異世界でスペックをフル活用してみます!とりあえずお医者さん始めました!
トランクの主
治療が終わったあと、苦しそうにしていた彼の汗を近くにあったタオルで拭う。
いくら治療をしたとはいえ、まだ完全に治ったわけではない。それにこのあとは疲れによりきっと彼は高熱を出すはずだ。
(「点滴とかもあるのかしら…」)
そう思って辺りを見回す。
彼を治療するのが最優先だったため今まで気にしていなかったが、一体ここはどこなのだろう。
「この家の主はいないのかしら…」
と呟くとふわっとなにかに包まれるような感覚がした。先程の、トランクに吸い込まれた時と同じような。
「んっ………?」
瞬きをし、目を開けた瞬間、目の前に淡い翠色の髪をもつ青年がいた。
「…え??」 
「やぁ、初めまして、可愛らしいご主人様」
涼やかな彼の声音は聞く人の心を穏やかにさせるようだ。
「初めまして…あなたがこの家の主?」
「そうさ、そして君の癒し手の契約者になるものさ」
「…癒し手??」
「あぁ、癒し手というのはまぁ、いわば君の治療の手伝いをする助手みたいなものさ、さっき君は何かが欲しいと思った時すぐにそれが現れただろう?あれ、僕がやったんだ」
「あなたが………?」
私は目を丸くする。自分を癒し手という彼は満足気に頷く。
「僕は君みたいな素敵な人の癒し手になれることがすごく嬉しいよ、長が見つけたのが君でよかった」
そう言ってにっこりと微笑む様はまさに天使のようだ。
「ちょ、ちょっと待って…話についていけないわ…あなたは私のこと知ってるの?」
「もちろん。君は救い手としてこの世界に召喚されたんだ」
「救い手……?」
「救い手っていうのは、癒し手の対になる存在で、まぁ、君の元いた世界でいう、医師のことさ」
救い手と癒し手。このペアが存在することによってこの世界は医療というものがなされるらしい。癒し手は救い手と契約することで救い手の唯一ただ1人の癒し手となれる。ただ、救い手の存在はとても希少。救い手は医療技術に発達しているため、癒し手だけではどうしようもない治療もできる。だが、その医療技術を救い手から救い手に受け継ぐことはとても難しいらしく、救い手の器も必要なため、とても少ないのだ。救い手の存在しない国は流行病が流行したりし、人口は減る一方。それを見兼ねた癒し手の長であるという人が私を異世界から召喚したと癒し手の彼は説明してくれた。
「…なんだか未だに頭の整理がつかないわ」
「まぁ、徐々に慣れてってくれたらいいさ。僕も君のことは出来うる限りサポートさせてもらうから、ね?」
「ありがとう…?でもなぜ私が選ばれたのかしら。私以外にも腕のいい医師なんていくらでもいるでしょうに」
「あれ?君、気づいてなかったのか?」
「ん?何が?」
「君、元の世界で相当な数の仕事こなして場数も踏んでたから、君の医師としての能力は今の君が思ってるよりとても上がってるんだ」
「…え?そうなの…?」
「あぁ、君ここに来る前に久しぶりに家に帰ってきて寝ただろ?あの時君の体はほぼほぼ限界を迎えてた。君は自分の体を酷使しすぎだ、あのままではいずれ君は過労死していただろう」
彼は深刻な顔で私の目を見つめる。
「…毎日仕事に夢中で全然気づかなかった…」
そうだ。毎日朝から夜まで働いてほとんどプライベートの時間なんかなく、しばらく寝ていなかった。確かにいつ倒れていてもおかしくない。
「医者のくせに自分の体調管理も出来ないなんて私は医者失格ね………」
そう言って乾いた笑いをもらす。毎日がんばっているつもりだったけど、どうやら私はダメな方向に進んでいたらしい。
ふと、頭を優しく撫でられる感触がした。
顔をあげると綺麗な翠色の瞳がこちらを優しく見つめていた。
「君はよくがんばったよ。誰にも頼らず、いつも一生懸命毎日生きてた。そんな君を見て、長は君ならこの世界で多くの人を救ってくれるってそう思ったんだ、もちろん僕もそう」
「…あ…………」
一瞬あの人の瞳と彼の瞳が交差した気がした。
大好きだった人。優しかった人。もう会えない人。
久しぶりにあの人に会えた気がした。
そう思った途端、目からボロボロと涙が溢れていた。
「なっ!?!?ど、どうしたんだい!?ほ、ほら泣かないでくれ」
翠の彼はオロオロしながらも優しく私の体をぎゅっと抱きしめてくれた。そして私が泣き止むまでずっと頭を撫でてくれていた。
