噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神
60 採用試験
帰ってきて眠ってから6時間が経ち、時刻はそろそろ正午になろうとしていた。
今は《最目》以外の四人が起きて昼食をとり、それぞれに暇をつぶしている。やはり《最目》は疲れ度合いがやばかったらしく、まだ起きる気配はなかった。
そんな中、唐突にキーシュタインが呟く。
「……!…来たか……」
「「え!?」」
「…来ましたね」
その呟きに対して、壱月とクレトは何が来るのかわかっていないようだが、巴音は理解しているようでお茶の準備を始めた。
そしてそれは現れた。この部屋を中心に半径3メートルの円が数多の数字や記号、幾何学模様とともに床に描かれ、完成と同時に、強く光り始める。その光景を見て、壱月はあることを思い出す。
「これは、魔法陣!!しかもこの模様…《最術》に飛ばされた時と同じだ。ということはこれは転移魔法!?」
「……ハハッ…バカのくせによく覚えてたな……」
壱月が思い出したことをそのまま口に出していると、光の向こうから声が届く。それは久しく聞くことがなかったある男の声だった。やがて、転移が完了したのか光は霧散し、声の主が壱月達の前に現れる。
「……よぉ…久しぶりだなイチャつき死神共」
「…さ…《最剣》!!」
なんと、転移してきたのは《最剣》と、もう1人。
「はぁ…まったく転移早々、騒がしい。《最目》は何をやっているんだ」
そんな文句をこぼしながら、眼鏡をクイッとするのは世界調停機関副長《最善》だった。
二人は近場にあったソファに座り、巴音からお茶を受け取ると礼を言い、一息ついた。そしてその二人に奇異の視線を向けているのは、クレトだ。『星の記憶』で星の全てを見ることができるキーシュタインとは違い、クレトはこの場で唯一、二人の事を知らないのだ。なのでクレトはキーシュタインに小声で二人のことを尋ね、正体を聞き、驚きつつも納得したようだ。
「で、《最剣》達は何しに来たんだ?」
そして何の前触れもなく唐突にしゃべりだす壱月。休憩させる気ゼロだ…
「ああ、拙者達は《最目》の推薦状を見て、珍しく暇だったから来てみただけだ」
「うむ。普段なら5時間かかる仕事が《最剣》のおかげで3時間で済んだのでな、
暇つぶしがてらここで採用試験をやろうかと、思い来てみたんだ」
要約すると、どうやら二人とも暇だったから来たらしい。しかも普段超忙しい《最善》が暇とはかなり珍しい状況だ。
「採用試験って、この二人のか?」
そう言って壱月はキーシュタイン達を見る。つられて《最善》《最剣》も二人を見る。
「そうだ。キーシュタイン君とクレト君だね。
君達のことは《最目》から話を聞いている、さっそく採用試験を行おうと思うが、何も問題ないかい?」
「ああ、問題ないよろしく頼む」
「いつでも良いぜ!」
二人の都合を伺う《最善》に、準備万端だと伝えるキーシュタイン達。特にクレトからはやる気がみなぎっている。
「そうか。では遠慮なくいかせて貰う。ファバード・キーシュタイン君!」
「なんだ?」
「採用決定!」
「!?!?!?!?」
なんと、試験開始一秒もたたずにキーシュタインの合格が発表された。これには流石のキーシュタインも動揺を隠せないようだ。いくら未来を見ることが出来ても、ここまでは見れていなかったらしい。
そして試験はまだ終わっていない。次はクレトの番だ。
(己も、このまま合格かな~)
なんて余裕をぶちかましていると…
「橘クレト君!」
「は、はい!」
「君は、壱月君と闘ってもらう」
「ありがtッ………え?」
案の定、ちゃんと試験があるようだ。さらに恥ずかしいことに「ありがとうございます」と言いかけて、途中でテンション下がっている。
だが、クレトは聞き間違えかもしれないと、前向きに考え、再度聞いてみる。
「今、なんと?」
「だから君には壱月君と闘ってもらい、その内容で合否を決めさせて貰う。と言っている」
「……は、はい。わかりました」
間違いという希望にすがっての聞き返しだったが、現実は厳しく先程より詳しく説明され、クレトも納得せざるをえない。
「《最善》さん」
「さんはいらん。なんだ壱月君」
「じゃあ《最善》。なんで俺なんですか?
