噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神
33 知床の未来
工房に無事戻ってきた三人はお茶を飲みながら、知床のこれからについて話し合っていた。
「巴音さんのおかげで、北海道の地脈にある神秘…即ち人や動物が身直に触れることができてしまう神秘は無くなった。この北海道に住むひとりとして感謝するよ。ありがとう」
「どういたしまして」
「壱月君も協力してくれてありがとう」
「気にすんな。俺も鍛錬の一環になったしな」
心地いい笑顔を見せる二人に峰影は「ならよかったよ」と頷き、本題に入る。
「残りの魔物達は僕が近いうちに倒すつもりだよ」
「そうか…なら俺達の協力もここまでだな」
「そうだね」
「なあ、峰影。これからこの知床はどうなるんだ?」
「心配しなくても大丈夫だよ。この知床は元の自然豊かで、動物たちの活気あふれる山や森に戻っていくだろうね」
「そりゃ安心だな」
「それに知床の秩序が乱されるようなことがあれば、僕が力を尽くすよ」
峰影は自信満々にそう宣言するが、壱月と巴音の二人はどこか不安そうだ。
「結局さっきの戦いでも峰影がどのくらい凄いのか全然わからなかったんだが…」
「え!」
「ほとんど罠を作って、それに掛かった魔物を壱月様に殺してもらうばっかりでしたよね」
「え!?」
二人とも同じようなことを言い、峰影はものすごく驚いている。
その事にちょっとイラッとした峰影は…
「じゃあ僕の力、試してみるかい?」
そんなことを言いだし、戦う気満々だ。
だが…
「おいおい、ここにはお前が決めたルールがあるだろう!?」
そう、ここには峰影が取り決めた四つのルールがある。そしてその一つ目は、喧嘩をしてはいけない。というルールだ。
「壱月君、それは知床のルールだよ。場所を変えれば問題ない」
「おいおい、今から下山するのか?」
もう夜だぞ、と壱月が言おうとしたとき、峰影の口から信じられない言葉が紡がれた…
「下山なんてする訳ないよ。簡単な話さ…場所を創ればいい。」
「はあ!?」
「そんなことが…できるのですか!?」
峰影はドヤ顔で…
「僕を誰だと思っているのかな?僕は錬金術師だよ」
そのドヤ顔にムカついた壱月は…
「れ…錬金術にも限度があるだろう!」
思わず怒鳴ってしまった壱月。さらに何度も頷いて、壱月の意見を肯定している巴音。二人は可哀想な人を見る目で、峰影をじっと見ている。そんな二人の視線をどこ吹く風で受け取っている峰影。
錬金術師は己の発言を証明するため、工房の外にでる。
「『三理論証明者』と呼ばれたこの僕が、ここまで信用されてないとは!」
「三理論証明者ってなんだ?」
「壱月様、『三理論証明者』とは錬金術業界で三つの功績を修めた高位術者に贈られる称号だったはずです。」
「うむ、よく知っていたね。でもそれだけじゃない、この僕が改めて『三理論証明者』とはどういう称号なのか説明しよう」
峰影は二人に解説もとい自慢を始めた。
三理論証明者とは、錬金術業界の研究発表会で矛盾しない三竦みの関係性を仮定し、証明することによって得られる称号の一つだ。本来錬金術師の永遠のテーマ(不老不死など)の一つには数えられていないのだが、峰影のようにこちらを極めるものもいるのだ。
峰影が証明した三理論は、聖海、闇、心壁の三つだ。もちろんこれだけでは何をいっているのかわからないだろう。これを一つの物体を基に考えると理解できるようになるだろう。
身近な物ほどわかりやすいだろうと思うので、例としてあげるのは「スマホ」だ。
まずスマホの形や機能を作る全ての物質、これが峰影の理論の一つ聖海だ。次に闇、これは物体つまりスマホの影を司る。「光があるから影ができるのではなく、闇があるから影ができ、物体が構築できる。」これは峰影の言葉だ。そして最後に心壁は物と物が交わらないように心の壁を造っているのだという。峰影曰わく、このどれか一つでも欠ければそれは物ではなくなり、この世から自然消滅…峰影の言葉では還元するというらしい。そして壊すことができたのなら、この三つを使って創ることができるのも世の中の道理だろう。そしてこれを仮定、証明した峰影はこれらを自身の錬金術として行使することができる。
