噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神
78 こちら太平洋上 その2
「ふむ…」
そう一度唸って、《最新》は立ち上がる。そしてこちらを見て、口を開いた。
「僕はなかなか君のことが、気に入ってるらしい」
「は?」
突然そんなことを言われ、壱月は一瞬呆けるがすぐに嫌そうな顔をする。曰わく、「こんな面倒な奴に気に入られても嬉くねぇ」だそうだ。
「まぁまぁ、そんな露骨に表情を歪めるな。ただ僕の研究成果を少し見せてやろうと思っただけだ」
「………」
そう言われ、更に嫌そうな顔をしていく壱月。やはりこういった周りに理解され難い者は、こんな風に自分を語らねばやっていけないのだろう。
一応、壱月も以前は周囲に理解され難い者、つまりは中二病だったわけであるから、多少思うところがあるのか渋々了承するのだった。
「はぁ、わかった。頼むよ見せてくれ、お前の研究成果ってやつを」
「フハハ!そうこなくてはな!」
そんな風に快活に笑う《最新》に壱月はいいから早くしろ、と急かす。その様子に気を害す筈もなく、《最新》は身振り手振りを加えながら、研究発表を始めた。
「まずは、僕の神秘を明かすとしよう! その名も……」
「……」(ゴクッ)
「………」
「……」
「…………」
明かす直前でために入る《最新》だが、いくらためてもその先が出てこない。そしてなぜか壱月の方をチラチラ見ている。
(もしかして、コイツつっこんで欲しいのか? そうなのか?)
心底めんどくせぇと、心中でげんなりする壱月。しかしこのままでは、終わらないので言うしかない。
「……ためが長いは!!」
「!~~…………」
突っ込まれた《最新》はピクリと反応したが、先は言わないままだ。どうやらまだ足りないらしい。
そろそろ面倒くささを通り越して、イラついてきた壱月は少し声量を上げつつ、《最新》が待っていたであろう台詞を言う。
「…その名も!?!?」
「……フッ…その名も『神秘が願いによるものならば、夢からなるのが俺の科学だ』だ」
「そっちもなげぇ! というかもはや文だぞそれ!」
(名前からして滅茶苦茶、矛盾してそうな神秘だが……)
「……略して『夢という名の科学』だ!」
言い終わりとともに絶好のタイミングで強い海風が吹く。その風で《最新》の白衣が勢いよく後ろになびいている。この一場面だけを見れば十分かっこいいのだろうが、壱月は何も感じない。この偶然にもただ呆れるだけだ。
そしていちいち突っ込むのが疲れてきた壱月は、もう突っ込むのはやめる、と強く決意するが、最後まで貫き通せる自信は無さそうだ。
「で、その矛盾神秘『夢という名の科学』を使って何を為したんだ?」
「うむ、よくぞ聴いてくれた。僕はこの神秘を駆使し、こいつの開発に成功したのだ!」
未だなびいている白衣の(缶ジュースいっぱいのはずの)内ポケットから世界調停機関公式の身分証明端末を取り出した。
「あ!それ、お前が作ってたんだな、全然知らなかった。そいつのおかげでいつも助かってる、ありがとよ!」
壱月が率直な感想と感謝を述べるが、《最新》の顔が晴れることはなく壱月の感想に対し逆に《最新》は声を荒げ言った。
「君、何か勘違いしているようだけど、僕の研究成果はこんなもんじゃない!!」
「なに?」
もちろんそんな事を言われれば聴いているだけの壱月はただ首を傾げるしかない。
「ではこの僕が、この端末の真価を教えてやろう」
「ああ、頼む」
いつの間にか、壱月は段々と《最新》のペースに呑まれ、割と本気で耳を傾けていた。《最新》は端末内にあるアプリケーションを起動する。すると画面上にタイトルロゴ『Project: Hero System』が浮かび上がり、フェードアウトすると次に音声がながれる。
『Standing by………』
音声は歯切れ悪そうなところで止まり、待機状態に移行した。
