噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神

鬼崎

10 死神-邂逅後〈導き〉-

 死神〈斎藤壱月〉は殺戮者との決着のとき倒れて、意識を失っていたが…

「ここ…は、《冥府への道》か、どうやら俺も死んだらしいな」
「壱月は死んでなんかないよ」
「はは…死んだ天樹の声まで聞こえちまう」
「そりゃ確かに僕は死んだけど…」
「まてよ、幻聴にしては、だいぶ会話が成り立つ気が、普通なら片言くらいなもんだが」
「こっちだ、斎藤壱月!」
「!!」

 そして壱月は声がした方に振り返った。

「まじ…かよ…」

 そのとたん彼は涙を浮かべながらも笑い、もう会えないと思っていた親友に再会した。

「よっ壱月!」
「天樹!」

 壱月は天樹に抱きつこうとするが、天樹の体はすり抜けてしまう。

「なん…で…」
「それは僕が死んで、壱月が生きているからだよ」
「…!俺が生きている?」
「ああ壱月は殺戮者に殺されなかったんだ」
「どうして…」
「それは僕にもわからない。今度会ったときにでも聞いてみればいいよ」
「そうだな、今度会ったとき必ず復讐を果たす!」

 そう言った瞬間、壱月に触れられないはずの天樹が壱月を殴った!

「何言ってるんだ!壱月は復讐なんてしちゃいけない。壱月は自分のためにこれからも生きるんだ!」
「天樹?そっちこそ何言ってんだよ。お前はあいつに復讐する事を望んでるんだろ?」
「違う!僕は復讐なんて望んでない。それに壱月が憧れた斎藤一は復讐なんてしなかっただろ!」
「!!」

 その言葉は壱月の心を貫いた。

「阿呆な事言ってごめん。約束したもんな俺は何があっても死ぬまで『悪・即・斬』を貫き通すって」
「ああ」
「日本の平和と民衆の生活を守る。それが死神の役目だ!」
「そうだ、かつて新撰組がそうであったようにな」
「ありがとう、天樹。おかげで俺の役目を思い出した」
「貸し一つだぞ壱月!」
「あぁ、貸しは返さないとな。天樹、お前を冥府まで安全に送り届けてやる」
「頼んだ!それにしてもまさか壱月が死神だったとはな」
「怖いか」
「いや、安心した…」
「何でだよw」
「僕がいなくても一人でやっていけそうだし!」
「フッ心配しなくても俺はもともと一人でもやっていけていたがな」

 そんなかけがえのない本当に最後の会話は冥府の門で別れるまで続くのだった…
(本当に今までありがとう。天樹空)

コメント

  • 鬼崎

    祝第10話と作者が作者を褒める。

    3
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