わかってもらえただろうか、聖海は鉄やアルミニウム、炭素などの物質を作り出すことができ、闇は影を、心壁は物と物の境界線を作り出す。この事が理解できたのなら、世界さえも創れることがわかるだろう。
だが、錬金術には等価交換という法則がついてまわる。世界を創るなら世界に必要な量の物質を、武器を造るならそれに必要な量の物質を。質量保存の法則は誤魔化すことができたとしても、等価交換からは逃れられないのだ。そしてそれさえわかっていたら、やりたい放題というのもまた事実なのだ。
そこまで解説し終わり、次に錬金術師は実行する。小さな小さな世界作りを。
「さあ!戦う前の余興といこう!」
「なあ巴音さん。あいつ人格変わってないか?」
「そうですね。元の丁寧口調が微塵もありません。そういえば壱月様」
峰影が方陣を書き、何かを詠唱しているが、全然そちらを見ていない二人。
「なんだ?」
「巴音、と呼び捨てにしていただけないのですか?」
「はへッ!な…ナンノコトダカ!?」
明らかに動揺しだす、壱月。巴音はそんな彼の姿を優しく微笑みながら見ている。
「あの時、私の名を叫んで、守って下さったこと私はとても嬉しかったのですよ?」
その一言と同時に、世界が轟音とともに創られた。
世界が移り、壱月は隣を見る。巴音の言葉は…
「ん?今なんか言ってたか?」
それが照れ隠しか、難聴か、偶然かはわからないが、伝わらなかったようだ。
巴音はさっきの一言に対する羞恥心とはぐらかされた怒りで頬を紅くし…
「な、なんでもありません!」
壱月から顔を背けるのだった…
いつも読んでいただき誠にありがとうございます。
壱月が鈍感、難聴主人公になってしまいましたが許して下さい。一度書いてみたかったんです。
これからもよろしくお願いします。
「巴音さんのおかげで、北海道の地脈にある神秘…即ち人や動物が身直に触れることができてしまう神秘は無くなった。この北海道に住むひとりとして感謝するよ。ありがとう」
「どういたしまして」
「壱月君も協力してくれてありがとう」
「気にすんな。俺も鍛錬の一環になったしな」
心地いい笑顔を見せる二人に峰影は「ならよかったよ」と頷き、本題に入る。
「残りの魔物達は僕が近いうちに倒すつもりだよ」
「そうか…なら俺達の協力もここまでだな」
「そうだね」
「なあ、峰影。これからこの知床はどうなるんだ?」
「心配しなくても大丈夫だよ。この知床は元の自然豊かで、動物たちの活気あふれる山や森に戻っていくだろうね」
「そりゃ安心だな」
「それに知床の秩序が乱されるようなことがあれば、僕が力を尽くすよ」
峰影は自信満々にそう宣言するが、壱月と巴音の二人はどこか不安そうだ。
「結局さっきの戦いでも峰影がどのくらい凄いのか全然わからなかったんだが…」
「え!」
「ほとんど罠を作って、それに掛かった魔物を壱月様に殺してもらうばっかりでしたよね」
「え!?」
二人とも同じようなことを言い、峰影はものすごく驚いている。
その事にちょっとイラッとした峰影は…
「じゃあ僕の力、試してみるかい?」
そんなことを言いだし、戦う気満々だ。
だが…
「おいおい、ここにはお前が決めたルールがあるだろう!?」
そう、ここには峰影が取り決めた四つのルールがある。そしてその一つ目は、喧嘩をしてはいけない。というルールだ。
「壱月君、それは知床のルールだよ。場所を変えれば問題ない」
「おいおい、今から下山するのか?」
もう夜だぞ、と壱月が言おうとしたとき、峰影の口から信じられない言葉が紡がれた…
「下山なんてする訳ないよ。簡単な話さ…場所を創ればいい。」
「はあ!?」
「そんなことが…できるのですか!?」
峰影はドヤ顔で…
