異世界でスペックをフル活用してみます!とりあえずお医者さん始めました!

ぴよ凛子

まずドラゴンに出会うって死亡フラグ!?

ひとまず私はこのお花畑を出ようと決心した。
ここにいつまでもいてもなにも変わらない。
だったら人里を探し、泊まれそうな宿を見つけよう。
そう思った私は膝をはらい、いざ歩きだそうとする。
…が。
ドシーン!!!
というものすごい音と共に大きな何かがうえから降ってきた。
「うえ!?!?」
突風が起こり、目も開けられない。しばらくして風がやみ、目を開けると…
「うええ!?!?!?」
思わず変な声を2回もあげてしまった。
というのもそこにはものすごーーく巨大な白いドラゴンが倒れていたのだ。
(「ドラゴンって !!初めて見たってか、これ死亡フラグ!?!?」)
序盤にこんなに大きなドラゴンに会うとは私の運は無さすぎではないだろうか。
(「でもまだ私は死んでない!とりあえずここから逃げよう!!」)
そう思うと私は脱兎のごとく走り出そうとするのだが…
「グゥァァァァグゥッ」
ドラゴンが突如うめく。
(「バレた!?!?」)
そう思って恐る恐る後ろを振り向くとドラゴンは私の方など見ておらず、うずくまって苦しんでいた。よく見ると、ドラゴンの腹の当たりが真っ赤に染まっていた。
血だ。
(「……怪我をしているの…??」)
私がそう思った瞬間。
『…苦しい…腹が痛い…』
なにかの声が聞こえてきた。私の周りにだれかいるのかと辺りを見回すが誰もいない。だが、声は聞こえる。
『早く逃げねば…私は殺される…』
同じ声だ。その時私はなにか直感的にその声がそのドラゴンの声だと分かった。
(『お腹…痛いの…?』)
私が心の中でそう問いかけた瞬間ドラゴンはバッと私がいる方向を一直線に見つめ、驚いたような顔をした。
『…人間がこの私に何の用だ』
ドラゴンはひどく私を睨みつけ、問う。
『別に用なんか、なにもない。苦しんでいるあなたを見つけただけよ』
私はそう答えた。怪我人や病人を相手にすると私はついこの強い口調になってしまう。仕事柄精神がタフでないとやっていけないためだ。いわゆる仕事モードオンというやつだ。
『…なにを言うか!!どうせお前も私を狙ってやってきたのだろう!お前1人など私が殺してやる!!』
ドラゴンは怒気を含んだ声でうなる。
『いやよ、なんでいきなり出会った相手に殺されなきゃいけないのよ。あなた通り魔?それに私を殺したらあなたはこのまま確実にお陀仏ね』
『…………お陀仏とはどういう意味だ』
『死ぬってことよ、傷はまだ浅いように見えるけれどそのまま放置すれば腐って悪化する、そうしてゆるやかに死期が近づいていくわね』
『ならばお前がここにいたとしてなんになる』
『私は医者よ??あなたのその怪我を治せる』
『はっ、どうせそれもはったりだろう、そうやって私を騙すやつが今まで幾人もいたが全部返り討ちにしてやったわ』
『あら、信じないの、残念ね。分かったわ、治療を望まないというのならそれでもいいわ、そういう患者さんもいるものね』
そう言って私はドラゴンから距離をとり、近くの木陰に座る。
『………なんの真似だ』
ドラゴンは訝しげにこちらを見る。
『なんの真似って、患者の最期を看取るのも医者の役目だと私は思うから、あなたの最期を見ててあげる』
『………………………』
ドラゴンはしばらく呆気にとられたように私を見つめ、沈黙した。そして…
『ふ、ふはははは』
笑い出した。
『笑うと傷に響いて死期が早まるわよ』
『っくくくく…ぐっうぁ』
『ほら』
『…変な女だ』
痛みをこらえたあと、ドラゴンは一言呟くと私を黄金に輝く金色の瞳ですっと捉えた。
『おい、女、お前本当にこれが治せるいうのか』
『ドラゴンを治療したことはないけどたぶん大丈夫よ』
『……そうか……』
『あら、治療してもらう気になった?』
『……お前はほかの人間とは少し違うようだと思った。この命もう長くはないのならお前にかけてみるのも一興かと思ったまでだ、ただ治せなかったならばお前をその場で食い殺してやる』
『物騒な殺し方ね。でも患者の願いに医者は応えるものよ』
『…では、私の傷を治してくれ』
『いいわ、でもその代わり…』
『なんだ、やはりあの人間たちが欲する鱗をくれとでもいうのか』
『は?あなたの鱗なんか興味ないわよ、そうじゃなくて私を近くの村かどこかに案内して欲しいの』
『…は?そんなことでいいのか?』
『あなたにはそんなことでも私には重要なことなの』
『…そうか、分かった。いいだろう』
『OK。交渉成立ね』
こうして私はドラゴンの怪我の治療をすることとなった。

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