噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神
74 開戦阻止その2
「人間は無から有を生み出せず、故に星の資源を消費し続け発展するしかなかった。それでも星を救うチャンスはあった、幾らでもな。だが人類はこの星に何も返さなかった……それが現代だ」
「……」
殺戮者の強い声音に信長達はただ聞くことしかできない。
「そして戦争は発展、繁栄を加速させるとともに、無駄に星を傷つける」
「待て、何も全ての戦がそうであったわけではあるまい」
信長は殺戮者の言葉の隙を突いていくが、今の殺戮者を止めることはできない。
「ああ、古代の戦争はそこまで星に害はなかった」
「なら……」
「だがしかし人類は、第一次世界大戦までに火器を開発し、さらには戦争中あらゆる化学兵器で人間とその土地までも殺してしまうようになった!異世界に行ったお前は知らないだろうがな!」
もちろん、殺戮者も相手が知らない事を延々と語るわけではない。それは説得にはならないと、彼は思っているから。
ただ少し感情的になるのは、仕方のないことかもしれない。
「ああ!知らん!現代までに起きたことなど、書物で読んだくらいだ!そこまで深く考えた事は、儂にはない!」
「信長様…」「殿……」「……」
そんな信長の言葉に、家臣の3人はそれぞれ複雑な気持ちになる。欄丸は、信長とともに歴史書を読んでいたため、その気持ちを理解し、天子や雪姫は、自分達の世界を思い返し、戦がそんな事に繋がっていたんだと気付かされる。
殺戮者もこれで、納得してくれると思ったのか少し気を落ち着かせている。武器商人の方は、いつ爆発するかわからないこの場の空気のせいで冷や汗ダラダラだ。
ふと武器商人がその冷や汗を手で拭った時、彼は見てしまった。信長がまだ戦争を諦めていない様を。
信長は、一瞬だが…不敵に笑ったのだ。
「だが、だがな殺戮者。今はもう近代ではないのだ」
「なんだと?」
突然信長が発した言葉に、殺戮者は首を傾げる。そんな理解が追い付かない彼を置き去りにしたまま、信長は続けた。
「わからんか?もう近代は終わっているということよ」
「何言ってやがる」
「はぁこれでも理解できんとはな…まぁいい、懇切丁寧に説明してやろう」
そう言って、信長はお茶を一飲み。殺戮者は何も言わず、待っている。
「いいか?神々が再降臨し、神秘が復活した時点で近代は終わり、新たに神代が始まっているということ」
「ッ!?」
主に人類を殺すことしか考えていないが故に、殺戮者は予想だにしないことを言われ、思わず言葉が詰まる。
「そして儂が断言できるのは、この戦において織田軍は火器、化学兵器を一切使わないことだ」
「なッ!……」
こちらも予想外だ。これには殺戮者も絶句するしかない。あの火縄銃の三段撃ち戦術を考案した信長が、火器を一切使わないなど誰が思うだろうか。
「故に、お主が危惧している『星を傷つける』などということは有り得ん」
「……」
「むしろ、その可能性が高いのは日本神話軍や、世界調停機関だと儂は思うが?」
「それは……」
信長の言葉の通りだった。殺戮者は鹿児島から滋賀へ来る途中、出雲を少し偵察していたのだ。そしてそこで見たものは、数々の重火器だった。
もちろんそこで殺戮を始めてもよかったが、後々どの様に状況が左右するかわからなかった為、その時は控えていた。
今となっては、あの時の選択を後悔するばかりだろう。
偵察時、化学兵器までは確認できなかったが、有ったとしても今更だ。
だが、殺戮者がこのまま引き下がる筈はなかった。何故なら未だ、織田軍が火器を使わないという確たる証拠がないのだから。
「もし本当に、火器類を使わず戦争を始めるというのなら、どうやって戦うつもりだ?」
織田信長という男はやると言ったらやる男だ。殺戮者はそれを理解しているため、こんな事は苦し紛れだが、無いよりましだろう。
「向こうの世界にいた頃、儂等はこの身体と武器とその技術だけで、全てを制覇した。新兵なども例外なくな…」
「そうなのです!私達もこの世界に来て初めて火器というものを知りました。ですが、あれを使う気にはなりませんねぇ~」
信長の横から飛び出す、天子。銃なんて要らないアピールをしている。
「何故だ?あれを知っているならその効率性も必然的にわかるだろう!?銃は一般市民や農民すらも即席の兵士に変えてしまう力を持っている!」
それに対して、殺戮者は銃の特性を話すが…
「それですよ。その一般人を殺人者に変えれる力が、私は嫌いです!殺す覚悟が無い人が、誰かを殺す…それは絶対にあってはならない事なのですよ!」
「!?」
その少女の言うことは、正論だった。かつて銃を手に取った若者が、半端な覚悟で、叉は遊び感覚で殺人を犯すそんな事も普通に起こっていた。
