噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神
111 近江戦線
 死神の身でありながらこの戦場で戦うことを選んだ壱月達は、戦火が迸る最前線へとたどり着いた。
「はぁ…はぁ…やっと着いたぜ、最前線。ここから俺の戦が始まる!」
「何度も言いますけど、無理だけはしないでくださいね。
 あっ!ちょっと…」
「じゃ、俺の援護よろしくな〜」
 壱月は巴音の案じる声を無視し、自分勝手に命令を下して、織田軍と切り結びに行った。
 
 壱月の装備はいたって軽装ではあるが、その腰に下げているものがとてつもなく凶悪だった。
 〈死雨〉、それは死神が創り出した武装の中でも最高傑作と謳われている八つの死絶シリーズのうちの一つだ。
 その刀身には、死の概念が付与されており、斬りつけた物体に必ず死を与える。死絶シリーズ自体、未だ謎が多い為それが本当の力なのかは不明だが、使い方次第では間違いなく最強に至れるはずである。
 そんな凶刃を壱月は振り回し、近江の街に溢れかえる織田の軍勢達を相手取る。
「っしゃああーーーーー!!!」
「はあぁぁあああああ!」
 金属同士がぶつかり合う甲高い音と互いの気迫が街に反響していく。
「せいっやぁーーーー!」
「っはぁ!」
「ぐはっ…」
 大抵の敵を一振りで屠り、少し腕に覚えがあるらしい敵は得意の牙突で葬り去る。
 しばらくして、先にこの地で戦っていた調停機関メンバーと合流した。
「お!《最新》じゃねぇか」
「やあ、こんなところで会うとは奇遇だね。壱月君。」
 普段と変わらず戦場においても白衣をなびかせ、武器を片手に戦っていたようだが壱月に気付くと軽く手を振ってきた。よく見るとその手には何か握られている。
「再開の記念に一杯どうだい?」
「おしるこなら勘弁だ。今、そんな気分じゃない」
「おや、甘いものは疲労回復にいいんだけどなぁ。仕方ない僕が飲もう。」
 戦いの真っ最中であるというのに缶をプシュッという心地良い音とともに開け、一口呷る。
「くぅ〜〜疲れた体に甘ったるさが染み渡るね〜」
「相変わらずだな、あんた」
 それを呆れた目で見る壱月だが、休憩中である《最新》の背後を取ろうとした敵を容赦なく殺すあたり、仲間としての意識を持っている事は確かなようだ。
「そういえば、前に見せてくれたアレ使わないのか?」
 横目でチラリと《最新》を見て、気になっていたことを問う。
 その視線に気付いた《最新》は、問われたことに対し、少し口角を上げたが首を横に振った。
「お!覚えていてくれたか!
 嬉しいねぇ〜
 でも、アレは使わない…僕の作ったヒーローシステムは戦争の道具じゃないからね」
 いつもの様に軽い感じで言ってはいるものの、そこには不動の決意が感じられ、それを微かにも感じとった壱月も無理強いする事はなく、納得していた。
「そうか…そうだよな、人を助ける為に作ったんだもんな、なら使うべきじゃない。」
「……わかってくれるのか?」
 その時、《最新》は信じられないといった風に目を見開いて、戦いの手を止めた。
 誰だって自分の夢を、努力を、成果を戦争に使われるのは嫌なものだ。それでも特に科学者や発明家といった者達は、戦争に好かれてしまう。
 実際はそうした戦いに好かれた者達が戦争を見ることはあまり無いのかも知れないが、見てしまった者は間違いなく心を壊されるか、狂気に落ちるだろう。
 実のところ先代《最新》つまり僕の父も狂気に落ち、数々の戦闘兵器を製作していた。
 そんな父の姿を見ていたからこそ、《最新》は自ら戦場に立ち武を振るう。だが決して自分が作った物は使わなかった。例え周りからバッシングを受けたとしてもその意思だけは貫くと決めた。
 どれだけ危機に陥ろうとも、誰も助けてくれなくても、理解してくれなくても、自分の作った物で誰かの命を奪いたくはなかったのだ。
 でも、たった今、理解してくれる人間がいた。あの《最強》が隙さえあれば発明品を軍事利用しようとするのでこの組織は、信用ならないと諦めていたけど、ここにはまだわかってくれる人がいたのだ。
 一筋の優しい光が目元から溢れ、頬を伝い雫となった。
「ありがとう。この気持ちをわかってくれて、君に出会えて良かったよ壱月くん。」
「……てっバカっ!手ェ止めてんじゃねぇ!!死ぬぞ!」
 いきなりそんな事を戦闘中に言い出すもんだから、思わず呆けてしまった。
「ああもう!とっととコイツら片付けるぞっ!!」 
「ああ!」
 数秒止めていた手を今度は倍の速さで動かしていく。その様は華麗の一言に尽きた。
 数分後。
「やっと片付いたな。結構手応えがあっから余計に時間がかかったぜ」
「お疲れさん。一本いるかい?」
「いらねーよ。気持ちだけもらっとく」
「そうか、残念…」
 刀を納めパンパンと手をはたきながら、汗を拭う壱月。
 隣で《最新》もおしるこの缶をグビグビ飲んでいる。
 そんな戦いの中で一息ついていると。
「っきゃあああーーーーーーー!!」
 すぐ近くで甲高い悲鳴が聞こえたのだった。
 長らく投稿できずにすみません。
社会人になって中々書く時間がありませんでした。
