異世界でスペックをフル活用してみます!とりあえずお医者さん始めました!

ぴよ凛子

治療の際に大きな壁にぶつかりました、ドラゴン壁かな。

私はゆっくりドラゴンに近づく。
ドラゴンを目の前にしても仕事となれば先程のような恐怖は消え失せていた。そして傷の具合を丁寧に確認していく。どうやらドラゴンの腹には随分と大きな槍のようなものが刺されたようだ。それに加えて刃物で抉られたような跡もいくつか見受けられる。これはいくらドラゴンとはいえ、痛いはずだ。
『…どうなのだ、人間よ』
『まぁ、深々と刺さってはいるけれど、とれなくはないわ、ただ少し時間がかかるわ』
『時間か…できるだけ早くせよ。先程まいた人間共がいつ来るかも分からぬ』
『分かったわ、じゃあ動かないでちょうだいね』
そう言うと私は持っていた旅行カバンを漁り、あるものを取り出す。
『…あったわ。ひとまず腕…がどこかわからないけれど出しなさい』
『…なにをするのだ』
『麻酔よ。これをしなければ治療中あなたが激痛に襲われるわ』
『だかしかし、そんなものを刺されれば、我は隙だらけではないか、さては人間、まさかこうやって我をだまそうと…』
『あらそう、痛いのがお好みならそのままやるけれど』
そう言って私はドラゴンの腹に刺さった槍を少しの力で抜こうとする。
『待て待て待て待て!!お前本当に医者なのか!?とても患者にする行いとは思えぬ』
『患者なら医者の言うことくらい素直に聞きなさい』
『ぐっ…だがしかし…』
『別に私はあなたに治療以外のなにかはしないわ、これでも医者よ、患者の命を救う仕事なのよ?』
『あぁ…もうこうなったら致し方あるまい、煮るなり焼くなり好きにせよ!!』
どうやらドラゴンは投げやりになってしまったようだ。
(「やっと大人しくなったわ。でもこのドラゴンにこれだけの麻酔の量は少なすぎるわね、注射器も小さい。これじゃあ麻酔を打っても効かないわ」)
どうしようかとぐるぐる考えていると
『なにをグズグズとしておるのだ。早くせぬか』
とドラゴンが急かす。
(「あぁもういちかばちかね。なんてったってここ異世界だし!」)
そう思った私はドラゴンに問う。
『ドラゴンさん、小さくなれません??』
『……………は??』
思っていた通りの反応が返ってきた。
(「そうよね、当たり前よね、聞いた私が馬鹿だったわ」)
『なんでもありません、今のは忘れてください』
『いや、だがしかし……』
『医者の言うことは黙って聞く』
『……う、うむ』
医者という権利を盾にして黙ってもらった。
(「ドラゴンさんが小さくなるのが無理なら医療器具と私が大きくなるしかないわね、でもそんなことできるわけ……ん?」)
ふと、ひとつあることを思い出したのだ。
この世界に来た時に持っていたトランクのような医療カバン。あれの中身は到底あれに入るはずもないような大量の医療器具に簡易ベッドなどまで入っていたのだ。
(「…あれって使えないかしら」)
もう一度念入りにトランクを調べてみる。
するとトランクの内側のすきまに何やらスイッチのようなものがある。
(「これ、なにかしら」)
ものは試しと押してみる。すると…
「うわ!?!?!?」
急にトランクの中に私とドラゴンは吸い込まれた。

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