「銃が人を殺すんじゃない、人が人を殺すのだ」そんなフレーズが出来たのもそんな背景があったから。
「そうだな。私達の世界では、しっかりと戦う者と、作り育てる者が区別されていた。だからこそ、私達はその火器とやらが嫌いだ。誰でも戦士になっていい訳ではない…そういうことだ…」
天子の隣に寄り添うように、雪姫が座り続きを述べた。
「そう…か……」
それに対し、殺戮者はただ応えることしか出来なかった。
数分後。話がそれ以降続かず、静まり返った天守内。
唐突に、殺戮者が立ち上がった。踵を返し、すぐ横の開いてある展望窓の縁に足をかけ、飛び降りようとする。
「どこへ行くつもりだ?」
そしてそれに声を掛ける信長。
「用事が出来たから帰る。それだけだ…」
「そうか…」
「邪魔したな…」
そう言って颯爽と出て行く殺戮者。それに気付いた武器商人も後を追いかけダイブ。
「堂々と正門から帰って行けばいいものを…まったく……」
「馬鹿だから、仕方ないわね」
呆れる信長と、冷たく言い放つ雪姫。
「殿~結局、戦はどうするんですか~」
「何言ってやがる、どうするも何も最初から変わんねぇーよ」
おそらく殺戮者が説得に成功しようがしまいが、結果は変わらなかっただろう。
だがしかし、意味がなかったわけではない。
「おい、殺戮者。これからどうするつもりだ?」
「決まっているだろう、俺のやることは変わらない!今から出雲に行って神をぶっ殺すそれだけだ!」
着地後すぐに走り出した殺戮者と武器商人の二人。
殺戮者の次の目的は日本神話のようだ。
(先程、信長は神代が始まっていると言っていた。ならその戦争被害は近代の比ではないということだ。火縄の三段撃ち戦術に気を取られてこちらを優先したが、織田軍が火器を使わないならそれでいい。こちらとしても、もう口を挟む余地は無い)
「クソが!」
(本当に潰さなければならないのは、神話勢力の方だ。奴らは重火器に加え、神格兵装を持ち出してくる可能性がある。あれは一言で言えば厄災に他ならない!物によっては、大地を割り天を裂く程の力を有しているかもしれん。それこそ最悪だ!)
「何としてでも、止めてみせる!」
そう言って、殺戮者はさらにスピードを速めていくのだった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
一旦今回で、信長・殺戮者側は終わります。
次回は、日本神話側を書く予定です。
これからもよろしくお願いします!
「……」
殺戮者の強い声音に信長達はただ聞くことしかできない。
「そして戦争は発展、繁栄を加速させるとともに、無駄に星を傷つける」
「待て、何も全ての戦がそうであったわけではあるまい」
信長は殺戮者の言葉の隙を突いていくが、今の殺戮者を止めることはできない。
「ああ、古代の戦争はそこまで星に害はなかった」
「なら……」
「だがしかし人類は、第一次世界大戦までに火器を開発し、さらには戦争中あらゆる化学兵器で人間とその土地までも殺してしまうようになった!異世界に行ったお前は知らないだろうがな!」
もちろん、殺戮者も相手が知らない事を延々と語るわけではない。それは説得にはならないと、彼は思っているから。
ただ少し感情的になるのは、仕方のないことかもしれない。
「ああ!知らん!現代までに起きたことなど、書物で読んだくらいだ!そこまで深く考えた事は、儂にはない!」
「信長様…」「殿……」「……」
そんな信長の言葉に、家臣の3人はそれぞれ複雑な気持ちになる。欄丸は、信長とともに歴史書を読んでいたため、その気持ちを理解し、天子や雪姫は、自分達の世界を思い返し、戦がそんな事に繋がっていたんだと気付かされる。
殺戮者もこれで、納得してくれると思ったのか少し気を落ち着かせている。武器商人の方は、いつ爆発するかわからないこの場の空気のせいで冷や汗ダラダラだ。
ふと武器商人がその冷や汗を手で拭った時、彼は見てしまった。信長がまだ戦争を諦めていない様を。
信長は、一瞬だが…不敵に笑ったのだ。
「だが、だがな殺戮者。今はもう近代ではないのだ」
「なんだと?」
突然信長が発した言葉に、殺戮者は首を傾げる。そんな理解が追い付かない彼を置き去りにしたまま、信長は続けた。
「わからんか?もう近代は終わっているということよ」
「何言ってやがる」
「はぁこれでも理解できんとはな…まぁいい、懇切丁寧に説明してやろう」
そう言って、信長はお茶を一飲み。殺戮者は何も言わず、待っている。
「いいか?神々が再降臨し、神秘が復活した時点で近代は終わり、新たに神代が始まっているということ」
「ッ!?」
主に人類を殺すことしか考えていないが故に、殺戮者は予想だにしないことを言われ、思わず言葉が詰まる。