《最剣》を対戦相手にした方が、わかりやすいんじゃないですか?」
壱月の問いは当然の疑問だ。クレトの力量を測るなら《最剣》の方が向いているだろう。それを何故、わざわざ壱月にさせるのか?答えは…
「これはイチャつき死神壱月の修行も兼ねているからだ」
そう答えたのは、《最善》ではなく《最剣》だった。
だが、ここでまた新たな疑問が浮かぶ。
「修行って、何するんですか?」
「簡単だ。イチャつき死神壱月に幾つかの制限をかけ、それで闘ってもらう」
「なるほど!」
壱月は素直に納得しているようだ。何故か違和感が残るところをスルーして…
でも、その違和感に耐えられない方がひとり。巴音だ。
「あの~《最剣》さん。さっきからその~イチャつき死神っていうのは何ですか?」
「なんだイチャつき死神巴音?どこかおかしなところでもあるか?」
「いえ、おかしなところしかないんですが…」
《最剣》から少し距離を置き、後ずさる巴音。
そんな巴音に壱月は疑問顔だ。
「あれ?巴音知らないのか?」
「何がですか??」
「これ」
そういって見せたのは、世界調停機関で公式採用されている情報・ニュースアプリだ。
それを一目見て、
「な!?……」
絶句する巴音。
そのアプリのおすすめ記事のトップには、『イチャラブ死神、壱月と巴音』と題され、大々的に二人が仲良く手をつないで寝ている写真がupされている。既にいいねは666万にまでのぼっており、リツイート数は444万だ。
なおコメント欄には、「リア充爆発しろ」「リア充死すべし」「死神本部通報済み」「明日死刑ね」など数多の罵詈雑言が呪詛のように書き込まれていた。
そして、この記事の投稿主が《最目》となっている。
「壱月さん」
「なんだ?」
頬を赤く染めながらも、目つきが少し険しい巴音は、壱月に声をかける。当の壱月は全てを悟ったような笑みで、巴音に応じる。
「昨日、《最目》さんに疲れている中、謎に「一神派」の説明を求めたのはこの記事を見たからですか?」
「ああ、そうだ」
両者とも穏やかなようで、片方不穏な雰囲気を纏い、片方優しく微笑んでいる。
周りから見たら、とても怖かったと、クレトは後に語る。
「壱月さん」
「なんだ?」
先程の掛け合いが繰り返され、
「ナイスです!」
「おう!」
今度は両者とも満面の笑みを互いに見せる。
「壱月さん」
「なんだ?」
本日三回目の掛け合い、
「じゃあ、《最目》さんをシメましょうか」
「そうだな!」
二人は満面の笑みのまま、《最目》が眠っている部屋に行き、《最目》を起こした。
数分後、悲鳴と絶叫が何度も聞こえ、《最剣》達を震え上がらせたのは言うまでもない。
この出来事の後に、《最善》は自身の副長としての権限で、『イチャラブ死神、壱月と巴音』の記事、及び全データを消すこととなった。そしてこの記事を流した《最目》本人はしばらくの間、恐怖から眠れぬ夜を過ごし、さらには未来恐怖症になったとか…
いつもお読みいただき誠にありがとうございます。
今回、やっと《最目》のイタズラ事件が解決?したと思いますが、どうだったでしょうか?
ご感想などいただければ幸いです。
これからもよろしくお願い致します!
今は《最目》以外の四人が起きて昼食をとり、それぞれに暇をつぶしている。やはり《最目》は疲れ度合いがやばかったらしく、まだ起きる気配はなかった。
そんな中、唐突にキーシュタインが呟く。
「……!…来たか……」
「「え!?」」
「…来ましたね」
その呟きに対して、壱月とクレトは何が来るのかわかっていないようだが、巴音は理解しているようでお茶の準備を始めた。
そしてそれは現れた。この部屋を中心に半径3メートルの円が数多の数字や記号、幾何学模様とともに床に描かれ、完成と同時に、強く光り始める。その光景を見て、壱月はあることを思い出す。
「これは、魔法陣!!しかもこの模様…《最術》に飛ばされた時と同じだ。ということはこれは転移魔法!?」
「……ハハッ…バカのくせによく覚えてたな……」
壱月が思い出したことをそのまま口に出していると、光の向こうから声が届く。それは久しく聞くことがなかったある男の声だった。やがて、転移が完了したのか光は霧散し、声の主が壱月達の前に現れる。
「……よぉ…久しぶりだなイチャつき死神共」
「…さ…《最剣》!!」
なんと、転移してきたのは《最剣》と、もう1人。
「はぁ…まったく転移早々、騒がしい。《最目》は何をやっているんだ」
そんな文句をこぼしながら、眼鏡をクイッとするのは世界調停機関副長《最善》だった。
二人は近場にあったソファに座り、巴音からお茶を受け取ると礼を言い、一息ついた。そしてその二人に奇異の視線を向けているのは、クレトだ。『星の記憶』で星の全てを見ることができるキーシュタインとは違い、クレトはこの場で唯一、二人の事を知らないのだ。なのでクレトはキーシュタインに小声で二人のことを尋ね、正体を聞き、驚きつつも納得したようだ。
「で、《最剣》達は何しに来たんだ?」
そして何の前触れもなく唐突にしゃべりだす壱月。休憩させる気ゼロだ…
「ああ、拙者達は《最目》の推薦状を見て、珍しく暇だったから来てみただけだ」
「うむ。普段なら5時間かかる仕事が《最剣》のおかげで3時間で済んだのでな、