これからも気長にお待ちいただけると幸いです。
「はぁ…はぁ…やっと着いたぜ、最前線。ここから俺の戦が始まる!」
「何度も言いますけど、無理だけはしないでくださいね。
 あっ!ちょっと…」
「じゃ、俺の援護よろしくな〜」
 壱月は巴音の案じる声を無視し、自分勝手に命令を下して、織田軍と切り結びに行った。
 
 壱月の装備はいたって軽装ではあるが、その腰に下げているものがとてつもなく凶悪だった。
 〈死雨〉、それは死神が創り出した武装の中でも最高傑作と謳われている八つの死絶シリーズのうちの一つだ。
 その刀身には、死の概念が付与されており、斬りつけた物体に必ず死を与える。死絶シリーズ自体、未だ謎が多い為それが本当の力なのかは不明だが、使い方次第では間違いなく最強に至れるはずである。
 そんな凶刃を壱月は振り回し、近江の街に溢れかえる織田の軍勢達を相手取る。
「っしゃああーーーーー!!!」
「はあぁぁあああああ!」
 金属同士がぶつかり合う甲高い音と互いの気迫が街に反響していく。
「せいっやぁーーーー!」
「っはぁ!」
「ぐはっ…」
 大抵の敵を一振りで屠り、少し腕に覚えがあるらしい敵は得意の牙突で葬り去る。
 しばらくして、先にこの地で戦っていた調停機関メンバーと合流した。
「お!《最新》じゃねぇか」
「やあ、こんなところで会うとは奇遇だね。壱月君。」
 普段と変わらず戦場においても白衣をなびかせ、武器を片手に戦っていたようだが壱月に気付くと軽く手を振ってきた。よく見るとその手には何か握られている。
「再開の記念に一杯どうだい?」
「おしるこなら勘弁だ。今、そんな気分じゃない」
「おや、甘いものは疲労回復にいいんだけどなぁ。仕方ない僕が飲もう。」
 戦いの真っ最中であるというのに缶をプシュッという心地良い音とともに開け、一口呷る。
「くぅ〜〜疲れた体に甘ったるさが染み渡るね〜」
「相変わらずだな、あんた」
 それを呆れた目で見る壱月だが、休憩中である《最新》の背後を取ろうとした敵を容赦なく殺すあたり、仲間としての意識を持っている事は確かなようだ。
「そういえば、前に見せてくれたアレ使わないのか?」
 横目でチラリと《最新》を見て、気になっていたことを問う。
 その視線に気付いた《最新》は、問われたことに対し、少し口角を上げたが首を横に振った。
「お!覚えていてくれたか!
 嬉しいねぇ〜
 でも、アレは使わない…僕の作ったヒーローシステムは戦争の道具じゃないからね」
 いつもの様に軽い感じで言ってはいるものの、そこには不動の決意が感じられ、それを微かにも感じとった壱月も無理強いする事はなく、納得していた。
「そうか…そうだよな、人を助ける為に作ったんだもんな、なら使うべきじゃない。」
「……わかってくれるのか?」
 その時、《最新》は信じられないといった風に目を見開いて、戦いの手を止めた。
 誰だって自分の夢を、努力を、成果を戦争に使われるのは嫌なものだ。それでも特に科学者や発明家といった者達は、戦争に好かれてしまう。
 実際はそうした戦いに好かれた者達が戦争を見ることはあまり無いのかも知れないが、見てしまった者は間違いなく心を壊されるか、狂気に落ちるだろう。
 実のところ先代《最新》つまり僕の父も狂気に落ち、数々の戦闘兵器を製作していた。
 そんな父の姿を見ていたからこそ、《最新》は自ら戦場に立ち武を振るう。だが決して自分が作った物は使わなかった。例え周りからバッシングを受けたとしてもその意思だけは貫くと決めた。
 どれだけ危機に陥ろうとも、誰も助けてくれなくても、理解してくれなくても、自分の作った物で誰かの命を奪いたくはなかったのだ。
 でも、たった今、理解してくれる人間がいた。あの《最強》が隙さえあれば発明品を軍事利用しようとするのでこの組織は、信用ならないと諦めていたけど、ここにはまだわかってくれる人がいたのだ。
 一筋の優しい光が目元から溢れ、頬を伝い雫となった。
「ありがとう。この気持ちをわかってくれて、君に出会えて良かったよ壱月くん。」
「……てっバカっ!手ェ止めてんじゃねぇ!!死ぬぞ!」
 いきなりそんな事を戦闘中に言い出すもんだから、思わず呆けてしまった。
「ああもう!とっととコイツら片付けるぞっ!!」 
「ああ!」
 数秒止めていた手を今度は倍の速さで動かしていく。その様は華麗の一言に尽きた。
 数分後。
「やっと片付いたな。結構手応えがあっから余計に時間がかかったぜ」
「お疲れさん。一本いるかい?」
「いらねーよ。気持ちだけもらっとく」
「そうか、残念…」
 刀を納めパンパンと手をはたきながら、汗を拭う壱月。
 隣で《最新》もおしるこの缶をグビグビ飲んでいる。
 そんな戦いの中で一息ついていると。
「っきゃあああーーーーーーー!!」
 すぐ近くで甲高い悲鳴が聞こえたのだった。
 長らく投稿できずにすみません。
社会人になって中々書く時間がありませんでした。
これからも気長にお待ちいただけると幸いです。
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