噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神
54 《最目》の鑑識眼 前編
温かく気持ちのいいまどろみの中で、ふと壱月は物思う。
(あれ?なんで俺、寝てるんだ?というか、ここってどこだっけ?)
眠りながらも数々の疑問詞が頭に浮かんでくる壱月。どうやら彼自身、記憶が曖昧なようだ。
(確か…砂漠に飛ばされて、歩いて…)
一つ一つ己の行動を振り返り、やがて思い出す。
(都市に入って…!神殿に着いて、《最目》と出会った!!)
バッ!!と飛び起き、あわてて周囲を見回す壱月。
「ッ!」
自分が起きたことで、体勢が崩れそうになっている巴音を、静かな動作で、されど素早く衝撃を殺しながら支える。さすが、そこらへんはちゃっかりしている壱月君である。抜かりはない!
巴音の体勢を安定させ振り向くと、そこには、《最目》が立っていた。
「おや、案外速く起きましたね。もう少し眠っているものと思っていましたよ」
「わ、悪かったな。気付かないうちに、かなり体力が削られてたみたいでな」
「気にしなくても大丈夫だよ。砂漠越えが大変なことは重々承知しているからね」
《最目》はそう言って、傍にあった毛布を壱月に渡す。突然毛布を渡された壱月は少し困惑するが。
「いくら、砂漠といっても風邪を引くときは、引いてしまうから」
「そうなのか、ありがとう」
《最目》の言葉に納得し、毛布を受け取った壱月は、すぐ隣でぐっすり眠っている巴音にそっと毛布をかける。
「それじゃあ、隣の部屋で話そうか?」
「ああ、そうだな」
《最目》に案内され、一つとなりの部屋に移動する壱月。
二人は相対できる位置に座った。
「ええと、何から聞きたい?」
話すことが多すぎて、迷った《最目》は、壱月の希望を聞くことにしたようだ。問われた壱月は、まず最初に確認しなければならないことを聴くことにした。
「それじゃあ、あんたが本当に世界調停機関の到達者なのか、もう一度証明してもらおうか」
この質問は、ここに来て一番最初に聞かなければならないことなのだが、不覚にも寝てしまったため結局詳しく聞けなかったのだ。だからこそ、もう一回問う必要がある。
「え?この機関公式の電子端末を見せただけでは、信じるに足りないかい?」
もう既に、仲間として認めてもらっていると思っていた《最目》は少し悲しそうな顔をする。
「すまないが…まだ足りない」
「寝ている二人に危害を加えていないのに?」
《最目》の意見はもっともだ。だが、壱月が真に知りたいのは、
「あんたが本当に到達者なら、もっとわかりやすい方法があるだろう?」
「…制限だね」
「ああ」
今更だが、世界調停機関の到達者には、『制限』と呼ばれる、能力が必ずある。それは到達者の強大な神秘の力を制御する安全装置みたいなもので、行使するには《最強》と《最善》または《最優》の許可が必要だ。
つまり、『制限』さへ行使出来れば、到達者であることが問答無用で証明できると言うことだ。そしてそれこそが壱月の狙いだ。《最目》と評されるからには、目にまつわる制限があると壱月は踏んでいる。
「はぁ…わかったよ。『第一制限』でいいかい?」
壱月は軽く頷く。《最目》もその辺は理解しているようで、素直に了承し席を立つ。
「第一制限『千里眼』…行使!」
遠い太平洋上で、
「《最目》の制限行使申請?あいつ、いったい何に使うつもりだ?」
「おそらく、壱月君が本当に到達者かどうか証明しろって言ったのでは?」
《最目》に許可を求められ、その理由が思いつかなかった《最強》は首を傾げるが、そばにいた《最善》がすかさず推測し、結論を述べた。そしてさすが《最善》、彼の推測は見事に的中している。
「なるほど、じゃあ別に問題なさそうだな」
「そうですね。あったとしても確率は低いでしょう」
《最強》《最善》は揃って電子端末に表示された『承認』アイコンをタップする。
制限行使の許可を申請してから、約一分後、『制限行使が許可されました』と端末に表示され、それを確認した《最目》が、己の制限を解き放つ!
「制限解放!!」
解放後、《最目》は目を閉じ、そのまま壱月に問いかける。
「今、何か見たいものはあるかい?」
「へ…見たいもの?」
突然今見たいものを問われ、困惑する壱月。
「ええと。僕の制限は千里眼だから…何というか…見なければ証明できないと言うか…」
壱月に対してこちらはオロオロし始める。
「なるほど。じゃあ、巴音の寝顔…」
その発言に場の空気は一気に白け、《最目》は目を開いてジト目になり一言。
「君は変態か?」
「っていうのは冗談で…」
《最目》の真顔+ジト目にビビった壱月は、慌てて否定する。《最目》はため息をつき、別の提案を出す。
「思いつかないなら、過去でも良いけど?」
「そ、そっかーじゃあ俺の過去でー」
目を泳がせながらも、提案に同意する壱月。
再び目を閉じた《最目》は、一呼吸置いてから目を開ける。その目は現在ではなく過去に焦点を合わせている。まさに心ここに非ず、みたいな感じだ。
しばらくして、
「見えた…」
そんな呟きと共に、《最目》がゆっくり目を閉じる。彼は眉間のしわをほぐし、見えた内容を伝える。
「君の持っているその刀は、死神専用に造られた、世界で8本しかない【致死概念付与武装】なんでしょ?」
「ご名答」
「そんでもって、銘は【死雨】だろ?」
見事に的中させている《最目》に息をのむ壱月。
「どうやら、あんたが到達者ってのは本当らしいな」
壱月はお手上げだ、という風に両手を上げた。
いつもお読みいただき誠にありがとうございます。
投稿が遅れてすみません。これからも遅れるかもしれませんが、気長に待ってていただけると幸いです。
これからもよろしくお願い致します。
(あれ?なんで俺、寝てるんだ?というか、ここってどこだっけ?)