「僕を誰だと思っているのかな?僕は錬金術師だよ」
そのドヤ顔にムカついた壱月は…
「れ…錬金術にも限度があるだろう!」
思わず怒鳴ってしまった壱月。さらに何度も頷いて、壱月の意見を肯定している巴音。二人は可哀想な人を見る目で、峰影をじっと見ている。そんな二人の視線をどこ吹く風で受け取っている峰影。
錬金術師は己の発言を証明するため、工房の外にでる。
「『三理論証明者』と呼ばれたこの僕が、ここまで信用されてないとは!」
「三理論証明者ってなんだ?」
「壱月様、『三理論証明者』とは錬金術業界で三つの功績を修めた高位術者に贈られる称号だったはずです。」
「うむ、よく知っていたね。でもそれだけじゃない、この僕が改めて『三理論証明者』とはどういう称号なのか説明しよう」
峰影は二人に解説もとい自慢を始めた。
三理論証明者とは、錬金術業界の研究発表会で矛盾しない三竦みの関係性を仮定し、証明することによって得られる称号の一つだ。本来錬金術師の永遠のテーマ(不老不死など)の一つには数えられていないのだが、峰影のようにこちらを極めるものもいるのだ。
峰影が証明した三理論は、聖海、闇、心壁の三つだ。もちろんこれだけでは何をいっているのかわからないだろう。これを一つの物体を基に考えると理解できるようになるだろう。
身近な物ほどわかりやすいだろうと思うので、例としてあげるのは「スマホ」だ。
まずスマホの形や機能を作る全ての物質、これが峰影の理論の一つ聖海だ。次に闇、これは物体つまりスマホの影を司る。「光があるから影ができるのではなく、闇があるから影ができ、物体が構築できる。」これは峰影の言葉だ。そして最後に心壁は物と物が交わらないように心の壁を造っているのだという。峰影曰わく、このどれか一つでも欠ければそれは物ではなくなり、この世から自然消滅…峰影の言葉では還元するというらしい。そして壊すことができたのなら、この三つを使って創ることができるのも世の中の道理だろう。そしてこれを仮定、証明した峰影はこれらを自身の錬金術として行使することができる。
わかってもらえただろうか、聖海は鉄やアルミニウム、炭素などの物質を作り出すことができ、闇は影を、心壁は物と物の境界線を作り出す。この事が理解できたのなら、世界さえも創れることがわかるだろう。
だが、錬金術には等価交換という法則がついてまわる。世界を創るなら世界に必要な量の物質を、武器を造るならそれに必要な量の物質を。質量保存の法則は誤魔化すことができたとしても、等価交換からは逃れられないのだ。そしてそれさえわかっていたら、やりたい放題というのもまた事実なのだ。
そこまで解説し終わり、次に錬金術師は実行する。小さな小さな世界作りを。
「さあ!戦う前の余興といこう!」
「なあ巴音さん。あいつ人格変わってないか?」
「そうですね。元の丁寧口調が微塵もありません。そういえば壱月様」
峰影が方陣を書き、何かを詠唱しているが、全然そちらを見ていない二人。
「なんだ?」
「巴音、と呼び捨てにしていただけないのですか?」
「はへッ!な…ナンノコトダカ!?」
明らかに動揺しだす、壱月。巴音はそんな彼の姿を優しく微笑みながら見ている。
「あの時、私の名を叫んで、守って下さったこと私はとても嬉しかったのですよ?」
その一言と同時に、世界が轟音とともに創られた。
世界が移り、壱月は隣を見る。巴音の言葉は…
「ん?今なんか言ってたか?」
それが照れ隠しか、難聴か、偶然かはわからないが、伝わらなかったようだ。
巴音はさっきの一言に対する羞恥心とはぐらかされた怒りで頬を紅くし…
「な、なんでもありません!」
壱月から顔を背けるのだった…
いつも読んでいただき誠にありがとうございます。
壱月が鈍感、難聴主人公になってしまいましたが許して下さい。一度書いてみたかったんです。
これからもよろしくお願いします。
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