「どうだ! これこそが僕の発明した『誰でも夢のヒーローになれるよ!夢を諦めちゃダメだ!アプリケーション』だ」
「な、名前長いけどなんか痺れる! すげぇアプリだな!」
壱月は完全に《最新》の手のひらの上で踊らされており、ツッコミが無いこの場は既に《最新》のテリトリーになっていた。そんな二人はどんどんヒートアップしていき、やがて……。
「では、実際にこのアプリの使い方を説明しよう!」
「お願いします!」
「まずは発声練習だ! おっと、その前に君も端末でアプリを起動したまえ」
「はいっ!」
《最新》に倣い、壱月も端末を取り出して、何故か初期からインストールされてあった例のアプリを起動する。先程と全く同じタイトルロゴがフェードアウトし、音声がながれた。しかし、ここだけは《最新》が使っているものとは違った。
『Are you ready?』
「?」
当然、それに首を傾げる壱月。ちらりと《最新》の方に視線をよこすが、彼が親指を立てているのを見て異常は無いのだと判断する。
「端末ごとに音声が違うのか?」
「いいや、アプリを起動するごとに音声は変わる」
「手がこった作りだな…」
「それが夢、だからな」
《最新》はそう言うと、白衣を翻し海の方を向き、もうまもなく落ちるだろう夕日に向かって黄昏る。どうやら《最新》と喋っているうちに、かなり時間が経っていたようだ。
「では、気を取り直して発声練習だ」
「おう…で、何を言えばいいんだ?」
「まずは僕が手本を見せるから、よく見ておくように」
「わかった」
彼は唐突に、右手に持った端末を上に掲げ……
「変身ッ!!!!!!!!!!!!」
「!!」
と叫び、端末を世界調停機関で支給されているベルトの金属部分にかざすのと同時に……
『Complete!』
「まぶしっ!」
そんな音声が発せられたかと思えば次の瞬間、閃光で壱月の目が眩む。
「ふぅ、ざっとこんなもんだ。はい次、やってみよう!」
「!?!?」
壱月が動揺しているが、無理もないだろう。なにせ今、壱月の目前にいるのは、仮面をかぶり特殊なライダースーツに身を包んだ《最新》なのだから。
その名も、『仮○ラ○ダーレイティス』だ。
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
今回は完全に《最新》というネタキャラ回です。
加えて、仮○ラ○ダーという超有名シリーズをネタとして書かせていただくことをお許し下さい。私自身、○面ライ○ーを馬鹿にする気は毛頭無く、これを通してより多くの人に知ってもらえれば、と思っています。
これからもよろしくお願いします!
そう一度唸って、《最新》は立ち上がる。そしてこちらを見て、口を開いた。
「僕はなかなか君のことが、気に入ってるらしい」
「は?」
突然そんなことを言われ、壱月は一瞬呆けるがすぐに嫌そうな顔をする。曰わく、「こんな面倒な奴に気に入られても嬉くねぇ」だそうだ。
「まぁまぁ、そんな露骨に表情を歪めるな。ただ僕の研究成果を少し見せてやろうと思っただけだ」
「………」
そう言われ、更に嫌そうな顔をしていく壱月。やはりこういった周りに理解され難い者は、こんな風に自分を語らねばやっていけないのだろう。
一応、壱月も以前は周囲に理解され難い者、つまりは中二病だったわけであるから、多少思うところがあるのか渋々了承するのだった。
「はぁ、わかった。頼むよ見せてくれ、お前の研究成果ってやつを」
「フハハ!そうこなくてはな!」
そんな風に快活に笑う《最新》に壱月はいいから早くしろ、と急かす。その様子に気を害す筈もなく、《最新》は身振り手振りを加えながら、研究発表を始めた。
「まずは、僕の神秘を明かすとしよう! その名も……」
「……」(ゴクッ)
「………」
「……」
「…………」
明かす直前でために入る《最新》だが、いくらためてもその先が出てこない。そしてなぜか壱月の方をチラチラ見ている。
(もしかして、コイツつっこんで欲しいのか? そうなのか?)
