最弱最強の破壊者

うらら

新能力

神童さんとともに<ジョーカー>の研究室に来た俺は、神童さんの言っていた能力についての説明を受けていた。
「お前の能力は本来、今封印している能力が本当の能力であり、身体系魔法は付属みたいなものなんだ。だが、その本来の能力が身体系魔法に影響をもたらし、その結果、亜種の能力になった。つまりお前はとてつもなく稀な存在なのさ。」
そういうと、神童さんが研究員の人に能力の説明をするように促した。
「新九郎君さんの能力は、新九郎さん自身が想像した者との繋がりを持ち、その身に宿すことで力を借りる能力です。例えば隊長のことを思えば隊長のような力が発揮できます。ですが、イメージがしっかりできていないと上手く力を振るうことができません。それがあなたの能力です。」
なるほど、イメージさえしてしまえばどんな者でも力を借りれるのか。ふと疑問が浮かんだので訊いてみた。
「あの、伝説のもの、例えばルシフェルとかを想像しても力を借りれるのですか?」
「理論上は可能ですが、やはり新九郎さんのイメージ次第でしょう。」
つまり、しっかりとしたイメージさえ出来ていれば、どんな者にでもなれるのだ。すると、神童さんが口を開いた。
「そこがその能力の強みであり、危険な面でもある。」
「危険な面とはどう言うことですか?」
「いいか、理由は2つだ。1つは言わずもがな。イメージが弱すぎて役に立たないこと。そしてもう1つが、イメージが強すぎること。」
 「イメージが強すぎる、ですか?」
「ああ、そうだ。例えばお前がイメージしたものが過去の凶悪な犯罪者だったとしよう。お前の能力はその身に宿してから発動するものだ。つまり間接的にそいつの感情とかも入ってしまう可能性もある。そうなるとその感情に乗っ取られる可能性も出てくるわけだ。だから危ないのさ、強すぎるイメージもな。だが、感情のコントロールもできれば乗っ取られることはないだろう。それも込みで練習するぞ。」
「はい、よろしくお願いします!」
俺がそう言うと、神童さんは頷き、それと同時に研究員の人たちが6人俺の周りに集まり、1人が口を開いた。
「今から封印を解きます。ですが、これを解いてしまうともう一度封印するのには時間がかかります。先ほどの説明を受けて気が変わったのなら遠慮なく教えて下さい。」
「いえ、お願いします!」
「わかりました、では少し目を閉じて下さい。」
言われた通りに目を閉じて待っていると、少しして、心臓がトクンと鼓動した。それと同時に力がみなぎってくる気がした。
「封印を解きました。ですが無理はなさらないで下さい。」
そう言うと、研究員は持ち場に戻った。そして神童さんと俺は3年前も使っていたトレーニングルームへ向かったのだった。


〜トレーニングルームにて〜
「よし、まず力を借りる対象のイメージをしてみろ。それをしながら今までのように魔法を行使すれば良い。」
「何でもいいって言われても難しいですねー。何が良いかなぁ。」
「それならお前の好きなあの炎の女の子がいいんじゃねーか?」
「べ、別に好きなわけじゃっ!」
「そうかぁ?まあいい、その子をイメージしてみろ。」
俺は言われた通り舞をイメージしてみた。イメージするのは灼熱の業火を生み出す舞。そして魔法を行使する。すると、炎を手から出すイメージを強くした途端、手から炎が飛び出す!
「やった!出来ましたよ、神童さん!」
「おー!やったな!って大丈夫か?」
そう、俺は炎を出しただけでめまいを催し、膝をついたのだ。
「まあ、そりゃそうだ、新九郎。初めての能力で人の魔法を行使したんだ。体に負荷がかかって当然だろう。休むか?」
俺は立ち上がり、首を横に振りながら、
「いえ、やります、やらせてください!早くこの力になれないと大会に間に合いません!」
「しかしだな、本戦までまだ1ヶ月半はあるんだろ?」
「そうですが、やらせてください!」
「わかったよ、ただ無理だけはするな、って言ってもお前は聞くやつじゃなかったな。」
そう笑いながら神童さんは言った。俺は笑顔で頷くと、またイメージをする。今度は夢さんが霧系魔法を使うところ。すると前に突き出した手から辺り一面を覆い尽くすほどの霧が生まれた。まためまいがするが、最初ほどではない。それをみた神童さんが、
「おー!夢の能力か!改めてお前の能力はすげーな!なら、今度は現実にいるものではなく、超常の存在とかイメージするとどうなるかやってみたらどうだ?」
俺は言われた通り、イメージする。イメージする者は一番俺が知っている者。そして俺の能力にも影響している者。そう、ルシフェルだ。ただし、どうイメージするのか難しいので、スマホを取り出し、伝承を検索。それに一通り目を通し、最後に絵をみた。そして想像する。すると自分の背中に違和感を覚え、見てみると12枚の漆黒の翼が生えており、2本の角が頭から生えていた。さらに伝承の通りイメージを強くしてみた。すると俺の感情にドス黒い何かが芽生え始めた気がした。その次の瞬間、俺は意識を失った。


教え子の能力の手伝いをしていた俺こと神童闘志は人とはかけ離れた存在を目の当たりにしていた。頭には角が2本あり、背中には12本の漆黒の翼が生えている。新九郎がイメージしたものはルシフェルなのだろうと思った。新九郎に技名をつけたのは俺なのだ。わからないわけがない。以前ネットで見た絵のような容姿をしている。恐らく新九郎もそれを見たのだろう。その異形の存在が口を開く。
≪我が名はルシフェル。傲慢にして堕天使の長である。貴様は何者だ?この我の前に立つ愚か者の名を聞いておいてやろう。さあ、名を名乗るがいい!≫
キリスト教の悪魔が日本語を喋るのが不思議だが、新九郎のイメージが強すぎたが故、イメージした通りの存在として彼の心を埋め尽くしたのだろう。
「俺は神童闘志だ。すまんが俺のバカ弟子を返してもらうぞ、明けの明星さん?」
そう言うと俺は身体系魔法を発動。新九郎のように闘気を身体に纏うとその場を飛び出した。


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