いくら治療をしたとはいえ、まだ完全に治ったわけではない。それにこのあとは疲れによりきっと彼は高熱を出すはずだ。
(「点滴とかもあるのかしら…」)
そう思って辺りを見回す。
彼を治療するのが最優先だったため今まで気にしていなかったが、一体ここはどこなのだろう。
「この家の主はいないのかしら…」
と呟くとふわっとなにかに包まれるような感覚がした。先程の、トランクに吸い込まれた時と同じような。
「んっ………?」
瞬きをし、目を開けた瞬間、目の前に淡い翠色の髪をもつ青年がいた。
「…え??」 
「やぁ、初めまして、可愛らしいご主人様」
涼やかな彼の声音は聞く人の心を穏やかにさせるようだ。
「初めまして…あなたがこの家の主?」
「そうさ、そして君の癒し手の契約者になるものさ」
「…癒し手??」
「あぁ、癒し手というのはまぁ、いわば君の治療の手伝いをする助手みたいなものさ、さっき君は何かが欲しいと思った時すぐにそれが現れただろう?あれ、僕がやったんだ」
「あなたが………?」
私は目を丸くする。自分を癒し手という彼は満足気に頷く。
「僕は君みたいな素敵な人の癒し手になれることがすごく嬉しいよ、長が見つけたのが君でよかった」
そう言ってにっこりと微笑む様はまさに天使のようだ。
「ちょ、ちょっと待って…話についていけないわ…あなたは私のこと知ってるの?」
「もちろん。君は救い手としてこの世界に召喚されたんだ」
「救い手……?」
「救い手っていうのは、癒し手の対になる存在で、まぁ、君の元いた世界でいう、医師のことさ」
救い手と癒し手。このペアが存在することによってこの世界は医療というものがなされるらしい。癒し手は救い手と契約することで救い手の唯一ただ1人の癒し手となれる。ただ、救い手の存在はとても希少。救い手は医療技術に発達しているため、癒し手だけではどうしようもない治療もできる。だが、その医療技術を救い手から救い手に受け継ぐことはとても難しいらしく、救い手の器も必要なため、とても少ないのだ。救い手の存在しない国は流行病が流行したりし、人口は減る一方。それを見兼ねた癒し手の長であるという人が私を異世界から召喚したと癒し手の彼は説明してくれた。
「…なんだか未だに頭の整理がつかないわ」
「まぁ、徐々に慣れてってくれたらいいさ。僕も君のことは出来うる限りサポートさせてもらうから、ね?」
「ありがとう…?でもなぜ私が選ばれたのかしら。私以外にも腕のいい医師なんていくらでもいるでしょうに」
「あれ?君、気づいてなかったのか?」
「ん?何が?」
「君、元の世界で相当な数の仕事こなして場数も踏んでたから、君の医師としての能力は今の君が思ってるよりとても上がってるんだ」
「…え?そうなの…?」
「あぁ、君ここに来る前に久しぶりに家に帰ってきて寝ただろ?あの時君の体はほぼほぼ限界を迎えてた。君は自分の体を酷使しすぎだ、あのままではいずれ君は過労死していただろう」
彼は深刻な顔で私の目を見つめる。
「…毎日仕事に夢中で全然気づかなかった…」
そうだ。毎日朝から夜まで働いてほとんどプライベートの時間なんかなく、しばらく寝ていなかった。確かにいつ倒れていてもおかしくない。
「医者のくせに自分の体調管理も出来ないなんて私は医者失格ね………」
そう言って乾いた笑いをもらす。毎日がんばっているつもりだったけど、どうやら私はダメな方向に進んでいたらしい。
ふと、頭を優しく撫でられる感触がした。
顔をあげると綺麗な翠色の瞳がこちらを優しく見つめていた。
「君はよくがんばったよ。誰にも頼らず、いつも一生懸命毎日生きてた。そんな君を見て、長は君ならこの世界で多くの人を救ってくれるってそう思ったんだ、もちろん僕もそう」
「…あ…………」
一瞬あの人の瞳と彼の瞳が交差した気がした。
大好きだった人。優しかった人。もう会えない人。
久しぶりにあの人に会えた気がした。
そう思った途端、目からボロボロと涙が溢れていた。
「なっ!?!?ど、どうしたんだい!?ほ、ほら泣かないでくれ」
翠の彼はオロオロしながらも優しく私の体をぎゅっと抱きしめてくれた。そして私が泣き止むまでずっと頭を撫でてくれていた。
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