「そして儂が断言できるのは、この戦において織田軍は火器、化学兵器を一切使わないことだ」
「なッ!……」
こちらも予想外だ。これには殺戮者も絶句するしかない。あの火縄銃の三段撃ち戦術を考案した信長が、火器を一切使わないなど誰が思うだろうか。
「故に、お主が危惧している『星を傷つける』などということは有り得ん」
「……」
「むしろ、その可能性が高いのは日本神話軍や、世界調停機関だと儂は思うが?」
「それは……」
信長の言葉の通りだった。殺戮者は鹿児島から滋賀へ来る途中、出雲を少し偵察していたのだ。そしてそこで見たものは、数々の重火器だった。
もちろんそこで殺戮を始めてもよかったが、後々どの様に状況が左右するかわからなかった為、その時は控えていた。
今となっては、あの時の選択を後悔するばかりだろう。
偵察時、化学兵器までは確認できなかったが、有ったとしても今更だ。
だが、殺戮者がこのまま引き下がる筈はなかった。何故なら未だ、織田軍が火器を使わないという確たる証拠がないのだから。
「もし本当に、火器類を使わず戦争を始めるというのなら、どうやって戦うつもりだ?」
織田信長という男はやると言ったらやる男だ。殺戮者はそれを理解しているため、こんな事は苦し紛れだが、無いよりましだろう。
「向こうの世界にいた頃、儂等はこの身体と武器とその技術だけで、全てを制覇した。新兵なども例外なくな…」
「そうなのです!私達もこの世界に来て初めて火器というものを知りました。ですが、あれを使う気にはなりませんねぇ~」
信長の横から飛び出す、天子。銃なんて要らないアピールをしている。
「何故だ?あれを知っているならその効率性も必然的にわかるだろう!?銃は一般市民や農民すらも即席の兵士に変えてしまう力を持っている!」
それに対して、殺戮者は銃の特性を話すが…
「それですよ。その一般人を殺人者に変えれる力が、私は嫌いです!殺す覚悟が無い人が、誰かを殺す…それは絶対にあってはならない事なのですよ!」
「!?」
その少女の言うことは、正論だった。かつて銃を手に取った若者が、半端な覚悟で、叉は遊び感覚で殺人を犯すそんな事も普通に起こっていた。
「銃が人を殺すんじゃない、人が人を殺すのだ」そんなフレーズが出来たのもそんな背景があったから。
「そうだな。私達の世界では、しっかりと戦う者と、作り育てる者が区別されていた。だからこそ、私達はその火器とやらが嫌いだ。誰でも戦士になっていい訳ではない…そういうことだ…」
天子の隣に寄り添うように、雪姫が座り続きを述べた。
「そう…か……」
それに対し、殺戮者はただ応えることしか出来なかった。
数分後。話がそれ以降続かず、静まり返った天守内。
唐突に、殺戮者が立ち上がった。踵を返し、すぐ横の開いてある展望窓の縁に足をかけ、飛び降りようとする。
「どこへ行くつもりだ?」
そしてそれに声を掛ける信長。
「用事が出来たから帰る。それだけだ…」
「そうか…」
「邪魔したな…」
そう言って颯爽と出て行く殺戮者。それに気付いた武器商人も後を追いかけダイブ。
「堂々と正門から帰って行けばいいものを…まったく……」
「馬鹿だから、仕方ないわね」
呆れる信長と、冷たく言い放つ雪姫。
「殿~結局、戦はどうするんですか~」
「何言ってやがる、どうするも何も最初から変わんねぇーよ」
おそらく殺戮者が説得に成功しようがしまいが、結果は変わらなかっただろう。
だがしかし、意味がなかったわけではない。
「おい、殺戮者。これからどうするつもりだ?」
「決まっているだろう、俺のやることは変わらない!今から出雲に行って神をぶっ殺すそれだけだ!」
着地後すぐに走り出した殺戮者と武器商人の二人。
殺戮者の次の目的は日本神話のようだ。
(先程、信長は神代が始まっていると言っていた。ならその戦争被害は近代の比ではないということだ。火縄の三段撃ち戦術に気を取られてこちらを優先したが、織田軍が火器を使わないならそれでいい。こちらとしても、もう口を挟む余地は無い)
「クソが!」
(本当に潰さなければならないのは、神話勢力の方だ。奴らは重火器に加え、神格兵装を持ち出してくる可能性がある。あれは一言で言えば厄災に他ならない!物によっては、大地を割り天を裂く程の力を有しているかもしれん。それこそ最悪だ!)
「何としてでも、止めてみせる!」
そう言って、殺戮者はさらにスピードを速めていくのだった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
一旦今回で、信長・殺戮者側は終わります。
次回は、日本神話側を書く予定です。
これからもよろしくお願いします!
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