異世界でスペックをフル活用してみます!とりあえずお医者さん始めました!

ぴよ凛子

契約

「……………」
彼を見つめたまま、唖然とした私はぎゅっと思いっきり頬をつねった。

「…痛い…………めちゃくちゃ痛い」
「つねりすぎだ!」
焦ったように彼は私の手を頬から離させ、いつの間に出したのか氷嚢を当てる。それがつねって熱くなった頬をじんわりと冷やして気持ちがよかった。
「そんなに前の姿がよかったか?それはすまなかった、だが、この世界に来るためには魂の新しい依代が必要だったんだ、それが今の君の姿なんだが…」
心配そうに私を見つめる紅い瞳はもう怖くもなんともなく、やはり優しさが滲み出ていた。
私は私だというもやのなかにいる女性をもう一度見た。私が動けばその女性も動く。まるで鏡のよう。だったらもう私でしかないのだ。
「ごめんなさい、嫌とかじゃなくてびっくりして驚いちゃっただけ。心配しないで、もう大丈夫」
私がそう言ってゆるく微笑むと彼は心底安心そうに良かったと呟いた。
まさかこんな美人になるとは思わなかったが、さすが異世界。なんでもありだ。
前の世界の私は、至って普通。贔屓目に見ても中の上。それに今まで仕事にかかりきりで色恋なんか別世界のようだったから自分の容姿なんか気にしたことがなかった。あ、でもそれはこっちの世界にきても一緒のことか。でももらえるものはもらっとこうという、もったいない精神?のようなものが私を元気づけた。
そして私にそっくりの彼をまた見つめる。
「??どうしたんだい?」
「いろいろあって話が脱線してしまったけれど、改めてよろしくね、シグレ」
そう言って私が手を彼に差し出すと、彼、シグレは輝くような笑顔を私に向けて
「あぁ、もちろんさ!」
と言って私の手を握りしめた。
あぁ、この笑顔を見たら世の淑女たちは一瞬でぶっ倒れるなぁ…と私は密かに思った。


一段落してから私たちは近くの椅子に座りなおし、話を続ける。
「そう言えば君の名を聞いていなかったな。いや、というよりもつけていなかったの方が正しいか」
「どういうこと??私の名前なら…」
と、私が自分の名を口にしようとすると、彼はストップと言いたげに私の唇を人差し指で軽く抑える。
「それはいけない。この世界では真名は大切なものだ。君の中に大事にとっておけ。それに僕はすでに君の真名を知っているしな。」
「???どうゆうこと??」
「この世界には君がさっき経験したような"契約"が多く存在する。その種類は主従から隷属、継承と多種多様だ。真名は契約に最も重要なもの。真名が悪用されることだってある。だから不用意に言ってはならないんだ。あと、僕らが今交わした契約は"対"さ。といってもまだ仮契約なんだがな。契約がちゃんとしたものになるには日数が必要なんだ。じゃないと本当の意味で契約は出来ていない。契約は種類によって仕方もバラバラだが、仮契約の日数もバラバラだ。数日のものもあれば、何年も必要とするものもある。あ、仮契約日数を超えれば契約完了って訳じゃないぞ?その期日の間にするべきことを怠らずこなすことで契約は完了するんだ」
「するべきことって?」
「そうだな、いろいろあるが僕らの"対"の契約はお互いの理解度を深めるとこから始まる。対っていうくらいだから、2人で1つ。一蓮托生、運命共同体ともいうか。そのくらいお互いのことを深く理解することが必要さ。この日数に期限はないんだ。」
「え?でもそれじゃあ契約は完了しないんじゃ…」
私が不思議そうにそう言うと、彼はニヤリと笑って
「まぁ、そうだな。実を言うとこの"対"の契約は他人同士がするにはかなり難しい。あえて言うなら双子がまだ子供の時に仮契約をしてから大人になってやっと完了するものだ。期限はないが双子ならお互いを知り尽くしているよいなものだろう?でもそれでもまだ本当の完成とは言えないから対の契約の力は十分に発揮されないがな。それに加えて成功率は極めて低いから、まずやる者はいない。だかな、僕らはちょっとしたズルが許されてるのさ」
ここまで言い終えて彼はパチンとウインクをすると
「長の力を借りるのさ」
と言った。

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