心底めんどくせぇと、心中でげんなりする壱月。しかしこのままでは、終わらないので言うしかない。
「……ためが長いは!!」
「!~~…………」
突っ込まれた《最新》はピクリと反応したが、先は言わないままだ。どうやらまだ足りないらしい。
そろそろ面倒くささを通り越して、イラついてきた壱月は少し声量を上げつつ、《最新》が待っていたであろう台詞を言う。
「…その名も!?!?」
「……フッ…その名も『神秘が願いによるものならば、夢からなるのが俺の科学だ』だ」
「そっちもなげぇ! というかもはや文だぞそれ!」
(名前からして滅茶苦茶、矛盾してそうな神秘だが……)
「……略して『夢という名の科学』だ!」
言い終わりとともに絶好のタイミングで強い海風が吹く。その風で《最新》の白衣が勢いよく後ろになびいている。この一場面だけを見れば十分かっこいいのだろうが、壱月は何も感じない。この偶然にもただ呆れるだけだ。
そしていちいち突っ込むのが疲れてきた壱月は、もう突っ込むのはやめる、と強く決意するが、最後まで貫き通せる自信は無さそうだ。
「で、その矛盾神秘『夢という名の科学』を使って何を為したんだ?」
「うむ、よくぞ聴いてくれた。僕はこの神秘を駆使し、こいつの開発に成功したのだ!」
未だなびいている白衣の(缶ジュースいっぱいのはずの)内ポケットから世界調停機関公式の身分証明端末を取り出した。
「あ!それ、お前が作ってたんだな、全然知らなかった。そいつのおかげでいつも助かってる、ありがとよ!」
壱月が率直な感想と感謝を述べるが、《最新》の顔が晴れることはなく壱月の感想に対し逆に《最新》は声を荒げ言った。
「君、何か勘違いしているようだけど、僕の研究成果はこんなもんじゃない!!」
「なに?」
もちろんそんな事を言われれば聴いているだけの壱月はただ首を傾げるしかない。
「ではこの僕が、この端末の真価を教えてやろう」
「ああ、頼む」
いつの間にか、壱月は段々と《最新》のペースに呑まれ、割と本気で耳を傾けていた。《最新》は端末内にあるアプリケーションを起動する。すると画面上にタイトルロゴ『Project: Hero System』が浮かび上がり、フェードアウトすると次に音声がながれる。
『Standing by………』
音声は歯切れ悪そうなところで止まり、待機状態に移行した。
「どうだ! これこそが僕の発明した『誰でも夢のヒーローになれるよ!夢を諦めちゃダメだ!アプリケーション』だ」
「な、名前長いけどなんか痺れる! すげぇアプリだな!」
壱月は完全に《最新》の手のひらの上で踊らされており、ツッコミが無いこの場は既に《最新》のテリトリーになっていた。そんな二人はどんどんヒートアップしていき、やがて……。
「では、実際にこのアプリの使い方を説明しよう!」
「お願いします!」
「まずは発声練習だ! おっと、その前に君も端末でアプリを起動したまえ」
「はいっ!」
《最新》に倣い、壱月も端末を取り出して、何故か初期からインストールされてあった例のアプリを起動する。先程と全く同じタイトルロゴがフェードアウトし、音声がながれた。しかし、ここだけは《最新》が使っているものとは違った。
『Are you ready?』
「?」
当然、それに首を傾げる壱月。ちらりと《最新》の方に視線をよこすが、彼が親指を立てているのを見て異常は無いのだと判断する。
「端末ごとに音声が違うのか?」
「いいや、アプリを起動するごとに音声は変わる」
「手がこった作りだな…」
「それが夢、だからな」
《最新》はそう言うと、白衣を翻し海の方を向き、もうまもなく落ちるだろう夕日に向かって黄昏る。どうやら《最新》と喋っているうちに、かなり時間が経っていたようだ。
「では、気を取り直して発声練習だ」
「おう…で、何を言えばいいんだ?」
「まずは僕が手本を見せるから、よく見ておくように」
「わかった」
彼は唐突に、右手に持った端末を上に掲げ……
「変身ッ!!!!!!!!!!!!」
「!!」
と叫び、端末を世界調停機関で支給されているベルトの金属部分にかざすのと同時に……
『Complete!』
「まぶしっ!」
そんな音声が発せられたかと思えば次の瞬間、閃光で壱月の目が眩む。
「ふぅ、ざっとこんなもんだ。はい次、やってみよう!」
「!?!?」
壱月が動揺しているが、無理もないだろう。なにせ今、壱月の目前にいるのは、仮面をかぶり特殊なライダースーツに身を包んだ《最新》なのだから。
その名も、『仮○ラ○ダーレイティス』だ。
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
今回は完全に《最新》というネタキャラ回です。
加えて、仮○ラ○ダーという超有名シリーズをネタとして書かせていただくことをお許し下さい。私自身、○面ライ○ーを馬鹿にする気は毛頭無く、これを通してより多くの人に知ってもらえれば、と思っています。
これからもよろしくお願いします!
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