さよなら、ダーリン

ヒウリカ

3




「ねえ、なんで、結婚することにしたの?」



「それが自然なことかと思ったの。恋人が死んだ女性は、それなりの時間をかけて、慰めてくれた男の人と結婚はして結婚するのが普通なんだと思ったの」


僕は、線香の束にライターで火をつけた。今日は対して、風は吹いていなかった。あっさりと線香の束から煙が上がった。僕は束を2つに分けて彼女に渡した。彼女はしゃがんで、香炉へ線香を寝かせた。
ベールがキラキラと輝いて、墓地と言う異空間が、彼女を三割り増し、美しく、怪しげにあった。



「みんな同じことを言うの。彼を忘れなさいって。忘れてあなたは幸せになるべきを、その権利があなたにはあるわって。彼も忘れられるはずないのにね、それに忘れる資格も、幸せになる資格も私にはないの」  


「兄はそんなにいい人だった?」

僕が思い出す兄は、彼女がそんなに神聖視するような人間ではなかった。人格者で、差別やいじめのニュースを見れば、眉を潜めて心の中でそっと傷つくような人。

けれどには、クラスの中でハブにされた女子や、いじめのような悪ふざけを受けている男の子を救おうとは行動できない勇気のない人間だった。

 「いい人だった。とても。とても、私はきっと彼の人生で、できる予定だったガールフレンドの大勢になる程度で、彼とは結婚しないんだと思ってた。けれど、そうきっとタイミングが悪かったのよ。」


きっとそうだ、彼らが付き合っていた当時は、18歳。大学に入りたてのお子様だったのだから。きっとそこで、口約束みたいに「将来、結婚しよう」なんて言ってたって本気にしている人はいないだろう。そこには漠然とした桃色のイメージだけで、現実味もなく、これからできるパートナーや、その人の別れはあらかじめ組み込まれた口約束でほとんど間違いは無い。
大学時代に1番最初に出来た女の子と結婚するカップルの方が少数だろう。



「ねえ」


と彼女はこれからいたずらをしようとしている少年みたいな表情で笑う。


「今ね彼と同棲しているの、私、逃げて来ちゃったでしょ?帰るところがなくて、少しの間泊めてくれないかな?」



きっとこれは馨さんの中では決定事項だ、まるで儀式のように確認しているだけなのだ。

僕は今一人暮らしの学生で、女性を一人泊めると言う事は問題ではないだろう。彼女に婚約者さえなければの話だけど。

馨さんは、兄の彼女で、僕はその弟で一応は義理の兄弟になる予定だったと考えれば良いのだろうか。もう正常な判断だは下せなかった。僕はほんのちょっとの悩みを抱えながらのついた。

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