罪に追われた少年は異世界で英雄となる

深谷シロ

『宴会』

春になり暖かくなった。僕は魔王であった幼馴染の雄也との戦いを終えた。そしてスキルを使って中央都市へと帰ってきた。


僕は王宮へ直接転移した。そして女王様に話し掛ける。


「戻りました、女王様。」


「はい、おかえりなさい、英雄様。」


女王様は待っていた。この若さで凄いな……。僕は感心させられるばかりだ。どうして19歳でここまで素晴らしい政治が出来るのか。あ、今は20歳になったのか。


「英雄様は……18歳になったのですよね?」


見抜かれていたのだろうか。僕と同じことを考えていたようだ。奇遇だな……。女王様はそれから気付いたように手を叩く。


「あっ!英雄様、街へ降りられて下さい!街では宴会があってますよ。魔王討伐を祝しての宴会です。今日は英雄様がメインの祝い事なのですから急いで行かれてください。」


「分かりました。」


僕は再び転移した。そして街へ行く。


「あっ!えいゆーさま!」


僕は子供の元気な声に微笑み返す。そして手を振ってあげる。それだけで子供は喜んでくれる。子供は慣れている。弟の世話を昔からしていたからだけどね。そういえば弟は今何をしているんだろ……。未練はないけど、それだけが心配だな……。


僕は街の酒場へ行った。そこから騒ぎ声が聞こえていたからだ。間違いなくそこで宴会があっているだろうと思ったのだ。想像通りの光景だった。この世界の人々は疑う心を持っていないのだろうか。それとも英雄を過信しすぎなのか。


そのどちらもだろう。まったく……。何なんだ、この人々は……。


「あ!英雄様、こちらへ!!」


僕は引っ張られて中央の席へ座らされた。何故、抵抗出来ない……。


「「英雄様、おかえりなさい!!」」


だけどこの明るい声を聞くと許してしまうな。僕も返事する。


「うん、ただいま。」


僕はこの世界が好きみたいだ。自由な事がいいのだろうか。違うだろう。恐らく人々の性格だ。全ての人が優しくて素直な心を持っている。ここでは僕の方が悪者みたいなのだ。罪悪感が少し芽生えてしまう。生まれてきた世界が違うから仕方が無い事だが。


僕達は歌い騒いだ。この世界では18歳から飲酒が出来るようになる。だから僕は酒を初めて飲んでみた。最初はむせてしまったが、すぐに美味しいと感じるようになった。ふむ……これが大人の味か。味わったことが無い味だな……。


僕は暫く感慨深い気持ちになっていた。周りからはとても暖かい目線が向けられていた。恥ずかしい。それから歌ってみた。僕はJ-Popなど何曲か歌ってみた。あまり歌は上手くないと思う。だけど大きな拍手に包まれた。お世辞……?


僕は沢山の人達と話した。主な話は魔王との対決の事だろう。勿論、雄也の事は伏せている。僕は記憶喪失という形でこの世界にいるため、転生したなどとは言うことが出来ない。というよりさらに英雄視されそうだから嫌だ。


宴会は一日続いた。夜になると皆は去った。僕は王宮に戻り、女王様に魔王の話をした。そして少し外の空気を浴びたいと王宮の外へ出た。


実際には僕の家を作りに、だ。僕はこの世界に来てから王宮暮らしだけど流石に気が重かった。


自分の家が欲しい。この願いをしたと同時に家は建った。


相変わらず
便利なスキル便利だな


あ、ドヤ顔が決まってしまったようだ。なんか恥ずかしいからやめよう。さて、家でも見て回ろうかな。


家は特に工夫もしていない。日本にありそうな一軒家の家だ。二階建てだ。生前の家と内装がそっくりだ。別に親に恨みがある訳ではないし、家が嫌いな訳でも無い。今日からここに泊まることにしよう。

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