眠りながらも数々の疑問詞が頭に浮かんでくる壱月。どうやら彼自身、記憶が曖昧なようだ。
(確か…砂漠に飛ばされて、歩いて…)
一つ一つ己の行動を振り返り、やがて思い出す。
(都市に入って…!神殿に着いて、《最目》と出会った!!)
バッ!!と飛び起き、あわてて周囲を見回す壱月。
「ッ!」
自分が起きたことで、体勢が崩れそうになっている巴音を、静かな動作で、されど素早く衝撃を殺しながら支える。さすが、そこらへんはちゃっかりしている壱月君である。抜かりはない!
巴音の体勢を安定させ振り向くと、そこには、《最目》が立っていた。
「おや、案外速く起きましたね。もう少し眠っているものと思っていましたよ」
「わ、悪かったな。気付かないうちに、かなり体力が削られてたみたいでな」
「気にしなくても大丈夫だよ。砂漠越えが大変なことは重々承知しているからね」
《最目》はそう言って、傍にあった毛布を壱月に渡す。突然毛布を渡された壱月は少し困惑するが。
「いくら、砂漠といっても風邪を引くときは、引いてしまうから」
「そうなのか、ありがとう」
《最目》の言葉に納得し、毛布を受け取った壱月は、すぐ隣でぐっすり眠っている巴音にそっと毛布をかける。
「それじゃあ、隣の部屋で話そうか?」
「ああ、そうだな」
《最目》に案内され、一つとなりの部屋に移動する壱月。
二人は相対できる位置に座った。
「ええと、何から聞きたい?」
話すことが多すぎて、迷った《最目》は、壱月の希望を聞くことにしたようだ。問われた壱月は、まず最初に確認しなければならないことを聴くことにした。
「それじゃあ、あんたが本当に世界調停機関の到達者なのか、もう一度証明してもらおうか」
この質問は、ここに来て一番最初に聞かなければならないことなのだが、不覚にも寝てしまったため結局詳しく聞けなかったのだ。だからこそ、もう一回問う必要がある。
「え?この機関公式の電子端末を見せただけでは、信じるに足りないかい?」
もう既に、仲間として認めてもらっていると思っていた《最目》は少し悲しそうな顔をする。
「すまないが…まだ足りない」
「寝ている二人に危害を加えていないのに?」
《最目》の意見はもっともだ。だが、壱月が真に知りたいのは、
「あんたが本当に到達者なら、もっとわかりやすい方法があるだろう?」
「…制限だね」
「ああ」
今更だが、世界調停機関の到達者には、『制限』と呼ばれる、能力が必ずある。それは到達者の強大な神秘の力を制御する安全装置みたいなもので、行使するには《最強》と《最善》または《最優》の許可が必要だ。
つまり、『制限』さへ行使出来れば、到達者であることが問答無用で証明できると言うことだ。そしてそれこそが壱月の狙いだ。《最目》と評されるからには、目にまつわる制限があると壱月は踏んでいる。
「はぁ…わかったよ。『第一制限』でいいかい?」
壱月は軽く頷く。《最目》もその辺は理解しているようで、素直に了承し席を立つ。
「第一制限『千里眼』…行使!」
遠い太平洋上で、
「《最目》の制限行使申請?あいつ、いったい何に使うつもりだ?」
「おそらく、壱月君が本当に到達者かどうか証明しろって言ったのでは?」
《最目》に許可を求められ、その理由が思いつかなかった《最強》は首を傾げるが、そばにいた《最善》がすかさず推測し、結論を述べた。そしてさすが《最善》、彼の推測は見事に的中している。
「なるほど、じゃあ別に問題なさそうだな」
「そうですね。あったとしても確率は低いでしょう」
《最強》《最善》は揃って電子端末に表示された『承認』アイコンをタップする。
制限行使の許可を申請してから、約一分後、『制限行使が許可されました』と端末に表示され、それを確認した《最目》が、己の制限を解き放つ!
「制限解放!!」
解放後、《最目》は目を閉じ、そのまま壱月に問いかける。
「今、何か見たいものはあるかい?」
「へ…見たいもの?」
突然今見たいものを問われ、困惑する壱月。
「ええと。僕の制限は千里眼だから…何というか…見なければ証明できないと言うか…」
壱月に対してこちらはオロオロし始める。
「なるほど。じゃあ、巴音の寝顔…」
その発言に場の空気は一気に白け、《最目》は目を開いてジト目になり一言。
「君は変態か?」
「っていうのは冗談で…」
《最目》の真顔+ジト目にビビった壱月は、慌てて否定する。《最目》はため息をつき、別の提案を出す。
「思いつかないなら、過去でも良いけど?」
「そ、そっかーじゃあ俺の過去でー」
目を泳がせながらも、提案に同意する壱月。
再び目を閉じた《最目》は、一呼吸置いてから目を開ける。その目は現在ではなく過去に焦点を合わせている。まさに心ここに非ず、みたいな感じだ。
しばらくして、
「見えた…」
そんな呟きと共に、《最目》がゆっくり目を閉じる。彼は眉間のしわをほぐし、見えた内容を伝える。
「君の持っているその刀は、死神専用に造られた、世界で8本しかない【致死概念付与武装】なんでしょ?」
「ご名答」
「そんでもって、銘は【死雨】だろ?」
見事に的中させている《最目》に息をのむ壱月。
「どうやら、あんたが到達者ってのは本当らしいな」
壱月はお手上げだ、という風に両手を上げた。
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