噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神

鬼崎

41 暁姫

 私、暁崎巴音はお母様からの久しぶりの連絡に驚きはしたが、緊張はしていなかった。
何故なら、壱月様に同行することが決まったあの日、お母様は笑顔で私を送り出してくださったからだ。
それにその前夜、私はお母様にあの人への思いと覚悟を打ち明けた。そして納得してくださった時の笑みと言葉を忘れてはいません。
そういった事もあり、特に身構えたりする必要はないはずなのですが…
(なんでしょう、この嫌な予感は…)
(…?何か言いましたか、巴音)
(い、いえ。何でもありません。お母様)
思わず私も、いつもの壱月様のように言葉にだしていたようです。これは注意が必要ですね。
(そ、それでお母様、お久しぶりです。何か緊急の用事ですか?)
(久しぶりですね。緊急というわけではないのですが、近況を伺いたくて)
(私はいつも通り元気ですよ)
(あなたの事はわかっていますので、必要ありません。問題は彼とのことですよ!)
(壱月様ですか?)
(そうです。斎藤壱月、彼とはどうなんですか?)

そう問われて、巴音はチラリと壱月を見る。
壱月はいまだうつ伏せ状態で顔は見えない。それと今はプライベートな会話なので壱月は何も聞いていない。

数秒たっても答えが見つからなかったので巴音は、
(こちらもいつも通りですね)
そう答えるのだった。
だがしかし、そんな事で納得できる巴音母ではない!
(わかっていますか?このままでは駄目なのですよ!だいたい、彼へ思いは伝えたのですか?覚悟は伝えましたか?)
(ま、まだです)
(やはり、ここは私がはっきりと言った方がいいみたいですね)
(!?待ってください!)

どうやら嫌な予感は的中したようだ。
巴音母は娘の静止も聞かず、壱月に繋げる。

(斎藤壱月!)
(はい!)
突如大声で自分の名前を呼ばれ、飛び上がる壱月。しかし声は出していない、壱月も多少成長しているようだ。
だがそんな事はお構いなしに巴音母は、
(いいですか!私の娘に傷一つでも付けてみなさい、暁姫の名において即刻死刑ですからね!
 それが嫌なら必死で守りなさい!この鈍感野郎!)
(………)
あまりの激しさに、黙り込む壱月。鈍感野郎って……
そして巴音母の前に沈黙は許されない!
(返事は!)
(はいっ!)
(よろしい)
さっきもしたような会話が繰り返される…それにしても鈍感野郎って……
快活な返事に満足した巴音母は壱月から通信を切る。

(あなたも頑張りなさい、巴音)
(はい!頑張ります!)
そして元気の良い娘の声を聞いて、安心したように巴音母は通信を切った。

本部との通信が終わり、数分後。もちろん二人の話題になるのは暁姫についてだ。
(なあ、巴音さん。暁姫ってなんなんだ?)
(壱月様、知らないんですか!?)
巴音はとても驚いているが、壱月が知らないのも仕方がないだろう。なぜなら、
(ああ、知らない。俺は中学校から人間界に行っていたからな、死神の事はあんまりなんだよ。)
(そうだったのですか…では、私がお話ししましょう。暁姫について…)
(頼む。)

 暁姫とは、旧死神四天王家の一つ暁崎家の二つ名みたいなもので、有名な異名は「鮮血の暁姫」とかがあったりする。
その理由は、初代暁姫が武勲をあげたとき、常に返り血で染まっていたからという出来事から来ていたりする。
他にも色々由来があるみたいだが、説明し始めたらきりがないのでやめておこう。
そして巴音の母親が今代の暁姫なのだが、貴族制度が死神界で廃止されてからは特に任務や命令系統、上司との上下関係なども関連がなくなっている、今こうして次代の暁姫たる巴音が好きなことをやれているのはそういった事も関係していたりする。

暁姫以外の他の旧死神四天王家も現在は同じ様な感じだ。ただ一家を除いて。
いちおう名前だけあげておくと、冥王、薙姫、時雨卿の三家だ。
この時点で察しの良い方はわかるだろう、そう現在壱月の持つ【死絶武装ー死雨ー】はもともと時雨卿が使っていたものだと。
さらに先程述べた、ただ一家とはこの時雨卿のことで、卿には後継者がいなかったので、そのまま家は衰退していき潰えたのだ。

そういった事を壱月にわかりやすく説明した巴音。
そのおかげで壱月もそれなりには理解できたみたいだ。
(まさか巴音さんが四天王家の血を継いでいるとは、思わなかったよ。)
(四天王家と言っても、もうその制度はありませんから何のしがらみも無いですけどね)
そんな談笑をしつつ、二人は脱獄するための作戦を練り始めるのだった。



いつもお読みいただき誠にありがとうございます。

今回は初の巴音回です。
私が勉強不足なため、敬語がぐちゃぐちゃになっていたりします。すみませんでした。
精進します。

投稿期間はあくかもしれませんが、これからもお願い致します。

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