えが悪いので、ピーマンのヘタと種を取り除き、これも薄く輪切りをしていく。

本当なら肉もつけたいが昨日ハンバーグを作ったのと、タパイモでタンパク質は間に合ってるので今回は無しにしようと思う。

次は生地作りである。この小麦粉に塩、ぬるま湯を入れ込みかき混ぜる。自然と粉がまとまり始めたら丁寧に揉み、丸い形へと整えていき完成したら布巾をかけて20分程放置をしておく。

その間に石窯を温め、ソース作りをする。カシントマトのヘタを切ったらボウルにいれる。そこに溶かしたチーズを少々、塩と森の綺麗な空気にしか成らないシンビの実を加えてかき混ぜ、充分に混ざりあったら弱火の鍋に入れ込みグツグツと、焦がさないように煮込む。

ドーリンはいい感じに煮込んだソースを1杯すすり味を確認する。カシントマトのいい感じの酸味とシンビの実の甘さが良い感じに調和されていて、ソースとしては完璧であった。

生地も準備できたので上にソースを塗り、タパイモとピーマンを敷いた上からチーズを振りまき、石窯の中へと入れた。ピザ達はゆっくりと大きくなっていき、このキッチンに生地の焼き香りと濃厚なチーズの匂いが覆い尽くす。はぁ、反射的にヨダレが出てしまう…

いい感じに焼けたので石窯から出し、用意した皿に乗せる。そこにはこんがりと焼けた生地の耳とツヤツヤに光っているチーズが。「こいつはいい出来だ」と思いつつ、出来たてのピザをエインさんの所へ早々と届けた。

エイン「あら、美味しそうな匂いがすると思ったらピザを作ったのね」

ドーリン「はい、昨日はハンバーグを食べたので肉の代わりにタパイモを入れました。」

エイン「ほぅ…では、1口」

パクっとピザを1口食べ、味を堪能している。少し間が長いのでもしかして…と思ったが、「あなた!これ最高に上手いわ!特にこのソース、かなり凝ったとみるわ」と褒め言葉を貰った。

ドーリン「本当ですか!ソースにはシンビの実とカシントマト、チーズに塩を入れています」

エインはまた1口頬張り「こんなに美味しいピザありがとう」とドーリンに微笑んだ。

あぁ、エインさんの微笑みだけでお腹がいっぱいだ。

だが、身体は正直でピザを欲しているように腹の音が鳴った。

ドーリン「それじゃ、自分も頂きます!」

4枚しか作らなかったピザはすぐに無くなってしまい、ドーリンは物足りなさを感じながら皿洗いを始めたのであった。

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