暇つぶしがてらここで採用試験をやろうかと、思い来てみたんだ」
要約すると、どうやら二人とも暇だったから来たらしい。しかも普段超忙しい《最善》が暇とはかなり珍しい状況だ。
「採用試験って、この二人のか?」
そう言って壱月はキーシュタイン達を見る。つられて《最善》《最剣》も二人を見る。
「そうだ。キーシュタイン君とクレト君だね。
君達のことは《最目》から話を聞いている、さっそく採用試験を行おうと思うが、何も問題ないかい?」
「ああ、問題ないよろしく頼む」
「いつでも良いぜ!」
二人の都合を伺う《最善》に、準備万端だと伝えるキーシュタイン達。特にクレトからはやる気がみなぎっている。
「そうか。では遠慮なくいかせて貰う。ファバード・キーシュタイン君!」
「なんだ?」
「採用決定!」
「!?!?!?!?」
なんと、試験開始一秒もたたずにキーシュタインの合格が発表された。これには流石のキーシュタインも動揺を隠せないようだ。いくら未来を見ることが出来ても、ここまでは見れていなかったらしい。
そして試験はまだ終わっていない。次はクレトの番だ。
(己も、このまま合格かな~)
なんて余裕をぶちかましていると…
「橘クレト君!」
「は、はい!」
「君は、壱月君と闘ってもらう」
「ありがtッ………え?」
案の定、ちゃんと試験があるようだ。さらに恥ずかしいことに「ありがとうございます」と言いかけて、途中でテンション下がっている。
だが、クレトは聞き間違えかもしれないと、前向きに考え、再度聞いてみる。
「今、なんと?」
「だから君には壱月君と闘ってもらい、その内容で合否を決めさせて貰う。と言っている」
「……は、はい。わかりました」
間違いという希望にすがっての聞き返しだったが、現実は厳しく先程より詳しく説明され、クレトも納得せざるをえない。
「《最善》さん」
「さんはいらん。なんだ壱月君」
「じゃあ《最善》。なんで俺なんですか?
《最剣》を対戦相手にした方が、わかりやすいんじゃないですか?」
壱月の問いは当然の疑問だ。クレトの力量を測るなら《最剣》の方が向いているだろう。それを何故、わざわざ壱月にさせるのか?答えは…
「これはイチャつき死神壱月の修行も兼ねているからだ」
そう答えたのは、《最善》ではなく《最剣》だった。
だが、ここでまた新たな疑問が浮かぶ。
「修行って、何するんですか?」
「簡単だ。イチャつき死神壱月に幾つかの制限をかけ、それで闘ってもらう」
「なるほど!」
壱月は素直に納得しているようだ。何故か違和感が残るところをスルーして…
でも、その違和感に耐えられない方がひとり。巴音だ。
「あの~《最剣》さん。さっきからその~イチャつき死神っていうのは何ですか?」
「なんだイチャつき死神巴音?どこかおかしなところでもあるか?」
「いえ、おかしなところしかないんですが…」
《最剣》から少し距離を置き、後ずさる巴音。
そんな巴音に壱月は疑問顔だ。
「あれ?巴音知らないのか?」
「何がですか??」
「これ」
そういって見せたのは、世界調停機関で公式採用されている情報・ニュースアプリだ。
それを一目見て、
「な!?……」
絶句する巴音。
そのアプリのおすすめ記事のトップには、『イチャラブ死神、壱月と巴音』と題され、大々的に二人が仲良く手をつないで寝ている写真がupされている。既にいいねは666万にまでのぼっており、リツイート数は444万だ。
なおコメント欄には、「リア充爆発しろ」「リア充死すべし」「死神本部通報済み」「明日死刑ね」など数多の罵詈雑言が呪詛のように書き込まれていた。
そして、この記事の投稿主が《最目》となっている。
「壱月さん」
「なんだ?」
頬を赤く染めながらも、目つきが少し険しい巴音は、壱月に声をかける。当の壱月は全てを悟ったような笑みで、巴音に応じる。
「昨日、《最目》さんに疲れている中、謎に「一神派」の説明を求めたのはこの記事を見たからですか?」
「ああ、そうだ」
両者とも穏やかなようで、片方不穏な雰囲気を纏い、片方優しく微笑んでいる。
周りから見たら、とても怖かったと、クレトは後に語る。
「壱月さん」
「なんだ?」
先程の掛け合いが繰り返され、
「ナイスです!」
「おう!」
今度は両者とも満面の笑みを互いに見せる。
「壱月さん」
「なんだ?」
本日三回目の掛け合い、
「じゃあ、《最目》さんをシメましょうか」
「そうだな!」
二人は満面の笑みのまま、《最目》が眠っている部屋に行き、《最目》を起こした。
数分後、悲鳴と絶叫が何度も聞こえ、《最剣》達を震え上がらせたのは言うまでもない。
この出来事の後に、《最善》は自身の副長としての権限で、『イチャラブ死神、壱月と巴音』の記事、及び全データを消すこととなった。そしてこの記事を流した《最目》本人はしばらくの間、恐怖から眠れぬ夜を過ごし、さらには未来恐怖症になったとか…
いつもお読みいただき誠にありがとうございます。
今回、やっと《最目》のイタズラ事件が解決?したと思いますが、どうだったでしょうか?
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