噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神

鬼崎

37 殺戮者、姫路に現る

 「ギャァアアアッ!」
「ぎゃあぎゃあ、うるせーな。黙れ…」
悲鳴を上げる男と右手で耳を塞ぎながらその男の首を斬る殺戮者。
人気の少ない路地裏で殺戮は起こっていた。
次に殺戮者は後ろを振り返り、腰を抜かしガタガタ震えている男を殺しにかかる。
「く、来るなッ!」

バンバンバン

3回の銃声がなり、殺戮者に銃弾が跳んでいくが、当の本人は微動だにせず男に迫っていく、
「ひ、ひぃぃぃ!」
さらに震え上がり後ずさる男。そんな男を見て、口元をゆるめ嗤う殺戮者。
男からはさぞ凶悪な笑みに見えたことだろう。
顔からどんどん血の気が消えていく男に殺戮者は、
「おいおい、そんな震えた腕で銃が当たる訳ないだろう?」
詰め寄り、刀を振り上げ、
「それと学校で習わなかったか?」
「………」
男にはもう返す気力もない。ただ殺戮者を見上げている。
「撃っていいのは、撃たれる覚悟がある奴だけだと…」
振り下ろし、斬る寸前で…
「-------」
死んでいた。

刀を納刀し、一息つく殺戮者、だが…
「ひ、人殺し!」
偶然通りかかった少年に見られてしまう。
「ああ?」
少年に顔を向け、笑う殺戮者。(本日二度目)
「う、動くな!今警察に通報してやるからな!」
少年は叫ぶが、その声は恐怖で震えている。だが殺人現場を見て、吐かずに理性を保っていられるこの少年の精神力は強いと言えるだろう。
(久しぶりにまともな奴を見たな)
殺戮者はどこかうれしそうだ。少年を殺すのは変わらないが、少し少年に興味を持った殺戮者は、名前を聞いてみた。
「少年、名前なんだ?」
「お、お前みたいな奴に教える訳ないだろう!」
少年はものすごくまともだった。
「ま、そうだよな。九重桜夜ここのえさくや君?」
「な…なんで…僕の…名前を…」
「簡単な事だ、君の鞄に書いてある」
「ッ!?」
サッと鞄に書いてある名札を隠す、少年もとい桜夜。
「ハハ…もう遅いよ」
「ッ----」
突然桜夜は振り返って駆け出した。この場から逃げるつもりだろう。しかし、
「遅いって言ってるだろう?」
殺戮者に先回りされる。
桜夜はそれでも諦めず、反対方向に走り出す。だが、
「だから、遅いって」
その先には常に殺戮者がいるのだった。
「ハァハァハァ……」
息が上がり、緊張でだんだん思考できなくなり、混乱しだす桜夜。
「どうしたら…どうしたら?…どうしたら!」
周りを見るが、特に何もない。それでも死は迫ってくる。
「久しぶりにまともな人間に出会えて嬉しかったぜ。じゃあな…」
そう言って刀を振り下ろし、殺すはずが……
「う、うわぁぁぁあ!」
回避される。
「少し舐めていたようだな…」
また追いかけ確実に仕留めるため、突きを撃ち込む。だが……
「ウワッ!」
今度は地面につまずき、突きを運良く回避する。
「……運がいいな、だったら」
うつ伏せになっている桜夜を刀で突き立てるように刺し貫こうとするが……
横に転がられ、回避される。
「偶然か?いや…これは、もしや……」
「ハァハァ…」
桜夜は起き上がり肩で息をしている。
殺戮者は刀を納刀し、低く腰を落として、柄に右手を添え、左手で鞘を持つ。一般的な抜刀術の構えだ。
「これで、試してやる!」
「ッ----」
またも背を向け走り出す桜夜。
「遅い!」
殺戮者は高速の抜刀術を放つ……が…

キィイイインン

突如どこからともなく飛来してきた鉄板に妨げられ、失敗する。
「まじかよ……これは偶然じゃない必然だな…つまり桜夜君は神秘に-----」
「あぁああああ!」
その間にも九重桜夜は走りつづけ、ついに殺戮者から逃れる。
いや、仕方なく見逃した、という感じだろうか?
「これで俺が殺せなかった奴は、4人になるわけか。悔しいな」
殺戮者は夜空を仰ぎ見て、
「これだから、神秘に魅入られた奴はめんどくさいんだ」
武器商人や錬金術師がこの場にいれば、「お前が言うな!」と声を揃えて言ってくるだろう。

「まあ、早いうちに九州に行かないとな…鬼の方はとっくに準備万端みたいだし…」
そう言って、殺戮者も自分の道を進むのだった。



お読みいただき誠にありがとうございます。

今回新キャラが登場しましたが、壱月達との絡みも書く予定です。
あと某有名アニメの名ゼリフを使わせていただきました。

九重桜夜のプロフィール↓
男、高校二年生、姫路在住、神秘に魅入られし者、神秘名「?????」

神秘名は後ほど…

これからもよろしくお願いいたします。

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